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日本オーラル・ヒストリー学会

joha5 自由論題報告 第1分科会

オーラル・ヒストリーとエスニシティ(百206教室)司会・舛谷鋭
1. 張延紅YanHong ZHANG(東京外国語大学大学院 Graduate School of Area and Culturere Study, Tokyo University of Foreign Studies)
「中国朝鮮族のライフストーリーの中の『二言語教育』」 ‘Bilingual Education’in Life Stories Narrated by Korean Chinese People

 中国の少数民族政策の中で一番特色があるともいえる「中国少数民族教育」は二言語教育を中心に行われている。そんな中、少数民族の人々はたくさんの負担を抱えながら学習し、取得した二言語にもかかわらず、社会に進出したらまず言語の壁にぶつかってしまうという。本報告ではこのような中国特有の少数民族教育の現状――二言語教育を少数民族の一員である朝鮮族の人々の語りからその実態を把握し分析する。分析を通じてライフストーリーを記録する手法で中国少数民族教育の中の「二言語」教育のあり方について検討し、問題点を明らかにした。
2.ファンセカ酒井・アルベルト Alberto, FONSECA SAKAI (城西国際大学 Josai International University)
「ライフストーリーにおける抽象化された言説の問題に関する一考察-在日南米コミュニティとそのメディアを事例に-」The problem with abstracted discourse in lifestories: some thoughts on the case of Latin American communities in Japan and their media.
 支配的なモデル・ストーリーが一般化され、抽象的な語りとして提示される場合、個々人の生活の多様性を抹消するものとして捉えられることが多い。例えば、あるコミュニティの中で共有されているストーリーが倫理的な言説であるとき、そのストーリーの「現実性」が問われることになるだろう。
 本報告では、在日南米コミュニティへのインタビュー調査やエスニック・メディアの分析に基づき、移民コミュニティ形成におけるこの種の「抽象的な言説」の役割について考察を試みることにする。
3.矢野可奈子 Kanako YANO(京都大学大学院人間・環境学研究科 Graduate school of Human and Environmental Studies, Kyoto University)
「テータたちの語るパレスチナのハストリーズ-英国委任統治下パレスチナにおける農民に関する考察から-」’teeta’s talking of herstories of Palestine: from a study of peasants in British Mandate of Palestine’
 本発表では、2006年7月から9月にかけて行ったパレスチナ難民女性たちへの聞き取りをもとにした、英国委任統治下のパレスチナにおけるファッラーヒーン(農民)についての考察を報告する。1920年代のパレスチナでは住人の約80%が農業に従事しており、社会の主要な構成員は農民であった。彼ら彼女らファッラーヒーンの農家の営みにおいて、大地はあらゆる恵みの源として非常に重要な意味を持っていたといえる。現在は難民となったかつての農民の語りから、彼ら彼女らの当時の生活の様子を具体的に掘り起こし、パレスチナ人とパレスチナの土地との歴史的な関係性を明らかにするとともに、難民として生きることの意味の理解につなげる。
4.酒井順子Junko SAKAI (立教大学, Rikkyo University)
「個人的ナラティヴと集合的記憶の交差:第二次世界大戦後イギリスに渡った女性たちのライフストーリーの分析から」Intersection of Personal Narratives and Collective Memories: Analysing the life stories of Japanese women migrants in Britain since the post-war period
 本報告では、第二次世界大戦後、日本からイギリスに個人で移住した女性たち(英連邦駐留軍兵士と結婚した女性たち、経済復興期に海外旅行に出かけて定住した女性たち、発展した日系コミュニティで働いた女性たち、グローバル企業に就職した女性たち)へのインタビューを基に、個人的ナラティヴと歴史的記憶との交差と齟齬を検討していく。個人的決意で日本を出た女性たちのナラティヴは、日本の戦後史および帝国解体とヨーロッパ化を迫られたイギリス社会の歴史といかに関わっているのだろうか。語られた個人的ナラティヴは、時代の言説に影響されるだけでなく、逆に時代の言説を取り入れながらも支配的言説とは異なるアイデンティティを柔軟に作り変えて、新たなスペースを構築していることを具体的に検証する。