第3回オーラル・ヒストリー実践講座報告

2007年1月20日(土)午後3時よりホテル・パシフィック東京において第3回オーラル・ヒストリー実践講座を開催しました。今回はJOHAと総合研究大学院大学の共催事業として実施し、講師のメアリ・パレブスキー氏(ネバダ大学ラスベガス校「ネバダ核実験場オーラルヒストリープロジェクト」ディレクター)による公開インタビュー実践に学ぶという新たな手法での研究会の形式を取りました。話し手には小沼通二慶應義塾大学名誉教授、「世界平和アピール7人委員会」委員を迎え、パレブスキー氏が小沼氏の戦後の湯川秀樹博士との出会いから平和運動への参加に至るまでのライフストーリーを英語で聞き取るというユニークな試みでした。本来オーラル・ヒストリーのインタビューは公開で行われるものではないため、実際のインタビューにおける聞き手と話し手の間に存在する相互作用や、話の内容の客観性の担保のための事前調査がどのようにインタビューの進行に影響を及ぼすか等を知りうる機会は限られていると言えます。
今回、パレブスキー氏と小沼氏のお二人の間にある信頼関係と小沼氏の闊達なご気性が相まって、その内容は実践の域を超え、物理学者の戦後史を我々が垣間見る機会となったと言えるものでした。その意味では、ある参加者の言葉を借りれば「きわめて刺激的」な内容の実践講座となりました。パレブスキー氏は講座以前に小沼氏と何度か会われていたのですが、実際のインタビューのことに関しては全く相談をせず、実際のオーラル・ヒストリーのインタビューに近い形で小沼氏から話を引き出すという形で臨まれました。40分あまりのインタビューの間は通訳を介さず、インタビュー終了後講座担当者が要約通訳をしましたが、参加者のお一人の「私は英語は苦手だけれど、小沼氏のおっしゃったことはほとんどわかりました。自分自身の戦前、戦中、戦後の生き方と重なる部分が多くて、理解することができました」というコメントが印象的に残る魅力的なインタビューでした。
JOHA会員、総合研究大学院大学関係者合わせて35名の皆さんが最後まで熱心に参加されました。今回実践講座共催をJOHAにお計り下さり、小沼通二氏に話し手としての参加を依頼する労をとられた総合研究大学院大学歯山高等教育センターの平田光司教授にお礼を申し上げます。最後に、長時間にわたり熱心にインタビュー実践を披露してくださり、その後の参加者との活発な質疑に貢献されたパレブスキー氏、小沼氏に心よりの感謝の意を表したいと思います。(文責:吉田かよ子-実践講座担当)