JOHAニュースレター第17号
9年9月12日(土)、13日(日)の両日、第7回大会が札幌の北星学園大学を会場に開催された。関東に会員が集中しているJOHAでは、遠隔地である北海道での大会ということで会員による研究発表数の減少を懸念したが、大会第一日の第一分科会、第二日の第二分科会で多岐にわたるテーマでの多くの興味深い発表がなされ、年次大会に発表の場を求める会員諸氏の熱意を感じることができた。
JOHAニュースレター第16号
的な力関係を越えて、話し手との間に対等で一貫した信頼関係を築いていく努力が聞き手には求められます。さらには、話された経験を広く共有して公共の議論を作っていくために、資料をアーカイヴに蓄積していくことを話し手に理解してもらう努力が必要です。
は152名(一般84名、学生他68名)であり、全体の60%台の納入率(前年度同様)であること、4月1日付で未納入の会員へ督促状を郵送する予定であることが報告され承認された。
JOHAニュースレター第15号
第7回オーラル・ヒストリー学会年次大会が、はじめて北海道で開かれます。
大会報告者募集!!
http://joha.jp/?eid=99
【目次】
(1) 第7回大会案内
(2) JOHA第5回ワークショップのお知らせ
(3) 理事会報告
(4) 理事選挙のお知らせ
(5) 会員からシンポジウムのご案内
(6) 編集委員会からお知らせ
(7) 会計からのお願い
(8) 事務局から
(1) 第7回大会案内
日時:2009年9月12日(土)~13日(日)
会場:北星学園大学 札幌市厚別区大谷地西2-3-1
http://www.hokusei.ac.jp
第7回大会は、JOHAの年次大会としては初めて北海道で開催されることになりました。北海道は先住民族アイヌの豊かな口承の伝統の地であると同時に、和人による同化政策によって言葉や文化を奪われたアイヌの人々の記憶の地でもあります。アイヌ文化振興の気運の高まる現在、人々は多様な、時には斬新な形態で「語ること」によって民族の過去、現在、そして未来をどのように紡ごうとしているのか。シンポジウムは、報告者それぞれの個人史を通して、アイヌのオーラル・トラディションの今を参加者と共有する時間とする予定です。多くの会員のご参加を期待いたします。(研究活動委員会:第7回大会担当 吉田かよ子)
大会プログラム
http://joha.jp/?eid=102
(2) JOHA第5回ワークショップのお知らせ
(3) 理事会報告
1.2008~2009年度第1回理事会報告
日時:2008年11月29日13:00~16:00
場所:日本女子大学
議事録
0) 2007~2008年度第5回議事録承認
1) 第6回大会について
(1)大会全体について
参加者延べ100名、4セッションのうち沖縄戦にかんする三報告があった第一分科会、研究実践交流会に参加者多数、シンポのテーマは今後深めていきたい
(2)大会会計について
(3)今後の課題
大会のもちかたに関連して学会の性格および運営方法について、さまざまな意見が交わされた。
2) 2008~2009年度理事会体制の確認
昨年度の体制を維持する。7回大会、または東京、あるいは関西でミニシンポなどの開催を企画する。今年度は来年6月、7月ころミニシンポ、ワークショップなどの企画の実現を予定し、次回理事会に担当者は企画案を提案する。
3) 研究活動委員会報告
第7回大会は2009年9月12・13日に開催12日は遠方からの参加者の便を考慮して11時から理事会にし、午後に分科会、シンポを設定。シンポテーマは「地域とオーラルトラデイション」としてアイヌ民族をめぐる問題をとりあげる。
4) 編集委員会報告
(1)永久保存本、各号10冊は事務局に保存する。
(2)寄贈本について
(3)会誌販売は丸善を通じて行うよう手続きが完了した。アマゾンにリストアップし宣伝販売する手続きも完了。
(4)(学術定期刊行物)科研費成果公開促進費の申請をおこなった。
(5)投稿論文・査読、論文スタイルのガイドラインについての提案がなされた。
5) オーラルヒストリー研究ガイドラインについて
論文ガイドラインの作成に関連してオーラルヒストリーに関する倫理や著作権などさまざまな規定を委員会を設置して検討することになった。
6) 学会誌電子化について
12月末を目途に1号、2号の寄稿者への電子化許諾作業を続けていることが報告され、CiNiiでの論文本文の電子化は許諾を得られた人に限ることが確認された。
7) ニュースレターの担当者の確認
8) 会計報告
9) 事務局報告
2.2008~2009年度第2回理事会報告
日時:2009年3月7日13:00~17:20
場所:日本女子大学
議事録
0) 2008~09年度第1回議事録承認
1) ワークショップの件
(1)2名のコーディネーター中心に準備が進められている。数名からの問い合わせがあり、セッション構成可能。司会者・報告者等の詳細を4月のニュースレターで報告予定。会場使用料無料化のため、上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科国際関係論専攻との共催が承認された。
(2)前回ワークショップは学会誌第5号に小特集(原稿自体は蘭理事が集約し、4月末に揃える予定)を、今回のワークショップは第6号に小特集を予定。
(3)今回のワークショップは実践講座的なものではなくテーマセッション。次年度以降は、このようなテーマセッションならば、学会大会のなかに位置づける可能性もあること、ワークショップは従来のような実践講座的なものの開催を検討することが確認された。
2) 編集委員会報告
(1)現時点で大学図書館は本学会誌を27館が所蔵し(前回報告より2 館増)、県立図書館も2館ほど所蔵。所蔵可能大学については、今後の寄贈が承認された。学会誌の販売として、アマゾンへの手続きが進行中。
(2)学会誌の発行サイクルが確認された。
(3)学会誌広告依頼先を確認した。
3) 学会誌ガイドラインの件
(1)2008年10月2日に修正された「執筆要項」が示され、他領域にまたがる本学会では、それぞれの分野の慣行にしたがうことでよいということが確認された。英文についてはシカゴスタイルを踏襲。
(2)査読規定について確認。
(3)会長・編集委員長経験者(および分野別のバランスを考えたメンバー)を「編集顧問」(任期無期)として、今後の学会誌編集にご協力いただくことが提案され、承認された。
(4)査読者・編集顧問等の公開が検討され、他学会の状況等などを見た上で、当分の間本学会では現状通り公開はしないことが確認された。
4) 電子化の件
学会誌 3,4号はすでにCiNiiに掲載されていること、および1,2号の執筆者についての許諾状況について報告された。
5) 第7回大会の件
(1)前回理事会で提案した内容とは大きく異なる内容を検討中であることがパネリスト案として提示された。
(2)担当の吉田理事と清水理事にシンポジウム案の最終的議論を一任した。
(3)会場校の北星学園大学へ公開講座補助金を申請することが報告された。
(4)シンポジウムタイトルは、「アイヌのオーラルトラディション」に決定。
(5)「日本以外の先住民族問題(外国のマイノリティ)」という内容での自由報告を集めた分科会を企画し、ニュースレターで公募。
6) 学会倫理規程の件
(1)話し手に対する倫理、アーカイブ構築のための倫理などがとくに重要であることが示され、指針(素案)や日本や英国・豪州などの状況その他の質疑応答がなされた。
(2)ニュースレターなどで各国の情報を提供する方向が提案された。
(3)理事会で拙速に指針案をまとめて提
JOHAニュースレター第14号
第6回日本オーラル・ヒストリー学会年次大会 盛況のうちに閉幕
「第6回日本オーラル・ヒストリー学会大会」は、10月11日(土)、12日(日)の両日にわたって慶応義塾大学三田キャンパスで開催されました。4分科会と実践交流会では、いずれも活発な報告や議論が交わされました。大会2日目、午後からは「オーラルヒストリーと<和解>」と題するシンポジウムが開かれ、グアテマラでの大量虐殺事件や満州移民、差別問題を素材として、熱心な討議が繰り広げられました。なお、大会を通しての参加者は100名を越えています。
来年度の年次大会は、2009年9月に北海学園大学で開催される予定です。会員のみなさまの報告申し込みをお待ちしております(「お知らせ」をご覧ください)。
【目次】
(1) 第6回年次大会報告
1.第6回大会を終えて
2.第1分科会
3.第2分科会
4.第3分科会
5.第4分科会
6.研究実践交流会
7.第6回大会概要(英文)
8.大会に参加して
(2) 国際オーラル・ヒストリー学会に参加して
(3) 第5回総会
1.2007年度事業報告
2.2007年度予算案訂正
3.2007年度決算報告
4.2007年度会計監査報告
5.2008~09年度理事会構成
6.2008年度事業計画
7.2008年度予算
8.会則及び理事選挙規程の改定
(4) 第5回理事会報告
(5) ワークショップのご案内
(6) お知らせ
1.第7回大会について
2.会計から
3.第5号投稿募集
4.会員異動
(1) 第6回年次大会報告
1.第6回大会を終えて 有末賢(慶應義塾大学)
10月11日(土)と12日(日)の両日、慶應義塾大学・三田キャンパスにおいて、日本オーラル・ヒストリー学会第6回大会が開催されました。11日午前中は、少し雨が降りましたが、大会が始まってからは天候にも恵まれ、2日間で延べ90名ほどの参加者がありました。自由報告部会は4部会、計18人の報告者で、それぞれの会場で活発な議論が展開されました。初日の研究実践交流会「オーラル・ヒストリー史料の収集、保存、公開」にも多くの方々が参加されて、各自の貴重なオーラル・ヒストリー調査や史料について研究の交流が行われました。また、2日目の午後にはシンポジウム「オーラル・ヒストリーと<和解>」というテーマで、興味深い報告や討論が展開されました。
今までの学会大会においては、「オーラル・ヒストリー」という用語や概念、研究の方法や分析の意義、歴史学における意味、社会学・人類学における意味など、日本において「産声」を上げた学会の存在意義を主にアッピールしてきました。そのことは、学会を立ち上げた以上、必要でもあり、重要でした。しかし、今回の第6回大会においては、単に外側に対してのアッピールだけではなくて、オーラル・ヒストリーを研究するわれわれ自身にとって、オーラル・ヒストリーとは何なのか? 戦争や紛争、病気や死別など生身の人間たちの「声」を集めていくことと、話すこと、聞くことを通して、何が生み出されてくるのか、といった実質的な議論に入ることが課題であると認識しました。そこから、「オーラル・ヒストリーと<和解>」というシンポジウムのテーマが、開催校理事である清水透先生から提案されました。司会と討論者を務めたわれわれの意を十分に汲み取っていただいた3人の報告者の方々は、それぞれの調査実践の現場で経験されてきたオーラル・ヒストリーと<和解>という課題について、実験的な報告がなされました。もちろん、虐殺や差別の問題、「死と死別」など「和解などあり得ない」という立場もあるでしょう。その意味で、「和解」など存在しないという立場も認め、含めることで、<和解>という表現を使用しました。<和解>はある意味で、永遠の課題ですし、いつまでも問い続けるしかないのかもしれません。オーラル・ヒストリーは、単なる資料の問題でもないし、歴史記述の問題だけでもありません。一見「唐突」に見えるかもしれませんが、<和解>という人間の根源的問題とかかわっていることを問題提起しようと思ったわけです。
慶應義塾大学は1858(安政5)年、福澤諭吉による小さな蘭学塾から始まって、今年(2008年)で創立150年を迎えました。三田に塾を移したのは10年後の明治維新の時でしたが、その歴史のあるキャンパスで第6回大会が開催されたことも意味のあることだと思っています。ただし、塾内には学会会員も少なく、充分な大会準備やきめ細かいご案内ができなかったことをお詫びいたします。マイクや機械の整備などにおいても不都合が生じ、皆様に大変ご迷惑をおかけしました。最後に準備から受付、進行、後片付けにいたるまで担っていただいた若い大学院生や会員の皆様、本当にどうもありがとうございました。会長以下理事の皆様方にもお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。
2.第1分科会:「<戦争体験>とオーラル・ヒストリー」
第一報告 木村豊「東京大空襲の記憶に関する一考察―1945年3月10日を生きた家族への聞き取り調査からー」では、東京大空襲に関するマスター・ナラティブの不在であるという認識に立ち、空襲遺族会の一つの家族にインタビュー調査を行い、大空襲の記憶がどのように継承されているかを読み解こうとした。いままでの戦争体験の被害者たちの記憶の継承という時には、その空襲をどのように逃げ回ったかなどの体験の語りが主であったが、発表では家族という「私的な空間」の中で、<戦争体験>がいかに捉えられ継承さ、それぞれの人生にどのような意味を持っていたかを解明しようとした点がユニークであった。東京大空襲を継承することの重要性が近年言われている時に、新しい視点から空襲体験の記憶を掘り起こす発表であった。
第二報告 八木良広「沖縄線を語り継ぐ(1)オーラル・ヒストリー実践としての沖縄線研究」では、沖縄戦についての実証研究をしている石原昌家氏にインタビューし、沖縄戦の記憶をどのように解釈するかについて発表された。事実と真実を見分ける方法が重要であると述べられ、証言を振るいにかける必要性が指摘された。また、事実は必ずしも真実ではないことなどが、「集団自決」をめぐる証言について、当時の駐在巡査の発言と他の住民の証言との関係性について言及され論じられた。そのように論じる時には、<戦争体験>の語り手の立ち位置も問題が重要であると指摘された。
第三報告 石川良子「沖縄戦を語り継ぐ(2)-「戦争」と「日常」をつなぐ」では、平和活動に参加する学生たちにインタビューを試み、戦争体験を持たない現代若者がどのように戦争体験を語り継ご
うとしているのかについて発表した。沖縄国際大学の近くで起きた「ヘリ事件」(「事故」とは呼ばない)をきっかけに、平和の重要さを実感し、「笑顔で生きたい」という平和活動「スマイルライフ」の活動として、平和ガイドとしている若者たち。その若者たちにとっては、平和活動を特別なものと見なすプロの活動家とは違う、大学生たちの、自分たちの身近にある問題から発展したこのような活動の今後の可能性に論じられた。
第四報告「沖縄戦を語り継ぐ(3)-戦争体験の表象方法」では、戦争体験を継承する難しさとして、体験者の「特権性」の存在があり、また、語り継ぐ人々は体験の特権性を強調し、体験者をヒーロー化する傾向があることが指摘された。その批判に基づき、どのような<戦争体験>の語り継ぎの方法があるかを、南風原文化センターへのフィールド調査に基づき発表している。このセンターの遺品の展示の仕方に見られる「作品化」により、見学者が体験に直接関わる工夫などがあるという点が説明された。また、語り部を観察する説明員と来館者との相互作用という「対話」を通して語りが継承されるなどの例が指摘された。時間が限られていたものの、部会の後でも活発な質疑応答があった。<戦争体験>の語りの継承の仕方について、幽霊話などのようにファンタジー化するなどの方法もあるのではないかなどの指摘。また、事実と真実の違いをどのように検証するのかなどの議論も展開された。(塚田 守)
3.第2分科会:「オーラル・ヒストリーの多様な展開」
第2分科会は4人の報告者による興味深い報告が並び、テーマはそれぞれ異なるもののオーラル・ヒストリー研究の幅広さとおもしろさを示してくれる分科会となった。第一報告者の小林奈緒子氏(島根大学図書館)は「運動史におけるオーラル・ヒストリー研究の有効性」と題して長崎被爆者運動史における戦災者組織とその活動をめぐるオーラル・ヒストリー調査を紹介された。「戦争体験を抱えて人々がどのように生きてきたのか、何を求め、訴えたかったのかを聞き取りによって読み解く」試みはオーラルヒストリー研究の可能性を深めていくことができるだろう。
第二報告者の下田健太郎氏(慶應義塾大学大学院)は「水俣埋立地の石像物を創出するライフヒストリー」として、水俣病被害者家族で水俣湾埋立地後の公園に二体の石像を建立した女性のライフヒストリーからその「不自然な読点」に注目し水俣病認識をめぐる問題を浮かびあがらせた。とくに語りのなかの「不自然な読点」への注目というユニークな着眼は今後の研究が期待される。
第三報告者の郷崇倫氏(JAリビングレガシー代表)による「JAリビングレガシー、オーラルヒストリー、そして日系二世朝鮮戦争退役軍人(JAリビングレガシーのオーラルヒストリーを通じた活動と対話の実績報告)」はJAリビングレガシーというアメリカ合衆国を拠点とするNPOのオーラルヒストリー活動を紹介された。日系アメリカ人だけでなく日米両国でのオーラルヒストリー活動を実践する方針が披露された。
清水美里氏(東京外国語大学大学院)は「八田與一物語の形成とその政治性-日台交流の現場からの視点」と題して、戦前期に台湾南部の鳥山頭ダムを中心にした水利事業である嘉南大?を手がけた八田與一をめぐる台湾と日本での語られ方を比較検討し、物語の変容を政治性の観点から検討した。八田物語の両国における差異の縮減という指摘は語りの分析に比較研究の視点をとりいれて浮上したものであり、オーラルヒストリー研究の新たな展開可能性が見いだされる。各報告者への質疑が出て、報告者と聴衆との議論が活発であったが、最後に4人に共通する質問としてオーラルヒストリーへのパッションを尋ねる問いかけがあり、各人の研究への動機が披露された。各報告者が表明したオーラルヒストリー研究へのきっかけはそれぞれのバックグラウンドの反映された個性的な回答であり、感動的なものであった。(小林多寿子)
4.第3分科会:「ポスト・コロニアルとオーラル・ヒストリー」
定刻より7分ほど遅れて、分科会が始まった。開始当初はフロアの参加者も少なかったが、半ばを過ぎるころには、3、40人前後の参加者となった。まず、松岡昌和氏(一橋大学大学院)の報告タイトルは、「日本軍政下シンガポールにおける「『日本文化』」」である。日本軍政下における音楽工作、とくにラジオを通じて行われた音楽教育のプロパガンダの理念と実態を明らかにしたもので、カタカナ新聞『サクラ』における日本語教育やラジオで唱歌を流す皇民化政策が進められた。National Archives of Singapore所蔵のOral History Collectionのなかの証言が興味深いが、今後は、証言データの質を検討したうえで、詳細に見ていくことで厚みのある研究になると思われる。
第2報告の北澤慶氏(大阪大学大学院)は、「“在韓日本人妻”の相互扶助組織・『芙蓉会』」と題して、当事者の一人のライフストーリーから、「芙蓉会」の意義を検討している。日本への窓口であり、日本との出合いを感じられる場でもあることが確認されたが、今後はさらに多くの当事者に調査を続けて芙蓉会の重層的な意義をあきらかにすることが期待される。
続く南誠氏(日本学術振興会特別研究員)は中国残留日本人についてである。「社会運動の中の『中国残留日本人孤児』」と題し、とくに国家賠償訴訟運動における「棄民」と「戦争犠牲者」のモデル・ストーリーに対して、それとは異なるストーリーが生まれつつある現状が指摘された。
第4報告と第5報告は、在日朝鮮人の「民族カテゴリー」をめぐる問題であった。橋本みゆき氏(横浜市立大学非常勤講師)は、在日二世女性の結婚をめぐって、「ある在日韓国・朝鮮人女性のライフストーリーにおける親密圏の条件」と題する報告を行った。配偶者選択に悩む女性のライフストーリーから、親密圏の行為において民族属性がどのように影響したのかを検討した。安易な「文化」や「民族」による理解ではなく、具体的な社会関係のなかでエスニシティを理解する必要性を説く。また、李洪章氏(京都大学大学院)は、「カテゴリーを拒否する『ダブル』のライフ・ストーリー」と題して、在日朝鮮人と日本人の間に生まれた「ダブル」の存在に焦点をあて、一人の「ダブル」の女性のライフストーリーから、彼女が「民族」カテゴリーから自由な現在の考え方にどのように至ったのかを読み解いている。そこにあるのは、個人と個人の対話を重視し民族カテゴリーの解体を目指す姿勢であった。
最後の30分ほどの全体討論では、それぞれの報告に質問がでるなど、5人の報
JOHAニュースレター第13号
日本オーラル・ヒストリー学会第6回大会が、2008年10月11日(土)、12日(日)の二日間にわたって、慶応義塾大学三田キャンパスにおいて開催されます。みなさま、お誘い合わせのうえ、ふるってご参加ください。
【目次】
(1) 第6回年次大会
1.大会プログラム
2.シンポジウム報告要旨
3.自由論題報告要旨
4.会場案内
(2) ワークショップ報告
(3) 理事会報告
(4) 事務局便り
(1) 日本オーラル・ヒストリー学会・第6回年次大会
1.大会プログラム
http://joha.jp/?eid=93
2.シンポジウム報告要旨
http://joha.jp/?eid=94
3.自由報告要旨
http://joha.jp/?eid=94
4.会場案内
慶應義塾大学三田キャンパス・マップ
http://www.keio.ac.jp/ja/access/index.html
(2) 第4回ワークショップ報告
去る7月5日(土)、同志社大学において「JOHA第4回ワークショップ」が開催されました。第1部実践講座では岸衛氏を迎え、被差別部落における聞き取りの経験を踏まえて、聞き取り・テープ起こし・論文化というライフストーリー研究の全過程を披露していただき、第2部テーマセッションでは、「<戦争の記憶>を継承するとはいかなる営為か」という共通課題に関し3名の会員によって自らの調査経験にもとづく報告が行われました。第1部、第2部ともに、素晴らしい報告と熱心な質疑・討議が5時間にわたって交わされました。首都圏以外での開催、若手会員への公募によるテーマセッションという試験的な試みにもかかわらず、参加者は60名を超えて大盛会でした。今後とも、このような試みがJOHAの定例活動として積み重ねられることを念じております。
最後に、会場をお世話いただきました同志社大学鰺坂学先生には厚く御礼申し上げます。なお、会場情報で混線があり、会場に迷われた方がいらっしゃったようです。主催者として配慮が足りなかったことを深くお詫び申し上げます。(文責:蘭信三)
テーマセッションの報告(高山真)
1.テーマセッションの狙い
近年、<戦争の記憶>という問題は、人文・社会科学の様々な領域で活発に論じられてきた。そして、この議論と深く関連するかたちで、戦争の記憶を継承しようとする個人的、組織的な実践活動や、その可能性を考える研究が営まれている。しかし、戦争体験者の高齢化という現実をはじめ、ポストコロニアルをめぐる議論等が進行中の現在、戦争の記憶の継承には議論すべき多くの問題が残されている。なかでも、直接の戦争体験をもたない若者たちにとってそれは重要課題といえる。職業、世代、性、国籍、あるいは党派性を越え、<いま―ここ>に生きるものとして、報告者・参加者がともに<戦争の記憶>を継承することの可能性について、等身大の立場から論じる場を設定することがセッションの狙いであった。
2.報告概要と主要な質疑
当日、第一報告者である門野里栄子は、研究者という立場から自身も沖縄の平和活動に関与し、その活動の担い手へのインタビュー調査に基づき、「体験」、「当事者」をキーワードに「語られない経験を継承するとは」をテーマとした話題提供を行った。第二報告者である上原立人は、社会福祉士を務めるという立場から、具体的な臨床事例として一つのジェノグラムを紹介し、精神的・身体的外傷と嗜癖行動について検討する。さらに沖縄出身者という立場から、この問題を社会病理として捉えることで、沖縄戦における戦時暴力と、戦後の私宅監置、障害者の関係という分析の視角の可能性を紹介した。第三報告者である高山真は、長崎における原爆被災の生存者へのインタビュー調査を事例に、被爆者という主体性の構築、インタビューの場における語り手と聞き手の関係性の変化、継承の営みに携わる生存者による継承観の変化を中心として、原爆の記憶の継承という問題にたいする話題提供を行った。
上記報告にたいして、コメンテイターの八木良広から「個々の報告者が抱く理想的な〈継承〉のイメージについて」、フロアから「加害/被害という枠組みに関する認識について」「語り手による語りと聞き手の自己認識に関して」等の質疑があり、個々の調査経験及び事例に基づく応答のやりとりがみられた。
3.テーマセッションを振り返っての感想
若手が発案・運営を担うテーマセッションという学会初めての試みにおいて、コーディネイターという貴重な経験を御提供頂けましたこと、また、当日は猛暑のなか私たちが予想した以上に多くの方々がご来場くださったことに心から感謝を申し上げます。
セッションの内容については、議論の場では十分に語り尽くされなかった問題が数多く残されているように思います。また、一つの目標であった「〈いま―ここ〉に生きる若者たちが等身大の立場から議論する」ことが、どの程度実現できたかという点に関して、コーディネイターとしての力量不足を痛感しております。しかし、セッションでの議論、あるいは懇親会場での語り合い等をとおし、議論の内容に関しては賛否両論あれ、多くの方々が今回のテーマセッション企画に高い関心を示して下さったと認識することができました。
「若者たち」の自発的な運営による議論の場が、今後、より質的な発展をみることを願います。
(3) 理事会報告
第4回(2007年~2008年)理事会議事録
日時:2008年7月5日10:30~13:00
場所:同志社大学(新町キャンパス)臨光館
出席:蘭、有末、小林、川又、酒井、佐渡、塚田、吉田
委任状:野本(事務局長)、桜井、早川、舛谷、好井、清水
当日書記:酒井
第3回理事会議事録確認
第3回理事会(2008年3月9日)の議事録が承認された。
議題
1.第6回大会の件
1) プログラム編成
自由報告については、5月15日が締め切りであったが、6月20日まで締め切りを延長し、最終的に18人の申し込みがあった。これまで会員でなかった報告希望者は2007年度からの会員となった。会費は1名を除いて入金済み。プログラムが決定された。
2) 託児室の件
当日の大会会場では、託児にふさわしい環境(くつを脱いで上履きで過ごせる場所の確保)が整わないので、託児について問い合わせがあった場合は、近くの品川プリンスホテルにある小学館経営の「だっこルーム」〈託児料2000円/h〉を紹介する。
2.学会誌第4号の件
以下の事柄が舛谷編集委員長の報告書に基づいて話しあわれた。
1) 『日本オーラル・ヒストリー研究』4号編
JOHAニュースレター第12号
【目次】
(1) 第6回大会の報告者募集
(2) 第6回大会シンポジウムについて
(3) 第4回ワークショップについて
(4) 事務局からのお知らせ
(1) 第6回大会の報告者募集
(2) 第6回大会シンポジウムについて
テーマ 「オーラル・ヒストリーと<和解>」
趣旨
第4回大会の「戦争とオーラル・ヒストリー」、前回の「オーラリティとはなにか」においては、オーラル・ヒストリーの方法やそれを駆使した事例など紹介や研究姿勢などについては議論されてきたが、「オーラル・ヒストリーの先にあるものは何か?」という根源的な問いかけからシンポジウムを企画したことはなかった。
今回は、われわれの研究実践そのものを内在的に問いかけるオーラル・ヒストリーの声、語り、対話、和解などについて、実践的に議論を展開してみたいと思う。
「なぜ、語られるのか? なぜ、語られないのか?」「戦ったもの同士の対話は可能か?」「加害者側と被害者側の<和解>は可能か?」「当事者の立場はわかるのか?」「死者との<和解>は可能か?」「生き残った者の使命とは何か?」「<和解>と<あきらめ>はどう違うのか?」・・・・などなどさまざまな声を聞くこととわれわれの<生き方>との関係を問い直していきたい。
具体的には、満州<移民>や中国「残留」日本人の聞き取りを続けている蘭信三氏には、日本政府、日本社会との<和解>や中国人「養父母」との「和解」について報告していただく予定である。グアテラマにおけるマヤ民族大量虐殺を調査されている狐崎知己氏には、特に「真相究明委員会」の活動と住民の<和解>についてご報告していただく。これらは、国家や民族の壁を「戦争」や「虐殺」や民族対立だけではなく、われわれは日常生活においても、差別、犯罪、虐待の現実を抱えている。このような問題を社会学の立場から研究実践している好井裕明氏に最後にご報告をお願いする予定である。差別と<和解>、言葉と権力、生き方と「対話」などについて考えていきたい。
報告者と司会・討論者
・司会:有末賢(慶應義塾大学:社会学)
・報告者:蘭信三氏(上智大学:社会学)、狐崎知己氏(専修大学:ラテンアメリカ研究)、好井裕明氏(筑波大学:社会学)
・討論者:清水透氏(慶應義塾大学:メキシコ史)
(場合によっては、さらにもう一人、討論者を加える予定)
(3) 第4回ワークショップについて
http://joha.jp/?eid=88
http://joha.jp/?eid=91
趣旨/概要
近年、<戦争の記憶>という問題は、人文・社会科学の諸領域で活発に論じられてきた。そして、この議論と深く関連するかたちで、<戦争の記憶>を継承しようとする個人的、組織的な実践活動や、その可能性を考える研究の営みがなされている。しかしながら、戦後60年余、戦争体験者の高齢化をはじめ、<戦争の記憶>の継承には多くの課題が残されている。なかでも、若き「戦無派世代」にとってそれはより複雑な問題である。そもそも、現代を生きる若者にとって戦争とはどのような意味を持つのか、<戦争の記憶>を継承するとはいかなる営為なのか、それはどのような形で継承可能なのか、等々といった根本的な問題が横たわっている。こうした現代社会の状況に応え、本セッションでは上記の問題に関心を寄せる3名の会員による報告(各30分予定)、コメンテータによる小括をふまえ、フロアを交えてのディスカッションを行う。
コーディネータの高山氏は、基調報告として、継続的に実施している長崎の「語り部」を対象としたオーラル・ヒストリー実践をとおし、原爆被災の生存者が「継承」という問題をどのように捉えているのかという論点を中心に、<戦争の記憶>を継承するという営為についての考察を、調査経験に基づき報告する。
上原氏は、精神科クリニックにおけるソーシャルワーカーとして臨床に携わり、沖縄出身者であるという立場から、戦後の沖縄社会における精神障害者とカテゴライズされる人々の経験について、「トラウマ」、「語り手と聞き手の関係性」という関心に基づいた報告を行う。
門野氏は、沖縄における反戦平和活動の担い手を対象とした調査経験に基づき、直接の戦争体験者ではない次世代の人々の語りをとりあげ、なぜ彼らは体験者による経験を「継承」しようとするのかという視点から考察を行い、「継承」という行為の可能性について報告する。
東京在住の被爆者を対象としたライフストーリー研究、<戦争の記憶>に関する研究を専門とするコメンテータの八木氏は、上記3名の報告にたいして、小括的なコメントを行い、フロアを交えた議論へのスムーズな移行を図る。
(4) 事務局からのお知らせ
新規入会
(非掲載)
2007年度会費納入のお願い
2007年度の会計年度は2007年7月1日から2008年6月30日までです。2007年度会費の支払いがお済みでない方は、早急に会費の納入をお願いいたします。なお、振り込み用紙には住所氏名、電話番号の他に電子メールアドレスを記入してください。学会誌第3号は、2007年度会費を支払い済みの方に送りしております。
また、2006年度以前の会費を未納の方は、2007年度会費と併せてお振り込みくださいますようにお願いいたします。お振り込みが確認され次第、既刊の学会誌などをお送りいたします。なお、本学会では会則により、2年間会費未納の方は退会の扱いとなりますので、ご注意ください。学会運営は、みなさまの会費によって支えられています。今後の本学会の発展のためにもご協力くださいますようにお願いいたします。
〈会費〉
一般会員 5,000円
学生会員・その他 3,000円
〈振込先〉
口座名:日本オーラル・ヒストリー学会
口座番号:00150-6-35333
JOHAニュースレター第11号
第5回日本オーラル・ヒストリー学会年次大会
盛況のうちに閉幕
「第5回日本オーラル・ヒストリー学会大会」は、9月15日(土)、16日(日)の両日にわたって日本女子大学目白キャンパスで開催されました。4分科会と実践交流会では、いずれも活発な報告や議論が交わされました。大会2日目、午後からは日本女子大学と共催で「オーラリティとはなにか」と題するシンポジウムが開かれ、オーラリティの特質や意義に関して学際的な討議が繰り広げられました。なお、大会を通しての参加者は97名でした。
来年度の年次大会は、2008年10月に慶應義塾大学で開催される予定です。会員のみなさまの報告申し込みをお待ちしております(「お知らせ」をご覧ください)。また、2008年7月に京都にてJOHA主催のワークショップを開催します。詳しくは本誌「Ⅳワークショップのご案内」に掲載しています。みなさま、ふるってご参加ください。
【目次】
(1) 第5回年次大会報告
1.第1分科会
2.第2分科会
3.第3分科会
4.第4分科会
5.研究実践交流会
6.シンポジウム
(2) 第4回総会
1.2006年度事業報告
2.2006年度決算報告
3.2006年度会計監査報告
4.2007~08年度理事選出過程と理事会構成
5.2007年度事業計画
6.2007年度予算
(3) 理事会
1.担当役員
2.理事会報告
(4) ワークショップのご案内
(5) お知らせ
1.学会誌第4号投稿募集
2.2008年度年次大会報告募集
3.会員異動
4.2007年度会費納入のお願い
(1) 第5回年次大会報告
1.第1分科会 オーラル・ヒストリーとエスニシティ
この分科会では三名の報告者が登壇したが、「エスニシティ」に触れつつも、オーラルヒストリー活用の三態を示す興味深い組み合わせとなった。
最初のファンセカ酒井・アルベルト氏(城西国際大学)の「ライフストーリーにおける抽象化された言説の問題に関する一考察――在日南米コミュニティとそのメディアを事例に」は在日南米コミュニティについてエスニックメディアによるモデル・ストーリーが提示され、そこに移民コミュニティのオーラルヒストリーを併用することで、「移民の戦略」という読解が行われた。二番目の矢野可奈子氏(京都大学大学院)の「占領のもとで生きる――カーレムとアームネのインティファーダ」はパレスチナ難民女性のオーラルヒストリーが、インティファーダ(民衆蜂起)経験を中心に素材として提示された。日本人研究者が直接現地語で収集したオーラルヒストリーは、圧倒的な存在感を示した。三番目の酒井順子氏(立教大学)の「個人的ナラティヴと集合的記憶の交差――第二次世界大戦後イギリスに渡った女性たちのライフストーリーの分析から」は近三十年のオーラルヒストリー研究史を踏まえ、在英日本人女性のナラティブの歴史的文脈を紹介しつつ、国民国家の歴史構築に対する異議申し立てという批評を含んでいた。
もちろん収集、解釈、批評というそれぞれの段階は、すぐさまオーラルヒストリー研究の優劣を示すものではない。そのいずれもがオーラルヒストリー活用の姿を示していると言える。その証拠として、フロアからの補足説明を促す質問がどの報告に対しても相次ぎ、時間を大きく超過してしまったことを付記しておく。
(舛谷鋭)
2.第2分科会 科学技術のオーラル・ヒストリー
第2分科会では4名からの報告があった。科学技術と社会の境界領域にアプローチする手法としてのオーラルヒストリーは、日本におけるオーラルヒストリー研究の新たな領域であり、この領域に挑む研究者がそれぞれの研究実践を踏まえて発表を行なった。第1報告者の伊藤憲二氏(総合研究大学院大学)は「科学技術社会論におけるオーラルヒストリー」と題して、近年の科学技術社会論の傾向にオーラルヒストリーの方法が適合していることを指摘し、北米における科学史のオーラルヒストリーを事例として紹介した。1960年代の量子力学創生期の物理学者たちへのインタビュー記録のアーカイブ化(AHQP)に始まり、現在の米国物理学会の物理学史センターに設けられたオーラルヒストリー・アーカイブに至るまで、北米ではオーラルヒストリーは常に科学史資料としての有用性を示してきた。日本では北米に比べてこのような試みははるかに弱体であり、その理由として日本の科学史家の資料の収集・保存に対する関心の欠如を伊藤氏は挙げた。しかし近年の科学技術社会論の傾向は科学の実践や文化的側面への関心を喚起するものであるとし、科学技術のエスノグラフィー、科学とジェンダー、サイト・スタディーズといった新たな研究視点でのオーラルヒストリーの有効性を論じた。
第2報告者の安倍尚紀氏(東京福祉大学)は、「科学技術分野に於けるオーラルヒストリーの方法論的な諸問題―社会学の視点から」と題して、情報と記憶のドキュメンテーションとしてのオーラルヒストリーの方法論の分析を試みた。そして資料や研究動向の羅針盤として機能するオーラルヒストリーは、社会学的アプローチとアーカイブスとの統合によって、問題指向型と記録指向型の両面を備えるものであるべきと結論づけた。第3報告者の平田光司氏(総合研究大学院大学)からは「総研大におけるオーラスヒストリー計画」と題して、同大学における大学共同利用機関の歴史研究の一環としてのオーラルヒストリープロジェクトの報告があった。その計画意図は巨大科学を内部史ではなく社会史として記録することにあり、また学界の共有財産としてアーカイブ化も合わせて実施することにある。具体的計画として、高エネルギー加速器研究機構の社会史、国立天文台すばる観測所プロジェクトの紹介があった。最終報告者の木村一枝氏(核融合研究所アーカイブ室)は「核融合アーカイブスにおけるオーラルヒストリーの試み」と題して、日本における核融合研究の文書史料のみでは不十分な周辺状況を提供しうる方法としてのオーラルヒストリーの採用と、実際のインタビューに際しての段階別の手法および課題を詳細に述べた。
伊藤氏の言う「日本における文理の壁が技術的な営為に対する適用を阻む」ゆえに、科学技術分野におけるオーラルヒストリーは近年までその有用性すら論じられる機会を得ることがなかった。その意味で、4人の報告者からの問題提起と将来への展望に、この分野におけるオーラルヒストリーの今後の可能性を期待させる分科会であった。
(吉田かよ子)
3.第3分科会 戦争の記憶
戦争のオーラル・ヒストリー学会の成熟さを感じるに十分であった。まず第一発表者の渡辺祐介さん(立命館大学大学院)と第二発
JOHAニュースレター第10号
日本オーラル・ヒストリー学会第5回大会が2007年9月15日(土)、16日(日)に日本女子大学目白キャンパスで開催されます。皆様お誘い合わせのうえ、ふるってご参加ください。
【目次】
Ⅰ 第5回年次大会
1.大会プログラム
2.第5回大会シンポジウム
3.自由論題報告要旨
4.会場案内
Ⅱ 第3回実践講座報告
Ⅲ 理事会報告
Ⅳ 事務局便り
Ⅰ 日本オーラル・ヒストリー学会・第5回年次大会
1.プログラム
http://joha.jp/?eid=82
2.第5回大会シンポジウム
http://joha.jp/?eid=80
3.自由論題報告要旨
第1分科会
http://joha.jp/?eid=79
第2分科会
http://joha.jp/?eid=78
第3分科会
http://joha.jp/?eid=77
第4分科会
http://joha.jp/?eid=76
4.会場案内
http://joha.jp/?eid=81
Ⅱ 第3回オーラル・ヒストリー実践講座報告
Ⅲ 理事会報告
1.2006年度第4回理事会
日時:2007年1月20日 11:00~12:50
場所:ホテルパシフィック東京、ティーカクテルラウンジ
出席:酒井、吉田、有末、佐渡、小林、川又、桜井
欠席:蘭(委任状)早川、舛谷(委任状)、中尾、野本
議事録作成:桜井
報告
(1) 実践講座(11月)について
(2) ニュースレター9号ML配信について
議題
(1) IOHAの大会開催打診の件
まだ時期尚早との意見が多く、IOHA学会長へその旨の返信をだすことになった。2012年以降の開催の可能性。
(2) 会員登録とML管理
現在会員数は226名(メールアドレスがわからない人は、40名)となっている。
(3) 編集委員会
第2号の学会誌は、編集委員長から各図書館に送るが、一定量は在庫として確保しておく。また、次号の原稿締め切りを3月末にし、原稿送付の宛先や問い合わせは、有末研究室とすることが確認された。事務局から会員へ連絡。
(4) 第5回大会(日本女子大学)
大会開催日が9月15日、16日の二日間に確定。シンポジウムの企画は、あらためて活動委員会で検討してもらうことになった。
(5) 新規入会者の承認
(6) その他
OHA大会(10月24日~27日)での報告者募集について。
(7) 次回理事会開催日
第5回理事会は4月21日(土)午後1時30分より立教大学にて。
2.第5回理事会
日時:2007年4月21日 13:30~16:50
場所:立教大学6号館
出席:有末、川又、小林、酒井、桜井、早川、舛谷、野本
欠席:蘭、佐渡、中尾、吉田(すべて委任状有り)
報告
(1) 大会自由論題報告の募集
(2) 名簿作成
議題
(1) 第5回大会スケジュールについて
研究活動委員会から、日程案と自由論題報告の部会編成案について説明があった。スケジュールと部会編成。
(2) 理事選挙(改選)について
事務局長から有権者についての報告および説明があった後、審議。
(3) 編集委員会
編集委員長から第3号の編集過程についての報告。査読形式について再検討。
3.第6回理事会
日時:2007年7月7日 13:30~17:00
場所:立教大学12号館
出席:有末、酒井、舛谷、野本、小林、川又、桜井
委任状:吉田、中尾、佐渡、蘭、早川
司会&記録:桜井
(1) 2007~2008年理事選挙結果
投票総数:61名、有効投票:60名、記名総数:176
(2) 第5回大会について
(3) 学会誌の編集について
第3号の編集経過報告。特集について。印刷所をインターブックスに依頼。書評については3号では見送り。会員の本を優先的に、次号で取り上げる。3号に、新たにシカゴスタイルを原則とする英文投稿規定を掲載する。3号の執筆者から公衆送信権の許諾等をとることとした。著作権の所属を著者にするか学会にするかは、今後検討。ISBNをとる。
(4) 会計報告
若干の黒字見通しであるとのこと。広告収入を得るために、各出版社に依頼することにした。総会資料(決算および予算)を次回理事会までに作成、総会までに監査を受ける。
(5) 事務局から
新規会員の入会および活動の経過報告。新規会員の承認。ニュースレター10号の発行(大会プログラム、理事会報告、会員異動などの掲載)総会資料を相談のうえ次回理事会までに作成する。
(6) 次回理事会
第7回理事会は、9月15日(土)午前10時半から日本女子大学で。
Ⅳ 事務局便り
1.会員の異動
(非掲載)
2.新年度会費納入のお願い
当学会は会員の会費によって運営されております。2007年7月1日から新年度になりましたので、2007年度(2007.7.1から2008.6.30まで)の会費を振り込んでくださいますようお願いいたします。なお、振込取扱票には住所氏名、電話番号、電子メールアドレスを記入してください。
また、2005年度および2006年度会費を未納の方は早急に振り込んでくださいますようお願いします。本学会では会則における規定により、2年間会費を未納の方は自動的に退会の扱いとなり、ニュースレターの配布も今回が最後となります。発足当時からの会員の方も、引き続き会員として本学会の発展のためにご協力くださいますようお願いいたします。
<会費>
一般会員 5,000円
学生会員・その他 3,000円
<口座名>
日本オーラル・ヒストリー学会
<口座番号>
00150-6-353335
(編集発行)
日本オーラル・ヒストリー学会事務局
(事務局連絡先)
〒100-8691東京中央郵便局私書箱52
Tell/fax: 03-5395-1575
joralhistory-sec[at]fb3.so-net.ne.jp
JOHAニュースレター第9号
第4回大会
熱気に満ちた議論で盛況のうちに終える!
http://joha.jp/?eid=62
「戦争と植民地期」をメインテーマとした「第4回日本オーラル・ヒストリー学会大会」は、9月23日(土)、24日(日)の両日にわたって東京外国語大学で開かれました。シンポジウムではオーラル・ヒストリーの方法論に関する包括的な議論と戦後60余年を経た現在における画期的な実践例が紹介されました。また、一般公募で参加された若手研究者の方々から意欲的な研究成果が報告されました。大会で提起された議論は、学会誌や様々な機会を通じて、今後一層深まっていくことが期待されています。
来年度の大会は2007年9月に日本女子大学目白キャンパスで開催されます。会員の皆様の公募報告への応募をお待ちしています。詳細はおってお知らせしますが、次回大会での報告応募の締め切りは2007年3月末の予定です。
また大会で行われてきた研究実践交流会の継続的開催への要望が出されましたので、今週末11日に急遽「秋季実践研究会」を開催することとなりました。皆様ふるってご参加ください。
【目次】
Ⅰ 大会報告
1.シンポジウム
2.A History と the history
3.第1分科会
4.第2分科会
5.第3分科会
6.第4分科会
7.実践交流会報告
8.総会議事録
Ⅱ 海外の動向
Ⅲ 秋季実践研究会および第3回実践講座
1.JOHA秋季実践研究会開催のお知らせ
2.第3回オーラル・ヒストリー実践講座の開催について
Ⅳ 第5回大会自由論題報告募集
Ⅴ 学会誌第3号公募論文募集
Ⅵ 入退会について
Ⅶ 理事会報告
1.第1回理事会
2.第2回理事会
3.第3回理事会
Ⅷ 事務局便り
Ⅰ 大会報告
1.シンポジウム「戦争・植民地期」について(中尾知代)
「戦争・植民地期」を主題にし、場所を東京外国語大学で、と決まったときから、私の苦吟は始まった。本テーマは、JOHA第1回目大会に伊藤隆・荒井信一とその他諸氏に戦争の分科会にお話頂いたときから、一度は大会メインテーマにしようという案はあった。
JOHAではどういう特色を出せるのか。全国の、戦争に関わる聞き取りをしている団体やグループ、個人は、調べ始めると数限りなくある。 誰をパネリストにするか、悩みはつきなかったが、個別応募者の中から
(1)オーラル・ヒストリーと歴史学とのクロスセッションの観点から、中村政則先生に登壇いただくことにした。
(2)元兵士が若者と戦争体験をビデオで保存するボランティア運動を続けている「放映保存の会」に、<民間活動>と<戦争経験の継承>という点から参加を願った。
(3)さらに、以前から関心をもっていた、「島クゥトゥバ」で沖縄戦争体験を記録している比嘉さんに、母語でなくては話せぬ内容と、植民地―被非植民地の観点からお話をお願いすることにした。
「戦場体験放映保存の会」では、2人の元兵士の方から、「なぜ、自分たちが語り残さねばと思ったか」「無色ということ」についてのテーゼが語られ、事務局を勤める中田さんから、現在の活動の内容と、全国に広げ展開したいというビジョンが語られた。続いて中村政則氏は、歴史学者としてこれまで続けてきたオーラル・ヒストリーを、<八路軍に留用された日本女性>、らい者と診断され、死を命じられた看護婦仲間を死なしめた女性の語りについて話された。中村氏はまた、聞き取りの中であらわれる、人間が人間でなくなる瞬間・人間に立ちもどる瞬間や、あるいは「常識では信じられない現象」をどう解釈するのか、という問いかけをした。発表される横で聞いていると、中村氏自身も、戦場体験放映保存の会も、聞き取り相手について語っているときは、「語っている人」の声や表情が蘇るのか、そのライフストーリーの中に、引き込まれていってしまう感覚だった。
本来は第二番目に登壇するはずだった比嘉氏だが、映像DVDが機械と合わず、第3番目に登壇いただき、映像もビデオ装置になったので、せっかく今回村山元子さんに編集頂いたというDVDが字幕までクリアにみられない聴衆もおり、その点、申し訳なかったと思う。比嘉さんが、どこかで居づらそうにしている感覚はあったのだが、この理由は後からメールのやり取りで、明らかになった。比嘉さんは「無色」ではなく「侵略色」があるではないか、と立腹していたというのである。(その後、戦場体験放映保存の会とのディスカッションもしばし継続した。詳細は次号のジャーナルでより明晰に整理されると思う)
――戦争の体験を、語ったり、継承するときに「無色」というのはありえるのか。比嘉氏は、沖縄のおじい、おばあの体験は、いろいろ聞き取っていけば「無色」に近づくと思う。しかし兵士の聞き取りはいくらやっても「軍事色」ではないか、という。一方、戦場体験放映保存の、<無色>は確かに複雑な概念だが、日本では、戦争体験を語ったり、解釈するかで、<色つき>と烙印をおされる、だから、ありとあらゆる立場の人を集めたい、そして聴く側は、中立でありたい、という立場から<無色>という言葉を使う。「無名」は金儲けや、この活動で名をあげるのが目的でないという宣言だという。
だが、やはり沖縄戦の体験を数多くきいてきた比嘉さんに、「色」というのは、侵略色という概念が先にくる。懸命にかたる日本元兵士の声も、彼には一方的に聞こえただろうか。
敬老の日の直後だから黙っていた、そうだ。(おじい・おばあに対する尊敬の念は、沖縄で強いといわれる)比嘉さんは、沖縄の話を数多く講演しているが、実際に「日本軍人」「日本兵」と並んだのは始めての体験なのだった。比嘉さんによれば、こういう風に日本兵に語られちゃ「おばあらがこれない」のでDVDが写らなかった、とマンタリテ的に解釈されている。これに対し、元兵士の方は、もっともっと比嘉さんと膝をつきあわせて話したかったと述べておられた。比嘉氏は、その意見は「映像がすべてを語ってくれる」と思っておられ、沖縄の島クトゥバがわかる参加者は、彼女たちの表情をみて「チンムドゥンドゥン」{ 心がもりあがりどきどきする} した、という。沖縄体験も、被害だけでなく種々の側面が選ばれていたので、島クトゥバを聞いているだけでも、伝わるものは大きかったが、やはり大スクリーンのほうがベターであったろう。
本シンポジウムの主題は「戦争・植民地期」であったので、今回の人選は、まさに日本最初の植民地である<琉球王国>の方を組み合わせは、「島クトゥバ」でしか語れない母語の問題とともに、植民地―宗
主国側をテーゼ化したかったからだ。だから、言葉としてディスカッションにはなりえなかったが、このコロニアリズムの緊張関係そのものがシンポジウムに現前していたことになる。
今回は、歴史学とオーラル・ヒストリーのみ、戦場体験の継承のみ、植民地問題に絞るという、選択もありえた。だが、各問題は種々の研究会で行われているので、あえて風呂敷を広げてみた。今後はそれぞれに浮かび上がる問題を、さらに続けて、論じ続けることができれば、と願う。細分化されたところでは其々の結論になる。だが今回は、せっかく幅広い場としたのだから、このような「出会い」をもとに、今後も継続・発展・展開してくれることを心から望んでいる。
2.A history と the history(中村政則)
今回、JOHA(日本オーラル・ヒストリー学会)に初めて参加した。全体で30近い報告と討論があって、密度の高い学会であった。20 代、30 代の若い研究者の報告が多く、テーマはバラエティに富んでいた。オーラル・ヒストリーそれ自体の若さと可能性を示していたように思う。以下、私に対する質問に答える形で、参加記を記したい。
Ⅰ 個別報告は、一人当たり報告時間が 20 分、討論20分で、誰もが時間不足を感じていた。試みに、ある大学院生に学会で ①報告時間30分にして報告者を制限する、②申し込み者全員に報告してもらうが、報告時間は20分にする、のいずれが良いかと聞いたら、
その院生は「せっかく申し込んだのに、落とされるのは嫌だ」といって②「申し込み者全員に報告させる」を希望していた。私としては①のほうを望むが、その代わり「落ちた人」は次年度大会で優先するなどの措置が必要であろう。シンポジウムでの持ち時間は1グループ報告時間40分、残りが討論時間だが、一発表者の持ち分は20分となる。3つの報告があったので、これだけで3時間、時間配分はこれが限度だと思うが、討論時間があまりに短く、フラストレーションを起こしていた参加者は多かったに違いない。それにしても「戦争・植民地期」というテーマ設定は(時宜をえて)タイミングがよく、多くの報告希望者を惹きつけた。全体として、今大会が成功したのは、そのためである。
Ⅱ 私の報告に対して5枚ほどの質問用紙が回ってきたが、答えることができたのは、わずか1つ(マンタリテの問題)に過ぎなかった。どんな質問があったかを紹介すると、1.「<戦争体験>と<戦後体験>が切り離しえないことはわかる。同様に、<戦前体験><戦中体験>とも切り離しえないと思われる。オーラル・ヒストリーはライフ・ヒストリーにもつながっていると思うが、どうか」。そのとおりだと思う。だから最近は、ライフ・ヒストリーの実践報告が増えてきたのであろう。2.「ナショナルな歴史と個人の記憶をいかに接合していくことが可能であると思うか」という質問である。これは様々な工夫が重ねられてきている。私は主として文字資料(手紙、報告書、回想記など)を使ってきたが、沖縄戦のことを調査中の現在、自治体刊行物が意外と役に立つことを知った。3.「報告者は、極限状況で組織・人間の本質が露呈するといった。だがもう一つ、極限においては、人間は意に反する行動をとってしまう、とらざるを得ない」面があると思うがどうか」。そのとおりだと思う。とくに戦争では「上官の命令で」敵国や植民地の人々を殺したり、場合によっては、味方の人間を背後から射殺した事例がある。ここにこそ戦争の残酷さがある。私が「人間の本質」だけでなく、「組織(軍隊・官僚機構など)の本質が露呈する」と書いたのは、そのためであった。4.レジュメに「事実 fact、現実 reality、真実 truth の関係」とあったが、どのように使い分けているのか、という質問があった。
Ⅲ これが一番の大問題で、ここで満足のいく説明が出来るわけがないが、次の一点だけを述べておきたい。私はドイツ近代史研究者の西川正雄氏にならって、歴史には the history と a history があると考えている。たとえばベルギーの歴史家アンリ・ピレンヌは A History of Europe という書物を書いているが、これはあくまでもピレンヌが書いた歴史(a history)であって定番の世界史(the history)ではない。したがって歴史には「存在としての歴史」と「ロゴスとしての歴史」あるいは「事実としての歴史」と歴史家により「書かれた歴史」の二つの意味があると考えていいだろう。歴史家は何があったか(事実 fact)を確定することに全力をつくすが、それが私達にとって何を意味するかの解釈(現実 reality)は様々である。だが解釈は複数あるといっても「何でもあり」ではない。解釈にはリミットがあるのだ。「歴史の真実に迫る」という表現があるように研究者は、様々な手段・方法を使って the history に迫ろうとしているのである。しかし邪馬台国論争のように100年近く論争しても結論が出ない場合もあれば、下山事件のように迷宮入りの事件もある。このようなとき人々は「真実 truth は神のみぞ知る」というが、それでもなお真実を求めて人々は追及の手を緩めない。
私は歴史家なので、客観的に実在する過去はあると思っているが、“言語論的転回”以後の論者の中には、そんなものは存在しないと考えている人もいる。つまり歴史家が依拠する史料は、事実というより表象の所産であり、人間が言葉を与えて(認知の枠組みにいれ)言語的に認識した時にのみ、事実(の意味)は浮かび上がってくる、と主張する人もいる。オーラル・ヒストリーを実践する場合にも、この問題は核心部分をなすので、私はあえて言及したのである。最近、私は語り手が「うそ」を語ったとしても、それを虚構として排除しないで、なぜ「うそ」をついたのか、その意味を探ろうと思っている。しかし、「うそ」からスタートしてもいいが、「結局、事実・真相は何だったのか」の問題に行き着くようにおもう。やはり私は“歴史家”なのだろうか。なお興味のある方は、拙稿「言語論的転回以後の歴史学」『歴史学研究』2003年9月号を参照されたい。
今後も、オーラル・ヒストリーの技術上あるいは理論上の問題をめぐって、多くの方々が議論に参加されることを願っている。
3.第1分科会 「戦争体験のナラテイブ 語ること/語りえぬこと」(早川紀代)
この分科会ではつぎの6報告がおこなわれた。高山真「「被爆体験」を語ることー長崎の証言者によるライフストリーを手がかりにー」、八木良宏「調査者ー被調査者の関係とその射程―原爆被害者へのインタビュー調査・研究よりー」、張嵐「中国残留孤児の帰国動機―動機の語られ方をめぐってー」、山田陽子「「生き残りの兵士となった」身元引受