joha5 シンポジウム

オーラリティとはなにか What is Orality
期日:2007年9月16日(日)14:00~17:30
場所:日本女子大学目白キャンパス 新泉山館1F 大会議室
報告者:清水透(慶應義塾大学)「歴史へのまなざしとオーラル・ヒストリー」
佐藤健二(東京大学)「歴史社会学におけるオーラリティの位置」
橋本裕之(千葉大学)「獅子頭の角-フィールドワークにおけるオーラリティの効用と限界」
討論者:成田龍一(日本女子大学)
桜井厚(立教大学)
司会:小林多寿子(日本女子大学)

Japan Oral History Association 5th Annual Conference
Symposium ‘ What is Orality’
Date: Sunday , 16 September 2007 14:00 -17:30
Place: Japan Women’s University Mejiro Campus, Shinsenzankan 1F
Access map http://www.jwu.ac.jp/map/index.html
Panelists
Toru SHIMIZU, Faculty of Economics, Keio University
Historical Praxes and Oral History
Kenji SATO, Graduate School of Humanities and Sociology, Tokyo University
Position of orality in Historical Sociology
Hiroyuki HASHIMOTO, Department of Japanese Culture, Faculty of Letters, Chiba University
The horns of a lion’s head: The effects and limits of orality in fieldwork
Discussants:
Ryuichi NARITA (Japan Women’s University)
Atsushi SAKURAI (Rikkyo University)
Chair:
Tazuko KOBAYASHI (Japan Women’s University)
要旨:
清水透 Toru SHIMIZU(慶應義塾大学経済学部 Faculty of Economics, Keio University)
「歴史へのまなざしとオーラル・ヒストリー Historical Praxes and Oral History」
文書館での文献史料の探索からフィールドワークに重点を移して以来、私は一貫して、メキシコに生きる原住民の一家族との聞き取り作業を中心に、<普通に生きる人々>のまなざしからメキシコ現代史を照らしだす方法とその意味について考えてきた。試行錯誤の28年がすでに過ぎた。報告では、文献史学からの史料性をめぐる批判を念頭におきつつ、歴史学にとってのオーラル・ヒストリーの可能性について、当面の考えを述べてみたい。」
佐藤健二 Kenji SATO東京大学大学院人文社会系研究科 Graduate School of Humanities and Sociology, Tokyo University)
「歴史社会学におけるオーラリティの位置 Position of orality in Historical Sociology」
社会学は、声の問題をどのように扱ってきたのか。たとえばデュルケームの「自殺論」に見られるような、既存の社会的記録に対する疑いは、社会学が新たな観察の実践を組織していく動機ともなった。他方において、質問紙の技術が可能にした世論調査は、新たな制度的記録にすぎないという批判もある。ライフヒストリーは、記録に対抗する力を自動的に生成させるものでなく、被調査者との信頼もまた決して予定調和的でない。社会調査という実践を支えている構造そのものに対する深い問いと、再構築が自覚されつつある。歴史社会学の立場からの方法の問い直しは、どのように「声」「口述」「オーラリティ」を位置づけられるのかを論じてみたい。
橋本裕之 Hiroyuki HASHIMOTO(千葉大学文学部日本文化学科 Department of Japanese Culture, Faculty of Letters, Chiba University)
「獅子頭の角―フィールドワークにおけるオーラリティの効用と限界― The horns of a lion’s head: The effects and limits of orality in fieldwork」
オーラリティの効用に対する絶大な信頼は、人文科学や社会科学のフィールドワークにおいて必要不可欠だろう。というのも、フィールドワークは質問することや回答することによって成立している部分が少なくないと思われるのである。だが、こうした状況はフィールドワークにおけるオーラリティの限界をも示唆していないだろうか。私はかつて千葉県松戸市大橋の三匹獅子舞に関するフィールドワークを実施したさい、獅子舞の角にまつわる奇妙な出来事を経験した。本報告はこのエピソードに導かれながら、オーラリティの効用と限界を提示することによって、オーラリティに依拠したフィールドワークの認知的なモデルを革新する手がかりを提供したい。