JOHAニュースレター第7号

第4回日本オーラル・ヒストリー学会年次大会
9月23日(土)・24日(日)東京外国語大学にて開催
口頭発表募集中!
皆様、奮ってご応募下さい。

 本年度のメインテーマ分科会(戦争と植民地期)での報告と、自由テーマ分科会(論題は自由)での報告を募集いたします。応募の方法についての詳細は2、3頁にありますので、ご覧になって5月31日までにご応募下さい。

(目次)
Ⅰ 会長のことば

Ⅱ 第4回年次大会発表募集のお知らせ

Ⅲ 第2回実践講座報告

Ⅳ 学会誌創刊号発行

Ⅴ 会員の声

Ⅵ 研究会情報・出版情報

Ⅶ 海外ニュース・研究動向

Ⅷ 理事会報告

Ⅸ 事務局便り

Ⅰ 会長のことば

オーラル・ヒストリー実践の研鑽と研究交流のネットワーク化を目指して
桜井 厚

 本学会も、この3月に学会誌を創刊することができ、9月には第4回大会を東京外国語大学で開催する運びとなっています。日本にもオーラル・ヒストリー研究を実践している人たちのネットワークを作ろうという声があがって5年。仲間が集って設立準備委員会が発足し、2003年の第1回大会が学会設立大会となりましたが、そのときは準備不足でまだ会員募集さえできませんでした。その後、会員募集、総会での規約の承認を受けて、初代会長の吉田かよ子さんを中心に文字どおりJOHAの組織体制ができあがってきました。
 組織的な体裁は徐々に整ってきたとはいえ、設立へ向けて動き出したときの趣旨は、あくまでも会員のネットワークの構築にありました。ネットワークといっても、いわゆる研究者だけからなるアカデミズムの集まりではなく、各地で実際にオーラル・ヒストリーを収集している草の根活動やNPOなどの相互交流やこれからオーラル・ヒストリー研究を志す人への支援や普及をはかるためのものです。本学会の名前の英文表記が日本語表記より早くできたのは、すでに古い歴史を持つ諸外国の組織名に準じたからなのですが、もうひとつの理由は、associationの訳語を「学会」にするのか「協会」にするのかでなかなか意見がまとまらなかったからなのです。「学会」では堅苦しく、大学や研究機関に所属する人以外の人は関わりづらいのではないか、ネットワーキングの意味が希薄なのではないか、という懸念を感じたからでした。
 結果的に、他の理由があって「学会」という名称を採用しましたが、オーラル・ヒストリー研究実践者のネットワークの構築の結節点になることこそ、本学会のもっとも重要な役割といってもよいでしょう。大会においてこれまで研究実践交流会を開いているのも、そのささやかな試みの一環です。とりあえずは、ニュースレターにおける会員情報の充実やメーリングリストの活用などをはかっていくつもりですが、各地で活動している個人やグループの紹介や活動への支援もたいせつだと考えています。いずれも、そのためには会員の皆さまの情報提供や助力などの協力が欠かせません。そして本学会がオーラル・ヒストリー実践の研鑽や相互交流の場であることを、むしろ会員の皆さまが積極的に活かしていただくことを願っております。ともすると、組織はできあがると通常の運営に汲々としがちになりますが、そうならないように自戒しながら、私も理事の方々とともに今後の学会運営に努めたいと考えております。会員の皆さまにも、こうした趣旨をお汲み取りいただき、学会活動を担う一員としてご協力、ご支援をお願いいたします。

Ⅱ JOHA第4回年次大会発表募集のお知らせ

http://joha.jp/?eid=27

第4回大会メインテーマ
『戦争と植民地期――オーラル・ヒストリーの視点から』について
 なぜ、今「戦争」と「植民地期」なのか?―戦争・植民地期の経験者の高齢化が進み、当時社会的中核にいた人々の体力や記憶も薄れています。戦争・植民地体験をもたない日本人も全体の七割を越えました。「当事者たち」は語り残したいと願い、聴き取る側も「時間との勝負」を感じています。次の戦争に備える言論が進む今、「オーラル・ヒストリー」を通して、個々人の視点・体験や、被植民地側の感情・実態を、整理・記録・再検討して、過去を現在と将来につなげることは、戦後61年目の今年だからこそ、意義深いと考えます。
 本テーマは国内外で、新たな関心が寄せられる一方で、ジャーナリスト・民間団体・個人・研究者による聴き取り実践の歴史も長く蓄積も豊かです。<戦争・植民地期>をめぐるオーラル・ヒストリーには、公開時の配慮や、「敗戦国」の立場、機密、口述の証明の議論、高齢者記憶など多様な問題が伴います。各人が培った工夫や手法を交換・共有すれば、戦争・植民地期の実相の解明や、社会・政治・経済構造の変化の研究等も進展することでしょう。
 「人間」の生身の想いと向き合う「オーラル・ヒストリー」。その視点と手法から、この時期を見つめ、「事実」とのかかわりを視野にいれつつ、口述記録の共有利用方法を考えたい。本テーマに特化する課題の諸議論の活発化を願うと同時に、他の自由テーマとの交流により、オーラル・ヒストリー全体の活性化も期待しています。皆様の成果をふるってご発表ください。

 以下は、上記(1)メインテーマ分科会のキーワードを例示したものです。ご参考にということですので、これにとらわれずにご発表ください。なお今回は<第二次世界大戦期>・<日本国家がかかわった戦争>という大枠を設けますが、比較の視点から、他の戦争や植民地を扱って頂いても結構です。
 (1)戦争・植民地期・脱植民地体験(兵士・市民)
 (2)抑留(戦中・占領下)・動員
 (3)トラウマの語り
 (4)世代間体験継承
 (5)社会・経済・構造の変化・政治
 (6)教育・演劇・メディア・芸術における戦争・植民地口述の再利用
 (7)戦争遺跡と語り
 (8)ジェンダー・性
 (9)記録の保存・公開・アーカイブ・データベース化 (10)口述資料と文書史料
 (11)聴きとり者の心のケア
 (12)兵器・原爆
 (13)証言-「信憑性」「場」などをめぐる諸議論 ほか

(文責:研究活動委員長 中尾知代)

Ⅲ 第2回オーラル・ヒストリー実践講座報告

JOHA実践講座担当:吉田かよ子

 昨年4月に引き続き、第2回JOHAオーラル・ヒストリー実践講座を3月11、12日の2日間、日本女子大学目白キャンパスで開催した。今回はカリフォルニア州立大学ロングビーチ校オーラルヒストリー・プロジェクト創設者で現在名誉代表であるシャーナ・グラック氏を招いて、1日目はグラック氏による特別講演「オーラル・ヒストリー実践をめぐる