第24回アジア系アメリカ人研究会

テーマ:アジア系アメリカ映画の今-第24回サンフランシスコ・アジア系アメリカ映画祭報告
スピーカー:須藤達也
上映作品:What’s Wrong with Frank Chin? (2005年  97分 英語、字幕なし)
日時:4月28日(金) 7:00~9:30 開場 6:30
場所: 大久保地域センター 3F会議室A
 新宿区大久保2-12-7 TEL 03-3209-3961 JR新大久保駅下車。
 大久保通りを東(右)に徒歩7分。ペアーレ新宿(社会保険事務所)を左に曲がってすぐ。
 http://www.city.shinjuku.tokyo.jp/map/ookubo_toyama.htm 
会費:700円
アジア系アメリカ映画祭
サンフランシスコで毎年3月に開催されるアジア系アメリカ映画祭は、今年で24回目を迎えました。今年はアジア系男性の「男性性」がテーマで、オープニングは、中国系作家、ショーン・ウォンの小説
を映画化したAmericaneseという作品で、アジア系男性の性を描いています。
現在の作品と平行して、映画祭では1960年前後に銀幕で活躍した日系男性俳優、ジェームズ・シゲタの特集があり、彼が主演したCrimson Kimono, Bridge to the Sun, Walking like a dragonの3
作品が上映されました。とりわけ、後者の2作品の上映は極めて珍しいものです。現在でもアジア系俳優が小さな役しか得られないことが多い状況の中で、シゲタだけはハリウッド映画界から一人の男性
として扱われていました。今年のテーマに即してシゲタの再評価が行われたわけです。
若手がつくったColma, the Musicalという作品の参加もありました。これは文字通りミュージカルで、アジア系俳優が主演したミュージカルとしては、Flower Drum Song以来です。この作品は映画祭のコンペで
最優秀作品賞を受賞し、高い評価を得ました。
日系ブラジル人監督、チズカ・ヤマザキの「ガイジン2」の特別上映もありました。日系女優、ノブ・マッカーシーの遺作となった作品です。また、昨年不慮の事故で亡くなったカヨ・ハッタ監督の
「ピクチャー・ブライド」、同じく昨年亡くなった俳優、パット・モリタを追悼する意味で「カラテキッド2」も上映されました。
日本を扱った作品ではAbduction(拉致)という横田めぐみさんを扱った作品が上映され、ドキュメンタリー部門で最優秀賞を獲得しました。
アジア系映画は近年、バラエティに富んだ作品が多くなってきており、その辺りの報告をしたいと思っています。
上映作品
今回上映する作品は、昨年のアジア系アメリカ映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した、カーティス・チョイ監督のWhat’s Wrong with Frank Chin?(フランク・チンのどこがおかしい?)です。
中国系アメリカ人作家であるフランク・チンは、The Chickencoop Chinaman(鶏小屋のチャイナマン)という戯曲を書き、1972年にアジア系アメリカ人演劇としてはじめて、ニューヨークで上演されました。
1974年には仲間のローソン・フサオ・イナダ、ショーン・ウォン、ジェフリー・ポール・チャンと共に、Aiiieeeee!というアジア系アメリカ人作家のアンソロジーを出し、アジア系作家の存在をアメリカにアピール
しました。日本では彼のDonald Dukという作品が『ドナルド・ダックの夢』というタイトルで1994年に翻訳されています。
1976年に端を発した同じ中国系作家のマキシン・ホン・キングストンとの確執はアジア系社会の中では有名で、映画の中でも重要な部分を占めており、文学者、研究者など多くの人がこの問題にコメントしています。
チンには作家としてだけではなく、活動家としての顔もあります。現在、日系アメリカ人にとって大きなイベントとなっているDay of Remembrance(追憶の日)を提唱したのは他ならぬフランク ・ チンです。2002年には
Born in the U.S.A: A Story of Japanese America, 1889-1947という本を著わし、日系アメリカ人強制収容の問題を取り上げています。日系アメリカ人強制収容に関して歯に衣着せない発言をしており、これが映画の
後半では大きな部分を占めています。
激しい言動のために誤解されることも多いフランク・チンですが、彼の周りにいる作家のローソン・イナダ、ショーン・ウォン、ジェフリー・ポール・チャン、詩人のアラン・ラウ、映画監督のスペンサー・ナカサコ、
元書店経営者のデイヴィッド・イシイ、アジア系アメリカ文学研究者のエレイン・キム、キン・コク・チャンらが、時にユーモラスに彼の素顔を伝えています。アジア系アメリカ文学や日系アメリカ人強制収容所に関心
がある方には必見ともいえる作品です。