JOHAワークショップ:第6回 歴史的・社会的文脈に入れて解釈しよう

私たちのワークショップも、早いもので第6回を迎えることとなりました。
実行委員は今回も、充実した内容のプログラムをと心がけました。

 第1部は、桜井厚先生を筆頭に、すでにオーラルヒストリー研究で成果を上げられているご三名の方に話題提供として報告をいただきます。期せずして、社会学、比較文化研究、歴史的視点とご専門領域もさまざまであり、関心深いことです。
 
 第2部、第3部は会員同志がじっくりと顔と顔を突き合わせて、オラルヒストリーに対する熱い思いとともに、疑問点を語り合っていきましょう。
 またこの貴重な機会に、参加される理事の先生方にも、たくさんの質問をして学んでいけたらいいなと思います。
 
○プログラムを添付いたしましたので、詳細はそれでご確認下さい。
○恐れ入りますが、だいたいの人数確認のため大城宛にメールで参加申し込みをなさって下さい。
○もちろん、申し込みが無くても当日の飛び入り参加もOKです。
○疑問などは大城にメールでお問い合わせください。
 
では、11月14日、多くの方々とお会いできることを楽しみにしております。
   実行委員・連絡係  大城道子 <o_michi_5_4[at]yahoo.co.jp>
                          

JOHAワークショップのご案内
──私たちの歴史を創造する・私たちの歴史を書く──
 ≪第6回 歴史的・社会的文脈に入れて解釈しよう!≫ 
 
●日時:2010年11月14日(日) 14時~18時
●場所:大阪経済法科大学麻布台セミナーハウス〈東京メトロ日比谷線 神谷町駅近く〉
    *第2回と同じ会場です。
●資料代:会員500円、非会員1000円 
 
●内容:
14時開場   
14時10分 開会 開催趣旨の説明
14時15分~15時45分 ≪第1部 すでに成果のある方から話題提供≫
・桜井 厚さん(立教大学社会学部教授)
・澁谷智子さん(東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻:学振特別研究RPD)
 「時間の流れと語り――聞こえない親を持つ聞こえる人々へのインタビューの経験から」
・大城道子さん(名護市史本編「出稼ぎ・移民」編専門部会委員)
 「”沖縄タウン”前史-戦前本土出稼ぎ者の語りから紡ぐ歴史」
休憩(10分)
16時~16時40分 ≪第2部 グループ討論≫
16時40分~17時30分 ≪第3部 全体討論≫
17時40分 閉会
18時~ 有志によるお茶会(神谷町駅近くのファミリーレストランにて。各自実費)
 
●趣旨説明:
 2010連続ワークショップでは、オーラル・ヒストリーを「録音インタビューに基づく具体的な語りを基に考察する手法」と狭義の意味でとらえ、参加者が自ら小プロジェクトを実践しながら、オーラル・ヒストリーの手法をディスカッションしていこう、という試みを行ってきた。
 このような試みを求めたのは、オーラル・ヒストリーの手法をめぐる議論を整理し、オーラル・ヒストリーの可能性に期待する多様な人々とつながっていきたいという願いがあったからである。現代的な意味での録音による「オーラル・ヒストリー」という手法が認知されるようになって既に半世紀を経ている。また、声なき 人々の声を聞き取る社会史としてのオーラル・ヒストリーが1970年代に英米を中心に発展し始めて既に30年以上を経ている。多くの既存の学問分野を巻き込んで発展してきたオーラル・ヒストリーは、その実践方法、解釈の手続きにおいては多様な試みを果敢に行ってきたといえるだろう。しかし、オーラル・ヒストリーの分析、解釈は、よりフォーマルな研究手法を求める社会科学や実証主義歴史学からは客観 性や妥当性をめぐっての批判も受けてきた。同時に、多領域の学問分野からの参加により、多様な研究課題を擁するオーラル・ヒストリーの様相は、まるで象の耳、象の鼻、象の脚に触るかのような、全体像をとらえきれないもどかしさを呈している。その結果、オーラル・ヒストリーは学問分野として成立するのだろうかという素 朴な疑問も決して消え去ってはいない。はたして、オーラル・ヒストリーは領域横断的な学問分野としてのディシプリンを形成しうるのだろうか。もし、オーラル・ヒストリーを既存の学問の下位にある学問領域と考えるなら、多領域のバックグラウンドを持つオーラル・ヒストリー研究者同士のコミュニケーションは成立しづらい であろう。
 こうした疑問を背景に、2010JOHA連続ワークショップは、オーラル・ヒストリーの
実践的なプロセスに沿いながら、オーラル・ヒストリーの手法を議論してきた。いかにしてプロジェクトをデザインしていくのか、そして実際のインタビューを経たうえでの「発
見は何」だったといえるのだろうか、といった課題についてこれまで議論を重ねてきた。そして、次回の第7回ワークショップでは、「発見」をいかに歴史的・社会的文脈に入れていくのかを議論していきたい。今日のオーラル・ヒストリー研究者は、人々の語った言葉をそのフェイスヴァリューで捉えるほどナイーヴではない。語られた言葉の意味を詳細に分析していくときにはどのような方法が有効なのだろうか。 ポール・トンプソンは、The Voice of the Pastの第9章において、(1)歴史の再構成 (2)因果関係の説明 (3)語りと実態との齟齬を見ていく (4)ナラティヴの分析 の4種類の解釈法をあげているが、この説明は妥当だろうか。トンプソンは、結局のところ「丁寧に聞いていくこと」が重要であり、技術的解釈に走ることをよしとはしていない。だが、今日のナラティヴの分析手法では、コーディングを積み重ねていく内容分析のような手法が採用されたり、あるいは語りを細か く分断して検討されたりする。そのような言語分析的手法はオーラル・ヒストリーの分析手法として有効なのだろうか。また、語り手の心理的状況を鑑みて彼らの語りを理解していこうとする心理的アプローチこそ、オーラル・ヒストリーに有効な解釈方法だという主張もあるが、そうした心理的アプローチから歴史的社会的事象を 説明していくことは説得的といえるのだろうか。あるいは、こうした分析手法は人々の語りへの尊敬を失っていく過程だという意見もあるだろう。オーラル・ヒストリーは、人々の声を傾聴し、語った人々の解釈を受け入れるべきである、という主張もあるだろう。
 今日の日本におけるオーラル・ヒストリーの実践では、どのような「オーラル・ヒスト
リー・インタビューの分析と解釈」を経て、そしてどのような「オーラル・ヒストリーという学問分野」が想定されているのだろう
か。第6回ワークショップでもおおいに議論なされることを期待したい。(文責 酒井順子)