日本オーラル・ヒストリー学会第17回大会(JOHA17)のご案内

日本オーラル・ヒストリー学会第17回大会(JOHA17)が2019年9月7日(土)、8日(日)の2日間にわたり横浜市立大学において開催されます。お誘い合わせのうえ、ふるってご参加ください。
報告要旨などの詳細は、順次アップロードしていきますので、いましばらくお待ちください。

日本オーラル・ヒストリー学会 第17回大会
Japan Oral History Association 17th Annual Conference

開 催 日:2019年9月7日(土)、8日(日)
開 催 場 所:横浜市立大学金沢八景キャンパス(〒236-0027  横浜市金沢区瀬戸22-2)
・会場は、キャンパス内YCUスクエア(報告、シンポジウム等)といちょうの館(懇親会)で行われます
交通アクセス:京浜急行線「金沢八景駅」下車徒歩5分、シーサイドライン「金沢八景駅」下車徒歩7分
交通アクセスとキャンパスマップ
大会参加費:会員 1,000円、非会員 一般:2,000円、学生他:1,000円
懇 親 会 費:一般 4,000円、学生他 2,000円
大会時託児サービスを実施します。詳細は こちら をご確認ください。

大会に関してご不明な点がございましたら、JOHA 事務局までお問い合わせください。
E-mail: joha.secretariat(at)ml.rikkyo.ac.jp
※ [at]を@に差し替えて送信してください。

大会プログラム

大会プレ企画 9月6日(金)
中村高寛監督、陳天璽さんと一緒にヨコハマの歴史を歩く、味わう、語る
詳しくは こちら
9月3日追記 大会プレ企画は、定員に達しましたので、申込受付は終了しました。

第1日目 9月7日(土)
10:00 受付開始 @ピオニーホール(YCUスクエア1階)前ロビー

10:30〜13:00 映画『禅と骨』(中村高寛監督、2017年)上映会 @ピオニーホール

【監督紹介】
中村高寛さんは、1975年横浜生まれ。松竹大船撮影所でキャリアをスタートさせた後、北京電影学院でドキュメンタリー映画の手法を学ぶ。帰国後、中国人ドキュメンタリー映画監督李纓氏の撮影助手を務める。『ヨコハマメリー』が監督第1作。今回上映の『禅と骨』は第2作目。DVD化されていない作品のため、実践交流会で話題を提供していただく前に上映することにした。

【作品解説】
1918年に横浜でアメリカ人実業家の父と新橋芸者の母の間に生まれたヘンリー・ミトワの93年の人生をその複雑さ、滑稽さ、胡散臭さ、愛おしさを包み隠さずに作品にした。1923年に横浜で関東大震災を経験し、1940年には単身渡米。日米開戦後すぐに自ら志願して日系人強制収容所で過ごす。アメリカ国籍を放棄するが、帰還船に乗ることを拒否しアメリカに留まる。戦後はロサンゼルスで順風満帆な生活を築いていたが、突然1961年日本に帰国。京都嵐山天龍寺で禅僧になり、古都の文化人や財界人に囲まれて悠々自適の晩年を過ごすとおもいきや、80歳を目前に突如「赤い靴」の映画を作りたいと中村監督を彼の夢に巻き込むことになる。
この作品は、ヘンリー・ミトワの人生を観客に伝えるために、ドキュメンタリー+ドラマ+アニメ+時代背景や制作過程を解説したパンフレットというジャンルを縦横無尽に駆け巡る手法をとった。縦軸には横浜の近現代史の流れと日米関係、とりわけ第二次世界大戦の日系アメリカ人強制収容所体験が暗い影を差す。横軸には家族や友人との関係が彼の人物像を際立たせるように配置されている。一人の人生を歴史軸に据え、かつ、人間関係の網目の中に位置付けることは、オーラルヒストリーの正統的な手法である。本作品は、全部で9つの章に分かれている。

13:00 – 15:30 自由報告部会
第1分科会(戦争)@YCUスクエア4階401 報告要旨
・竹原 信也「移動する女性の体験が意味すること~済南の日本人居留地、満州・錦州での生活経験と八路軍従軍看護婦経験を有する女性のライフ・ヒストリー~」
・四條 知恵「ろう者の原爆の語り」
・那波 泰輔「1980年代のわだつみ会における加害者性との向き合い——1988年の規約改正に着目して」
・福田 真郷「沖縄県の在日米軍基地における「黙認耕作」」

第2分科会(仕事)@YCUスクエア4階403 報告要旨
・中原 逸郎「芸の発信−京都上七軒北野をどりの創成を中心に−」
・三浦 優子「海外駐在員女性配偶者の生活の中の両義性―語りからの考察」
・島田 有紗「高齢者労働力化と就労当事者の経験――高齢自営漁師たちの出漁実践と語りを事例に」
・八鍬 加容子「語り始めた「ホームレス」の人々―『ビッグイシュー日本版』「今月の人」誌面分析から」

16:00〜18:00 研究実践交流会(開催校企画)@ピオニーホール
作品化の手法:伝えること、伝わること、共有すること
【司会】滝田祥子
【発題者】中村高寛 「横浜をめぐる近現代史の聞き取りのドキュメンタリー映画化をめぐっての模索:『ヨコハマメリー』『禅と骨』そしてその先へ」
【趣旨】
研究実践交流会の目的は、オーラルヒストリーの実践をめぐり大会参加者同士が自分自身の研究実践の内容を共有し、今後の研究を続けていく上で有用な気づきを得やすい場をつくることにある。
JOHA2019年春季シンポジウム『ビジュアルオーラルヒストリーの可能性と現在』と実践ワークショップ『作品と現地をつなぐ』の流れを受けて、今回は<作品化>の局面に焦点をあて、聞き取りやオーラルヒストリーインタビューを作品化するときに、1)伝えていくための工夫はどのようにしているのか、2)作品化したあとに実際に伝わったのは何か手応えはあるのか、3)過去の記憶を共有することの難しさと可能性とはなにか、の3つの問いについて議論していきたいと考えている。
まず、前半は中村高寛監督をおむかえし、対話形式でこれまでの作品化のプロセスで苦労した点、工夫した点、成功した点、失敗した点、これからチャレンジしようと思っている企画などについてお話を伺う。実際の映像のダイジェストを見せていただきながら、膨大なビジュアルデータや収集した情報をどのようにして選択し作品に落とし込んでいくのか、など監督自身のドキュメンタリーの手法を明らかにしていく。前作『ヨコハマメリー』が、自分自身を語らぬメリーさんをめぐる様々な人の記憶から伊勢佐木町という<現地>の一つの時代を描いたのに対して、2作目の『禅と骨』では、メリーさんに負けず劣らずユニークな人物を目の前にしてその人の人一倍複雑な人生を理解することをその人自身の語りを主軸に描いている。前者は撮れてしまった映画で、後者は監督が確信的に撮った映画だと言われたこともあるようだが、その違いはどのようにして生まれ、そのことは監督自身の作品化をめぐる手応えにどのような影響を与えているのだろうか。
後半は、ワークショップ形式で、参加者の方々の作品化(論文、本、映像、など)実践を共有し、先に挙げた3つの問いについて考えを深めていきたいと企画している。最後に全体で共有し、中村監督からコメントをいただくことにする。

18:30〜20:30 懇親会 @いちょうの館

9月8日(日)
9:00 受付開始 @ピオニーホール(YCUスクエア1階)前ロビー

9:30〜12:00 自由報告部会
第3分科会(移民)@YCUスクエア4階401 報告要旨
・孫夢「「留学(さ)せざるを得ない」-当事者のライフストーリーから中国の教育現実を解明する」
・山崎 哲「「あなたの名」を知らぬ者は生活史をどう語るか -ある中国帰国者3世への聞き取り事例から-」
・竹田 響「在日コリアンの国境を越えた親族の繋がり―朝鮮半島の南北に離散して暮らす親族との「再会」に着目して―」
・仙波 梨英子「在日フィリピン人の第二世代のオーラルヒストリー:アートを通じた表現活動から考察する」

第4分科会(メディア)@YCUスクエア4階403 報告要旨
・林 貴哉「在外ベトナム人コミュニティにおける声の発信:米国のベトナム語メディア関係者の語りから」
・澁谷 由紀「ベトナム戦争期のジャーナリスト/諜報員の語りと現在:『ファム・スアン・アン―名前のとおりに生きた男』とその関連書籍をめぐって」
・石井 育子「ラジオドラマ史にみる脚本制作の変遷についての1考察」
・西村秀樹・小黒純「社会派TVドキュメンタリーの成立過程の研究、戦争の加害と被害をめぐる『記憶の澱』の研究」

12:05〜13:00 総会 @ピオニーホール

13:00〜14:00 特別イベント @ピオニーホール
科研費改革の背景と動向 (田中雅一JOHA研究活動委員会委員長)

14:00〜17:30  シンポジウム @ピオニーホール
〈見えないもの〉のオーラル・ヒストリー
【司会】田中雅一(国際ファッション専門職大学)、橋本みゆき(立教大学)
【趣旨】
幻覚や幻聴、夢、心霊現象、超常現象といった目に見えないものは、しばしば当事者たちの生に大きな影響を与える。たとえば、災害や戦争で亡くなった者が夢に現れ、遺言を残したり、自らの進むべき道に何か示唆を与えていたり、過去の夢が「虫の知らせ」であり予言・予知であったと認識していたりする。しかし、いかにそれが当事者たちにとってリアリティのあるものとして存在していても、目に見えないものは虚構であるかのように受け止められることも多い。
このシンポジウムは〈見えないもの〉のオーラル・ヒストリーに関連する研究に取り組む人々をパネリストとして招き、その意義や方法について議論する。私たちは〈見えないもの〉に対してどのようにアプローチし表現することができるのか。そして〈見えないもの〉に着目することで〈見える〉ようになるものとは何なのか。
〈見えないもの〉はオーラル・ヒストリーの実践にも深く関わる。インタビューにおいて、相手が自分の経験した幻覚や超常現象を話すとき、私たちは戸惑ったり疑ったりするかもしれない。一方、彼・彼女らが家族や仕事について話をしてもそれを疑うことはほとんどないだろう。だが、その対象者が過去に体験したいずれも、私たちにとっては〈見えないもの〉でもある。〈見えないもの〉のオーラル・ヒストリーを考えることは、フィクションとノンフィクション—虚構と現実—の境界を問い直すことにもつながることになるだろう。 (文責 研究活動委員会・根本雅也)
【報告】
・金菱清(東北学院大学)幽霊と夢のナラタージュ―東日本大震災の〈いまはむかし〉
・北村毅(大阪大学)平和学習とシャーマニズムの接点―あるガマにおける日本兵の「亡霊」をめぐって
・根本雅也(日本学術振興会)幻覚の口述史―ある被爆者の憎しみと赦しの物語り
【コメント】有薗真代(龍谷大学)、村上陽子(沖縄国際大学)