第3分科会(移民)報告要旨

第3分科会(移民)@YCUスクエア4階401
司会:佐々木てる、清水美里

在日フィリピン人の第二世代のオーラルヒストリー:アートを通じた表現活動から考察する
仙波梨英子(横浜市立大学大学院都市社会文化研究科博士後期課程)
本研究は、フィリピン系移民のなかでも1980年代以降に日本で生まれ育った「第二世代」に焦点をあて、アートを通じてオーラルヒストリーを共同制作していく試みである。具体的には、在日フィリピン人の第二世代(以下、第二世代)と〈アートのグループ展示を開催する〉という、企画・準備・制作・展示といった、プロジェクト型の発信活動をするなかで、第二世代がどのような世界を描き、他者と関わりあうのかに注目する。また、調査者としての「わたし」が、一作家として参与型観察をおこなうことにより、調査する側・される側という分断された立場を超え、相互作用の中でたち現れていく「わたし」自身の姿をも考察対象とする。本発表では、現時点であきらかになった事象を中心とした分析の経過を報告する。

「留学(さ)せざるを得ない」-当事者のライフストーリーから中国の教育現実を解明する
孫夢(首都大学東京人文科学研究科社会行動学専攻社会人類学教室博士後期課程)
日本が少子高齢化の社会になり、労働力不足の現状を緩和するため、「技能実習生」だけではなく、留学生も沢山呼び寄せた。このうち中国からの留学生は12万人で、全留学生数に対して占める割合は約40%となっている。こうした背景から、留学生、特に、中国人留学生を対象に行われてきた研究は多岐にわたっている。教育学や社会学や心理学などの観点から留学生政策の是非や留学生の適応問題を論じていることが多い。本研究は教育人類学の視点から、母子の二人の主人公のライフストーリーに注目し、中国人留学生の主人公はどうして日本留学を選び、その母親はどのように子どもの留学を実現させたのか等、留学に纏わって、中国人留学生が「留学(さ)せざるを得ない」理由を明らかにし、現在中国における教育現実を解明する。

在日コリアンの国境を越えた親族の繋がり―朝鮮半島の南北に離散して暮らす親族との「再会」に着目して―
竹田響(京都大学 人間・環境学研究科)
本発表では、第二次世界大戦終戦以前に朝鮮半島より日本の内地に移ってきた、いわゆるオールドカマーの「在日コリアン」と呼ばれる人びとの親族ネットワークに焦点を当てる。
在日コリアンの9割程度は朝鮮半島南部に自身の出自を持つが、1959年から1984年にかけて実施された日本から朝鮮民主主義人民共和国への「帰国事業」によって、10万人弱の在日コリアンが朝鮮民主主義人民共和国に「帰国」し、朝鮮半島の南北に在日コリアンの親族が離散するという事象が生じた。
今日、在日コリアンが、大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国に離散して暮らす親族とどのような国境を越えた親族ネットワークを構築しているのかを、親族との「再会」に着目しながら明らかにする。

「あなたの名」を知らぬ者は生活史をどう語るか -ある中国帰国者3世への聞き取り事例から-
山崎哲(一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程)
本報告の目的は、「あなたの名」を知らなかった者がいかに自己の歴史を語ったのかについて検討することである。具体的には、中国帰国者と総称される人々のうち、ある3世への聞き取り事例を通して行う。
中国帰国者とは、日本へ帰国または移住した中国残留孤児・婦人等とその家族を指す。報告者は中国残留孤児・婦人の孫世代である3世に生活史調査を行なってきた。その中で、報告者による聞き取り調査時にある3世が自らを中国帰国者“である”と初めて知った事例に出会った。本報告では、彼女がなぜ中国帰国者という「あなたの名」を知らなかったのか、また、自身も3世である報告者との相互作用を通じて、彼女自身と家族の歴史がいかに紡がれたかについても考察する。

第2分科会(仕事)報告要旨

第2分科会(仕事)@YCUスクエア4階403
司会:有末賢、矢吹康夫

高齢者労働力化と就労当事者の経験――高齢自営漁師たちの出漁実践と語りを事例に
島田有紗(京都大学大学院人間・環境学研究科)
地球規模で高齢者人口が増加している。中でも日本は高齢化率21%を超す「超高齢社会」であり、高齢化は特に深刻だ。高齢者向け医療・介護体制や経済支援等の面で多くの課題を抱えるが、その中の一政策として高齢者労働力化が進められている。その動きは社会学や経済学領域から検討されてきたが、主に高齢世代の貧困や彼らの経済的貢献性などについて、俯瞰的視座から論じられている。
本報告では、高齢者労働力化に関する俯瞰的言説を再考するため、青森県大間町にて自営漁に従事する(一般定年65歳以上の)高齢漁師の生活史と語りを取り上げる。漁師町の文脈において、高齢漁師らの出漁が必ずしも経済性や生産性に回収されない実態から、高齢者労働力化の福祉的機能について考える。

芸の発信−京都上七軒北野をどりの創成を中心に−
中原逸郎(京都楓錦会、日本ライフストーリー研究所)
花街は芸舞妓が日本舞踊等の芸を披露し、地元の花街言葉により顧客を応接する都市民の交流の場で、日本固有の遊興地とも言えよう。戦前まで花街は各地方の民俗を取り入れ芸を発信してきたが、第二次世界大戦後は西洋化、民主化等の社会変化の中、芸の発信にも様々な変化が現れた。
本発表では昭和 27 年(1952)の北野上七軒(京都市上京区、以下上七軒)の花街舞踊(舞台舞踊)である北野をどりの創成に焦点を当て、文献資料研究に上七軒における聞き取りを加え、戦後の花街の芸を取り巻く思想や社会環境の変化にせまる。

海外駐在員女性配偶者の生活の中の両義性―語りからの考察
三浦優子(立教大学平和・コミュニティ研究機構特任研究員)
グローバル化が進み、時間と空間の圧縮が起こり、国境を越えて移動する人々の生活にも変容が起きている。本報告では、そのなかでも海外に仕事目的で移動する駐在員である夫に帯同する配偶者の日常生活実践に焦点を当てる。女性たちは、家族や他の駐在員配偶者たちとどのようにつながり、どのような気持ちを抱きながら暮らしているのであろうか。事例として日本の駐在員家族が多く暮らすドイツ・デュッセルドルフ日本人社会に注目し、そこに暮らす3人の駐在員配偶者たちの生活に着眼する。3人の女性たちの語りから、駐在生活を肯定的にとらえながらも葛藤や疑問も抱くという両義性が浮き彫りになる。その背景要因、そして今何が問われているのかも考えていく。

語り始めた「ホームレス」の人々―――『ビッグイシュー日本版』「今月の人」誌面分析から
八鍬加容子(京都大学文学研究科 博士後期課程)
ホームレス状態の人々が販売者を務めるストリート・マガジン『ビッグイシュー日本版』には、「今月の人」という販売者のライフ・ストーリーのコーナーがある。これまで聞く耳も語る口も持たなかった「ホームレス」の人々の声が、ストリート・マガジンというコミュニティを通して世に出ることの歴史的文脈と意味・意義はどういうところにあるのであろうか。
本発表では、『ビッグイシュー日本版』創刊号(2003年9月11日発売)から最新号までの「今月の人」を誌面分析し、そこでどのように「ホームレス」が表象されたかを分析する。次に、同時期のメディア報道内の「ホームレス」の表象を比較することで、「ストリート・マガジン」というコミュニティが形成されていく過程で物語がどのような役割を果たしているのかを検討していく。

第1分科会(戦争)報告要旨

第1分科会(戦争)@YCUスクエア4階401
司会:木村豊、人見佐知子

ろう者の原爆の語り
四條知恵(日本学術振興会特別研究員PD(長崎大学))
原爆被爆後の障害は、原爆被害そのものとして語られてきたが、被爆以前から障害を持っていた人々の被害とその後の歩みが社会的に顧みられる機会は少なかった。従来の市史を中心とする歴史記述の中で周縁におかれてきた社会的弱者の原爆被害の中でも、障害者の被害の問題に取り組んだ先行研究は少なく、被害の実態も不明である。報告者の関心は、ろう者の集団がどのように原爆被害の記憶を形成してきたのかということにある。本報告では、長崎県立ろう学校をめぐる原爆の語りに着目し、集団としてどのように原爆被害の記憶が形成されてきたのかを検討する。

移動する女性の体験が意味すること~済南の日本人居留地、満州・錦州での生活経験と八路軍従軍看護婦経験を有する女性のライフ・ヒストリー~
竹原信也(奈良工業高等専門学校)
前年度JOHA16にて『中国残留日本人女性のオーラル・ヒストリー~移動・家族・従軍看護婦を中心に~』と題し、済南の日本人居留地で生まれ、満州・女学校時代に挺身看護隊として学徒動員され、終戦後は八路軍に従軍看護婦として留用され中国国内を転々とした女性の体験を帰国後の生活も含めて報告した。本報告では、前年度報告と指摘を省みつつ、(1)済南、満州・錦州での食生活・教育・家族形態などの生活実態、(2)八路軍従軍看護婦経験の記憶や口述資料を巡る問題、(3)彼女の「移動」と「体験」を通じて考える「近代日本」と「日本人」の多様なあり方という、三つの個別のテーマについて報告する。

1980年代のわだつみ会における加害者性との向き合い——1988年の規約改正に着目して
那波泰輔(一橋大学大学院)
本発表は、戦没学徒の遺書集『きけわだつみのこえ』を軸に作られた日本戦没学生記念会(わだつみ会)が、1988年に規約に戦争責任の文言をいれたことに着目し、1980年代にわだつみ会がどのように加害者性と向き合っていったのかを考察をしていく。1980年代は教科書問題などにより、日本の加害者性とアジアへの被害がより周知されていった時代であった。1970年代以降、わだつみ会への若い世代の入会が少なくなっており、1980年代に会は積極的に若い世代に働きかけた。しかし、若い世代からはわだつみ会の加害者意識の欠如を指摘されることになった。1980年代に加害者意識が問われたことや、若い世代の獲得を目指したことなどにより規約改正が議論され、規約に戦争責任の文言を追加されていった。

沖縄県の在日米軍基地における「黙認耕作」
福田真郷(京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程)
発表者は、2018年に計3か月間、沖縄県沖縄市にある、在日米軍嘉手納弾薬庫施設内の「黙認耕作地」にて農業、畜産業に従事しフィールドワークを実施した。「黙認耕作」とは、在日米軍基地敷地内での、住民による農業などの土地利用を指す。高度な軍事利用のされていない場所で、一定の制限のもと住民が果樹やサトウキビなどを栽培している。成立背景を戦中、戦後の米軍による土地収奪に持ち、「島ぐるみ闘争」を経て正式に制度化された。沖縄市、読谷村、嘉手納町など県中部には、フェンスの内外、土地所有権の有無を問わず、多くの耕作者が今なお存在する。本発表は、「黙認耕作者」および地域と米軍基地の関係性に焦点を当て、その様相を述べる。

JOHA17 大会プレ企画のご案内

9月7日(土)、8日(日)に開催される日本オーラル・ヒストリー学会大会のプレ企画として、9月6日(金)に「中村高寛監督、陳天璽さんと一緒にヨコハマの歴史を歩く、味わう、語る」を企画しています。ふるってご参加ください。

9月3日追記 定員に達しましたので、申込受付は終了しました。

大会プレ企画

中村高寛監督、陳天璽さんと一緒にヨコハマの歴史を歩く、味わう、語る

コーディネーター:滝田祥子

9月6日(金)
16:00 JICA横浜2階海外移住資料館展示室前ロビー集合(企画展:コーヒーが結んだ日系人と日本)
17:00- 中華街まち歩き
17:30- 華都飯店ディナー (陳天璽さんの中華街の記憶)(予算:各自2000円程度)
19:30 - 伊勢佐木町まち歩き+老舗のバー(アポロ)でバーテンダーさんから話を聞く。(中村高寛監督と一緒に)(予算:各自ワンドリンク分)
21:00頃 バーで解散、終了

※ 中村高寛さん(映画監督)には9月7日の研究実践交流会で話題を提供していただきます。中華街の中にオフィスがあり、中村さんのドキュメンタリー映画制作の原点の街を一緒に散策することで、聞き取りと作品の間をつなぐヒントが見つかるかもしれません。
※ 陳天璽さん(早稲田大学教授)は、「無国籍」についての研究をし、ドキュメンタリー映画も制作しています。華都飯店はご実家です。
★ 申し込み先着15名限定にします。ご希望の方はできるだけ早くJOHA事務局へお申し込みください。飲食代のほかに、拠点間移動のための交通費がかかる場合があります。当日の天候などにより、予定が変更する場合がありますのでご承知おきください。お申し込みの際には、お名前とあわせて、当日連絡が可能な携帯電話番号をお知らせください。

E-mail: joha.secretariat(at)ml.rikkyo.ac.jp
※ (at)を@に差し替えて送信してください。

大会時の託児サービスのご案内

日本オーラル・ヒストリー学会では、第17回大会の期間中に託児室を設置します。託児業務は、株式会社明日香に委託します。
大会プログラムの詳細は、7月中旬頃に会員宛に配信のニューズレターならびにホームページで公開します。

利用料・支払
お子さまお一人につき、1時間あたり1000円です。
学会員以外の方もご利用になれます。

利用時間・場所
時間:2019年9月7日(土)10:00~21:00
◆◆◆2019年9月8日(日)9:00~18:00
場所:会場キャンパス内の一教室。セキュリティ確保のため、お申込者のみにご案内します。

対象年齢
1歳~6歳(未就学児)
※対象年齢を満たさない場合は、ご相談ください。

定員
各日5名

申込み方法
お申込み・お問い合わせは、メールにてお願いいたします。
託児室の利用をご希望のかたは、①から⑤までの項目をすべてご記入のうえ、2019年7月31日(土)17:00までに、下記のアドレスまでお申込みください。
申込期限を8月23日(金)まで延長しました。
① 保護者氏名
② 託児室を利用されるお子さまの人数 ※お2人以上の場合以下の情報はすべてのお子さまについてお願いします。
③ お子様の年齢( ○ 歳 ○ ヶ月)
④ 性別
⑤ 一時保育利用希望日、時間帯
定員になった場合、締め切らせていただくことがあります。お早めにお申し込みください。
期日を過ぎますと対応できかねますので、ご注意ください。

申込み先
日本オーラル・ヒストリー学会事務局 joha.secretariat[at]ml.rikkyo.ac.jp
[at]を@にしてお送りください。
メールの標題は、「託児室予約」と記入してください。

その他
キャンセルのご連絡は、2019年9月5日(木)17:00までにお願いいたします。以降はキャンセル料が発生します。
前日(5日17:00以降):キャンセル料(半額)が発生します。
当日(6日17:00以降):キャンセル料(全額)が発生します。
託児室の設置・運営は学会会計で賄っております。ご理解・ご協力のほどお願いいたします。
当日、発熱(37.5℃以上)や感染症など体調不良や、集団保育に適さないと保育スタッフが判断した場合には、お預かりをお断りすることがあります。
利用希望の連絡をいただいた方には、一時保育について別途ご連絡いたします。なお、一時保育中のお子様の飲食物は持ち込みとなります。

日本オーラル・ヒストリー学会(JOHA)実践ワークショップ「現地と作品を結ぶ(2)」

日本オーラル・ヒストリー学会(JOHA)実践ワークショップ
「現地と作品を結ぶ(2)」
花街の衣食住〜京都・上七軒を舞台に〜

 本企画は、昨年伊地知紀子さんを迎えて、ちょうど一年前に実施した「現地と作品を結ぶ」シリーズの第二弾です。今回は、花街の歴史文化について研究されているJOHA会員の中原逸郎さんとともに、京都・上七軒(かみしちけん)を歩きながら、「一見さんお断り」で有名な花街の生活世界に触れたいと思います。
本企画を通して、フィールドとの関わり方や地域での聞き取り、作品ができるまでの過程を著者に聞きながら、オーラルヒストリーの作品化の方法を学びます。

■日時:2019年5月26日(日) 12時50分集合
■集合場所:北野天満宮「東門」鳥居前。
昼食を済ませて集合、雨天決行
■アクセス:京都市バス「北野天満宮前」停留所下車(京都市バスの系統番号は、JR京都駅より50・101系統/JR・地下鉄二条駅より55系統/JR円町駅より203系統/地下鉄今出川駅より51・102・203系統/阪急西院駅より203系統)
境内地図 交通アクセス

■講師:中原逸郎さん(京都楓錦会、日本ライフストーリー研究所)
主な論文に、「京都祇園甲部花街の芸」(『京都民俗』第34 号、57-70、2016)、「花街芸の継承:京都上七軒と金沢市金沢東における聞き取りを中心に」(『日本都市学会年報』第49 号、日本都市学会、205-214、2015)など。

■内容:①京都市上京区上七軒散策(検番〜北野会館(歌舞練場内)〜北野天満宮)、②著者のお話、③討論、④懇親会(希望者のみ)。

■参加費:会員500円(学生等も同額)、非会員1000円
※参加申し込みをいただいた際に、以下の論文PDFファイルをお送りします。中原逸郎「はんなり世界の生活 京都北野上七軒花街の衣食住に関する聞き取りを中心に」(『日本オーラルヒストリー研究』第14号、173-187、2018)。
■定員:20名(定員に達した時点で締め切らせていただきます)
■申し込み先:日本オーラル・ヒストリー学会第8期研究活動委員会
johakenkatsu8[at]gmail.com
※[at]を@にしてお送りください。

JOHA17(第17回学会大会) 自由報告エントリー募集

JOHA第17回大会を以下のように開催いたします。つきましては自由報告(個人報告/共同報告/テーマセッション)の報告者を募集します。

第17回日本オーラル・ヒストリー学会大会
日時:2019年9月7日(土)~8日(日)
7日(土)午後:自由報告13:00~15:30・大会校企画シンポジウム(予定)
8日(日)午前:自由報告9:30~12:00
午後:総会・シンポジウム

会場:横浜市立大学金沢八景キャンパス(京浜急行金沢八景駅)
〒236-0027 横浜市金沢区瀬戸22-2

〇個人報告および共同報告は、報告20分・質疑応答10分(合計30分)で構成されます。
〇テーマセッションは、150分間(上限)の時間枠で設定されます。各報告時間は個人発表に準じて1人20分を目安とし、セッション全体の時間配分・報告者人数・報告順・コメンテーターはコーディネーターが調整してください。

報告を希望する会員は、以下の応募要項に沿ってお申し込みください。
申込用紙ファイルはこちら→個人報告/共同報告テーマセッション

【応募要項】
◆申し込み資格
申込時点でJOHAの会員であること、および2019年度会費納入済みであることです。
(会費納入のお知らせ、振り込み用紙は4月中に郵送いたします)

◆申し込み手続き
1.申込用紙に必要事項を記入し、メール添付で下記2アドレスにお送りください。
JOHA事務局・人見佐知子(joha.secretariat[at]ml.rikkyo.ac.jp)
研究活動委員会委員長・田中雅一(masata_naka2000[at]yahoo.co.jp)
必ず両方宛にお送りください。折り返し、事務局より受付の返信をします。返信がない場合は、ご面倒でもお問い合わせください。
※迷惑メール防止のため[at]としております。実際のメールは[at]の部分は@を入力ください。

2.メールで連絡できない方は、申込用紙をJOHA事務局へ郵送してください。受領連絡が必要な場合は返信用ハガキを同封してください。

〒577-0813
大阪府東大阪市新上小阪228-3
近畿大学Eキャンパス文芸学部 人見佐知子研究室内
日本オーラル・ヒストリー学会事務局

◆申込締め切り
6月1日(土)(必着)

◆問い合わせ先:日本オーラル・ヒストリー学会事務局(上記参照)
JOHA事務局・人見佐知子 (joha.secretariat[at] ml.rikkyo.ac.jp)

シンポジウム「ビジュアル・オーラル・ヒストリーの可能性と現在」のご案内

 下記のとおり、JOHAシンポジウム「ビジュアル・オーラル・ヒストリーの可能性と現在」を開催いたします。みなさまのご参加をお待ちしております。

シンポジウムチラシ

■日時:2019年3月10日(日)13:30〜17:00
■会場:大阪経済法科大学東京麻布台セミナーハウス2階 大研修室
*日比谷線神谷町駅より徒歩5分 交通アクセス

■シンポジウム趣旨
 近年、映像人類学や映像社会学といったように、写真や映像といったビジュアル資料を用いた研究への関心が高まっている。この流れはオーラル・ヒストリーの実践においても無関係ではない。写真やビデオを用いた聞きとりや記録の作成、そしてそうしたビジュアル資料を活用する研究など、オーラル・ヒストリーの実践の諸段階でビジュアル化が進められている。
 本シンポジウムでは、オーラル・ヒストリーとビジュアル表現を組み合わせた研究や活動に関わる方々を招き、写真や映像などをオーラル・ヒストリーの実践に活用する意義や課題について考える。写真や映像は、「聞く」「書く」「残す」というオーラル・ヒストリーの営みに何をもたらし、どのような可能性を与えるのだろうか。ビジュアル表現を用いたオーラル・ヒストリーの方法、ビジュアル・アーカイブの意義、ビジュアル・データの活用などについて学ぶとともに、ビジュアルで表現すること/されたものの意味ーーたとえば死者への追悼ーーを探っていくことにしたい。(文責:根本雅也)

■報告者とタイトル
佐藤知久(京都市立芸術大学)「映像のオラリティ、映像のリテラシー」
西村明(東京大学)「架橋としての視覚物ー戦地訪問映像を中心に」
新井卓(写真家)「記憶の余剰をめぐってー写真がひらく記憶の〈分有〉への可能性」

■コメンテータ
安岡健一(大阪大学)、木村豊(筑波大学)

■参加費無料、申込不要
*JOHA会員でない方もご参加いただけます。

■問い合わせ先:日本オーラル・ヒストリー学会 第8期研究活動委員会
johakenkatsu8[@]gmail.com
*送信先アドレスを入力する際は[@]部分の[ ]を外してください。

日本オーラル・ヒストリー学会第16回大会(JOHA16)のご案内

 日本オーラル・ヒストリー学会第16回大会(JOHA16)が 2018年9月1日(土)、2日(日)の2日間にわたり東京家政大学において開催されます。お誘い合わせのうえ、ふるってご参加ください。
 自由報告部会、ならびに大会校企画テーマセッション「女性の声を聴く」の各報告要旨は こちら をご覧ください。
 大会ポスターは、大会校企画テーマセッションにちなんだものとシンポジウムにちなんだものの2種類あります。ご所属の大学や団体で宣伝にご活用いただければ幸いです。
JOHAポスター2018a JOHAポスター2018b

日本オーラル・ヒストリー学会 第16回大会
Japan Oral History Association 16th Annual Conference

開 催 日:2018年9月1日(土)、2日(日)
開 催 場 所:東京家政大学板橋キャンパス16号館
交通アクセス:JR埼京線「十条駅」から徒歩5分(駅からの地図
キャンパスマップ(31番の建物が大会会場の16号館です)
大会参加費:会員 1,000円、非会員 一般:2,000円、学生他:1,000円
懇 親 会 費:一般 4,000円、学生他 2,000 円

JOHA16実行委員会:岩崎美智子*開催校理事、金城悟、松本なるみ(以上、東京家政大学)、松平けあき、伊吹唯(以上、上智大学大学院生)、池川雅美、塚越亜希子、鳥居希安、林祐子、若林美千絵(以上、東京家政大学大学院生)
学会事務局:人見佐知子、研究活動委員会委員長:田中雅一、会計:上田貴子
※ 大会に関してご不明な点がございましたら、JOHA事務局までお問い合わせください。
E-mail:joha.secretariat(at)ml.rikkyo.ac.jp →(at) を @ に差し替えてください。

◎ 自由報告者へのお願い
1)自由報告は、報告20分・質疑応答10分(合計30分)で構成されています。
2)配布資料の形式は自由です。会場では印刷できませんので、各自50部ほど印刷し、ご持参ください。
3)各会場にパソコンを準備しておりますので、ご利用の場合、USBメモリ等にプレゼンテーションのデータをお持ちください(ご自身のPC等をご使用の場合、RGBケーブル接続のみでUSBなどの接続方式には対応しておりません。必要な方は変換アダプター等もご準備ください。念のため資料を保存したUSBメモリ等もご持参ください)。動作確認等は各分科会の開始前にお願いいたします。会場担当者にご相談ください。

◎ 参加者へのお知らせ
1)会員・非会員ともに受付してください。参加にあたって事前申し込みは必要ありません。
2)夏期休暇中につき、学内の店舗は休業しております。昼食は各自でご用意ください。近隣のコンビニまでは10分程度かかります。
3)なおロッカーおよびクロークはございません。荷物は各自で管理をお願いします。
4)「十条門」は、1日(土)は終日開いていますが、2日(日)は8:30~10:30と15:30~17:30のみ開いています。それ以外の時間帯は、「正門」までおまわりください。

◎ 懇親会案内
9月1日(土) 18:15〜20:15
会場:東京家政大学 16号館1階 食堂ルーチェ
参加費:一般 4,000円、学生その他 2,000 円

◎ オーラルヒストリー実践ワークショップ「現地と作品を結ぶ」写真報告コーナー
9月1日〜2日の大会開催期間中、16号館1階ロビースペースにて、オーラルヒストリー実践ワークショップ「現地と作品を結ぶ〜著者とともに『消されたマッコリ。』の舞台を歩く(6月10日@大阪府泉南郡岬町多奈川地域)」の写真報告コーナーを設けます。ぜひお立ち寄りください。

大会プログラム

第1日目 9月1日(土)
11:00 受付開始

12:00〜13:00 特別講演会 161B講義室 共催:東京家政大学女性未来研究所
特別講演 チラシPDF

語り得ぬ性被害―戦時暴行による妊娠と中絶をめぐって―

【講師】樋口恵子(東京家政大学女性未来研究所所長・名誉教授)
【司会】金城 悟(東京家政大学)
【趣旨】
 戦前の「満州」「朝鮮」から引揚げる日本女性は、突如参戦したソ連兵はじめ「敵」方となった外国男性の強姦によって妊娠(「不法妊娠」と呼ばれている)する例が少なくなかった。日本人の自治組織が無事占領地を通過するために人身御供として若い女性が提供される場合もあった。
 受け入れる日本政府は上層部の非公式の決定で、当時の堕胎罪を免責して中絶した。その数は千人とも言われるが、断片的な記録しかない。麻酔なし妊娠5~9か月の手術に女たちは声もあげず耐えた、という施術者の証言はあるが、本人の証言はない。「それを言ったらおしまいですから」とその場にいた看護師の証言はあるけれど。語り得ない事実だが、記録されなければならない歴史的事実。語ることによって浄化される場合もあるが、苦難を再現することも多い。そのはざまに立って考える。

13:15〜15:45 自由報告部会
自由報告部会1(戦争・移民) 162C講義室
司会:八木良広(愛媛大学)、北村毅(大阪大学)
1-1 米軍占領と復興に奪われた故郷「金武湾」区―子ども世代による記憶の共有と社会化
謝花直美(沖縄タイムス記者)
1-2 戦時体制下台湾における集団疎開―台北師範学校女子部の集団疎開体験者の聞き書き調査を事例として
佐藤純子(東京経済大学大学院コミュニケーション学研究科博士課程)
1-3 中国残留日本人女性のオーラル・ヒストリー~移動・家族・従軍看護婦を中心に~
竹原信也(奈良工業高等専門学校)
1-4 ドミニカ日本移民のライフストーリー―記憶の語り―
森川洋子(明治大学大学院教養デザイン研究科博士後期課程)
1-5 福井県の戦傷病者の家族のオーラル・ヒストリー
藤原哲也(福井大学学術研究院医学系部門)

自由報告部会2(運動・労働) 162D講義室
司会:湯川やよい(東京女子大学)、石川良子(松山大学)
2-1 脱毛症当事者コミュニティの運動史――あるカリスマ的女性を中心に
吉村さやか(日本大学大学院文学研究科社会学専攻博士後期課程)
2-2 元自衛隊員のオーラルヒストリー:調査の意義と難しさ
松田ヒロ子(神戸学院大学現代社会学部)
2-3 ソ連期ウズベキスタンにおける手工芸の社会主義的生産体制と女性の労働経験:元工場労働者への聞き取り調査から
宗野ふもと(筑波大学人文社会系特任研究員)
2-4 生きている過去:草創期インドネシア地方社会の集団的暴力の語りと現在
山口裕子(北九州市立大学文学部)
2-5 三陸の突棒漁における困難と漁師の希望―太平洋戦争中~1960年代に着目して―
吉田静(立教大学大学院社会学研究科)

16:00〜18:00 研究実践交流会 161C講義室

オーラル・ヒストリー/ライフストーリーの現場性を問い、
一歩を踏み出すために
―「聞くこと」と「書くこと」を結ぶもの/隔てるもの―

【司会】平井和子
【発題者】1.大門正克「askからlistenへ―聞く現場の身体性回復のために」
     2.倉石一郎「「書く」ことの現場性について
       ―書く実践のよどみとこわばり」
【趣旨】
 オーラル・ヒストリーの実践において、「聞くこと」と「書くこと」が車の両輪をなす大切な営みであることに異論の余地はほとんどないだろう。しかしこの二者がどのようにつながり、絡み合っているかという相互関係については、個々のオーラル・ヒストリアンの「流儀」やスタイルの問題として個人化され、公の場でほとんど討議されたり検討されることがなかった。この実践交流会は、聞くことと書くことの「現場性」にこだわり、秘技化されがちなこれらのあり方を公の討議に付し、孤立しがちなオーラル・ヒストリアン間に共同性を回復させることを企図したい。
 このうち「聞く」営みの現場性については、大門正克氏の著書『語る歴史、聞く歴史―オーラル・ヒストリーの現場から』(岩波新書、2017年)が明確な展望を与えてくれた。本書のなかで、1970年代以来の長い聞き取り調査の経験をもつ氏が、自身の聞き書きに「大きな壁」を感じ、それを機にAskからListenへと、「聞く」姿勢の根本的な態度変更をするに至った経緯が述べられている。生身の人間があい対する「聞く現場」にとことんこだわり、そこで感取された身体性を歴史叙述の根幹に据えるという姿勢である。
 そこでこの実践交流会では、まず大門氏から「聞く」ことをめぐる基調提起をいただき、それに触発された形で、倉石一郎から、近著『増補新版 包摂と排除の教育学』の経験を踏まえ、「書く」ことをめぐる応答的問題提起を行う。それに引き続き、会場の参加者が小グループに分かれて意見や疑問を出し合うワークショップ形式で議論を深めていきたい。「聞く」と「書く」との混沌とした関係性について、参加者が経験を交換(歓)し、報告者も交えて討論することで、各々がいくばくかの道筋を見出していく契機となる場としたい。
(文責・研究活動委員会 倉石一郎)

18:15〜20:15 懇親会 食堂ルーチェ

第2日目 9月2日(日)

9:30~12:00 自由報告部会
自由報告部会3(文化・メディア) 162C講義室
司会:矢野泉(横浜国立大学)、米倉律(日本大学)
3-1 基地内クラブとAサインクラブの実態―本土復帰前後を中心に―
澤田聖也(東京藝術大学大学院音楽研究科音楽文化専攻修士課程)
3-2 ポール・ダンスのオーラル・ヒストリー——セクシー・ダンスからスポーツへ
ケイトリン・コーカー(立命館大学衣笠総合研究機構)
3-3 自然災害と都市文化―岩手県釜石花街に関する聞き取りを中心に―
中原逸郎(京都楓錦会)
3-4 社会派TVドキュメンタリーの成立過程の研究、沖縄返還密約をめぐる『メディアの敗北』の研究
西村秀樹(近畿大学人権問題研究所)
3-5 放送史研究における「オーラル・ヒストリー」の考え方と実践的方法論試案
吉田功、広谷鏡子(NHK放送文化研究所メディア研究部)

10:00〜12:00 大会校企画テーマセッション 162D講義室

女性の声を聴く

【司会】岩崎美智子(東京家政大学)
【コメント】山田富秋(松山大学)
【趣旨】
 本セッションの目的は、それぞれの「現場」で女性の声を聴き、彼女らの経験について考察を続けてきた3人の方々の聞き取りの実践から学ぶことにある。
 女性が自分の経験を語る(語らない)のはなぜなのだろうか。そして、語られた(語られなかった)言葉からわたしたちは何を受け取るのだろうか。戦前は語られることの少なかった女性の経験を、戦後になって聞き取る試みが各地で行われるようになった。女性が主体的に生きるために、自らに問い、社会と格闘してきたことを、聞き取りを続けてきた研究者・実践者から報告していただき、「聴く」ことの意味や聞き手の役割についても考えたい。
 3人のご報告に山田富秋さんからコメントを加えていただくが、フロアーからの発言も大いに期待している。

【第一報告】「東北の農婦(おなご)」の声を可聴化するために:石川純子の聞き書きをめぐる一考察
柳原 恵(日本学術振興会特別研究員PD(立教大学))
【第二報告】 避難の体験に耳をすまして
薄井篤子(神田外語大学他非常勤講師、特定非営利法人埼玉広域避難者支援センター副代表理事)
【第三報告】 突如破られた「沈黙」と日常化されていた「圧力」
山村淑子(地域女性史研究会事務局長)

12:05〜13:05 総会 161B講義室

13:30〜16:30 シンポジウム 161C講義室

食に聴く・食を書く―食の媒介者たちをめぐる歴史と社会―

【司会】橋本みゆき・倉石一郎
【パネリスト】桜井厚氏、赤嶺淳氏、野本京子氏
【コメント】藤原辰史氏
【趣旨】
 個人の体験への接近を通じて社会や文化の歴史的変遷を明らかにすることが、オーラル・ヒストリー研究の目的の一つであるとすれば、「食」のあり方を手がかりにある時代の一面を浮き彫りにするという営みもまた、オーラル・ヒストリーにとって極めて魅力的かつ重要な課題の一つである。また食には「いのちをつなぐ」営みという側面がある(赤嶺淳「『食生活誌』学の確立をめざして」赤嶺編『クジラを食べていたころ』新泉社、2011)とすれば、それは人の「生存」を問うライフストーリー/ライフヒストリー研究の焦点となり得ると考えられる。近年、社会学・人類学・歴史学といった関連領域において、食をテーマとする魅力的なモノグラフの刊行が相次いでいる。それらにおいて注目されるのは、食の生産/消費という二分論を超えて、食にたずさわる多様な媒介者の存在―加工者、流通業者、料理人など―にクローズアップし、その声を聞き取ることで豊かな社会像や歴史を描くのに成功している点である。
 本学会においても少なからぬ会員が、こうした動きに並行して、あるいはそれ以前からずっと、食や食生活への視点を研究に取り込んだ仕事を蓄積させてきた。しかしそれらの成果は点として存在したままで、これまでそれらを線としてつなぐ場はあまりなかった。今回のシンポジウムが、食をめぐるオーラル・ヒストリー研究がさらに深化・発展を遂げていく契機となれば幸いである。今回のパネリストの三氏およびコメンテータはいずれも、社会学・人類学・歴史学の各分野において食文化や食生活にまつわる歴史・社会研究を牽引し注目すべき研究成果を挙げてきた方々であり、活発な討議が期待される。
(文責・研究活動委員会 倉石一郎)

JOHA16 自由報告部会・大会校企画テーマセッション報告要旨

9月1日(土)13:15〜15:45 自由報告部会1(戦争・移民)

1-1 米軍占領と復興に奪われた故郷「金武湾」区―子ども世代による記憶の共有と社会化
謝花直美(沖縄タイムス記者)
 本報告では、沖縄戦後に軍用地となり未解放だった那覇市に戻れなかった人々が集住した沖縄島中部の「金武湾区」の発生から隆盛、衰退の歴史を明らかにし、当事者の記録活動を通して、記憶を共有し社会化しようという試みと米軍占領の影響を考察する。
 沖縄島中部の旧具志川村に戦後誕生した「金武湾区」はデパートや劇場があり、戦後復興の象徴として知られた。那覇市での生活再建を求めた大人にとっては通過地点でしかないが、子ども時代を同区で過ごした現在70~80代には故郷であり、喪失感を抱く。米軍の土地接収は金網の中に多くの集落を奪ったが、その過程で、社会の記憶から忘れられていった「金武湾」区がもつ意味を論じる。

1-2 戦時体制下台湾における集団疎開―台北師範学校女子部の集団疎開体験者の聞き書き調査を事例として―
佐藤純子(東京経済大学大学院コミュニケーション学研究科博士課程)
 1943年戦況が悪化していく中、疎開に関する実施要綱や促進要綱が日本政府により次々に打ち出されていった。台湾においても例外ではなく官庁や工場、建物の疎開に留まらず、児童・生徒の集団疎開も実施された。台北師範学校女子部も空爆からの避難を余儀なくされ、1945年6月から約半年間、台中州(現在の南投県)に集団疎開を行った。本報告は当時女子学生として、その集団疎開を実際に体験した今年満90歳になる台湾在住の生存者2名に聞き書き調査を行ったものである。当時の記憶を疎開政策や回想録などの文献と照合しながら、終戦目前の統治下台湾における集団疎開の一事例の検証を試みた。

1-3 中国残留日本人女性のオーラル・ヒストリー~移動・家族・従軍看護婦を中心に~
竹原信也(奈良工業高等専門学校)
 本報告は、戦後・満州で八路軍に従軍看護婦として留用され、10年にわたり中国国内を転々とした女性のオーラル・ヒストリーである。彼女は中国・済南の日本人居留地で生まれ、満州・女学校時代に挺身看護隊として学徒動員された。終戦後は八路軍に従軍看護婦として留用され中国国内を転々とした。本報告では帝国主義的拡張や戦争といった社会的な出来事に翻弄されながら家族や居住地、職業や立場が転々としていく彼女の体験を「帰国」後の生活も含めて報告する。日赤看護婦を中心とした八路軍従軍看護婦史や日本から満州への移住者を中心とした中国残留日本人史では捉えきれない彼女の体験がどのような意味を持つのか。近年注目されるトランスナショナル・越境研究や近代東アジアの女性移民研究の切り口を参考にしながら考察する。

1-4 ドミニカ日本移民のライフストーリー―記憶の語り―
森川洋子(明治大学教養デザイン研究科博士後期課程)
 口頭で話を聞くことの意義の一つは、大きな歴史の流れの中で見過ごされがちな名もなき移民の人たちの声を掬いあげ、個人の抱えている問題をこまやかに掘り下げて、時代と社会の変化との関係で考察することにある。ドミニカ日本移民については、国家賠償訴訟にまで発展した戦後最悪の移民問題として注目されたため、国家の政策と責任に関する問題に集中しがちである。本報告では、「棄民」と言われて訴訟にまで発展した移民物語とは異なるドミニカ移民の経験の解釈もあることを明らかにする。ドミニカ日本移民の高齢化にともない記憶や記録が散逸しつつあり、どのようにドミニカ体験を語り、その記憶に向き合ってきたについて貴重な手がかりとなると考える。

1-5 福井県の戦傷病者の家族のオーラル・ヒストリー
藤原哲也(福井大学学術研究院医学系部門)
 本報告では、福井県の戦傷病者の家族(妻)の聞き取りを通じて、彼女たちの福井県傷痍軍人会・妻の会の活動への参加状況や生活実態を明らかにする。報告者は平成23年から現在に至るまで福井県下での戦傷病者の家族への聞取り調査を実施してきた。戦傷病者の記録に関しては、日本傷痍軍人会機関紙『日傷月刊』や県・地域単位の出版物や手記があり、その中に妻たちの証言も散見されるが、実際どのように彼女たちが傷痍軍人会や妻の会に関わってきたのかなど不明な点も多い。聞取り調査から彼女たちは戦傷者の配偶者として介護から会の運営まで多様な役割を担ったことがうかがえる。彼女たちの視点から戦後社会における戦傷病者とその家族について考察する。

9月1日(土)13:15〜15:45 自由報告部会2(運動・労働)

2-1 脱毛症当事者コミュニティの運動史――あるカリスマ的女性を中心に
吉村さやか(日本大学大学院文学研究科社会学専攻博士後期課程)
 近年、脱毛症当事者コミュニティの運動が活発化している。その背景には、例えばセクシュアル・マイノリティなど、これまで社会的に不可視化されてきた人びとによる運動と同様に、髪の毛がないことによって生じる「生きづらさ」は個人的な問題ではなく社会的な問題であると、「声」をあげる当事者が増えてきたことがある。
 このような当事者自身による主体的な運動は、1990年代に萌芽していた。本報告では、その運動史を紐解く一端として、黎明期においてカリスマ的存在とされていた、ある当事者女性のライフヒストリーの検討を行う。その作業を通して、当時、彼女はどのようにしてクレイㇺを申し立て、運動を牽引していったのかを明らかにしたい。

2-2 元自衛隊員のオーラルヒストリー:調査の意義と難しさ
松田ヒロ子(神戸学院大学現代社会学部)
 本報告の趣旨は、自衛隊研究におけるオーラルヒストリー調査の重要性と、その調査を遂行する難しさ、さらに調査で得られた記録を学術資料として活用することの意義について論じることである。報告者は、2015年頃より自衛隊の社会史的(あるいは歴史社会学的)研究に取り組んできた。創設期自衛隊(警察予備隊、保安隊含む)の民軍関係を研究するために、2017年1月から12月にかけて、全国20道府県に在住する元自衛隊員40名に対してオーラルヒストリー調査を実施した。インフォーマントは全員、1950年代から60年代に陸上・海上・航空自衛隊で勤務した男性である。個人的に自衛隊と全く縁のなかった報告者が、どのように調査対象者とコンタクトをとり、調査を実施したのかプロセスを紹介しつつ、得られた口述資料の一部について検討を加えたい。

2-3 ソ連期ウズベキスタンにおける手工芸の社会主義的生産体制と女性の労働経験:元工場労働者への聞き取り調査から
宗野ふもと(筑波大学人文社会系特任研究員)
 本報告は、ソヴィエト連邦時代(1924年~1991年)の中央アジア、ウズベキスタン南部の地方都市に存在した、民族帽子や絨毯を生産する「フジュム」芸術製品工場に着目する。そして、工場で働いた女性への聞き取り調査に基づき、ソ連時代にウズベキスタンの女性が経験した社会主義的近代化とはいかなるものだったのかを考察することを目的とする。「フジュム」芸術製品工場は、「女性解放」の理念のもとに1928年に設立され、1970年代には約2000人の女性労働者が働いていた大工場であった。本報告では、まず「フジュム」芸術製品工場の設立と拡大の経緯を公文書館資料を用いて明らかにする。第二に、元労働者の語りを紹介しながら、彼女たちにとって社会主義体制の下での労働がいかなる経験だったのかを考えてみたい。

2-4 生きている過去:草創期インドネシア地方社会の集団的暴力の語りと現在
山口裕子(北九州市立大学文学部)
 本発表では、草創期インドネシア最大の分水嶺となったクーデター未遂とされる「9月30日事件」のあとで、共産主義一掃の旗印の下での集団的暴力にさらされた地方社会の動態とその今日的意味を、当事者の語りに基づき考察する。特に一連の出来事から50年余りが経過した今日、その過去が想起され語られるモメントや、民主化とともに形成されつつある当時をめぐる集合的記憶からは逸脱するようなエピソードや諸特徴に注目する。主体によって制御されない記憶の側面や、語り手を「被害者」「加害者」などの一元的アイデンティティから解放しようとする近年の関連諸分野の成果を参照しながら、人間と過去とが切り結びうる多様な関係性について考えてみたい。

2-5 三陸の突棒漁における困難と漁師の希望―太平洋戦争中~1960年代に着目して―
吉田静(立教大学大学院社会学研究科)
 三陸沖では、船の上から4メートルほどの銛で漁獲対象を突く突棒漁(つきんぼうりょう)が盛んに行われていたが、儲かる漁ではなくなっていくなかで、突棒漁の従事者は減り、小規模な漁のみがわずかに存続している。本報告ではまず、太平洋戦争中~1960年代に三陸沿岸の漁村の突棒漁師が直面することになった突棒漁を取り巻く困難を示していく。その上で、困難な状況を打開するために期待をかけたオットセイ漁への解禁運動に触れ、解禁運動の不結実という結果がどのように受け止められているのかを突棒漁に関わる人びとへの聞き取り調査から明らかにしていく。そうすることを通じて、不結実の結果を追認することや過去へのノスタルジーに浸ることなく、漁師にとっての希望の所在を考察する。

9月2日(日)9:30〜12:00 自由報告部会3(文化・メディア)

3-1 基地内クラブとAサインクラブの実態―本土復帰前後を中心に―
澤田聖也(東京藝術大学大学院音楽研究科音楽文化専攻修士課程)
 復帰前後における沖縄のロック・ミュージシャンの演奏場所は基地内クラブとAサインクラブであった。前者は米軍基地内にある米軍主導のクラブ、後者は基地周辺にある民間主導のクラブであり、両者は沖縄にありながら「アメリカ的体験」ができる特異な空間であった。こうした場所に出入りできる人は沖縄の人でも一部の関係者だけであり、その空間が一体どのようなものだったのかほとんど明らかにされていない。
 本報告では、復帰前後(1960年代半ば~1970年代後半)の基地内クラブと民間クラブで活動していたミュージシャンにインタビューをすることで、2つのクラブのシステムや音楽、契約、環境等を整理し、ミュージシャンの視点から見た演奏空間の実態を把握する。

3-2 ポール・ダンスのオーラル・ヒストリー——セクシー・ダンスからスポーツへ
ケイトリン・コーカー(立命館大学衣笠総合研究機構)
 本発表の目的は、関西のポール・ダンスのオーラル・ヒストリーを作成し、2005年から現在までの期間をポール・ダンス歴の過渡期として明らかにすることである。より具体的にいうと、この間でポール・ダンスは、 ①風俗の職種から一般女性が自分の性やジェンダーに向き合える習い事へ、②セクシー・ダンスから技で競い合うスポーツへ、③女性向けのみの習い事から男性ならびに子供向けの実践へ、と変容しつつである。総合的にこれらは直線的な変容ではなく、ポール・ダンスの多様化である。本発表で、なぜポール・ダンスは実践者および環境によってセクシー・ダンスにもスポーツにもなりうるのかを考察し、国際的な現象の一部分ならびにローカルな現象としてその実践を描き明白にする。

3-3 自然災害と都市文化–岩手県釜石花街に関する聞き取りを中心に–
中原逸郎(京都楓錦会)
 花街は芸舞妓が芸(芸能と同義)と地元言葉による会話で、顧客を楽しませる場である。ところで、岩手県には昭和40年代後半(1970〜)までは釜石、遠野等10花街が存在した。釜石花街には漁業関係者と造船業者が育てた独特な「おでんせ(おいでください)」文化と呼べる接待文化があったと言う。釜石花街と東京八王子花街の交流は、東日本大震災(2011)時に遡る。震災による津波で楽器、着物ほか芸妓(者)業に関わる諸道具を失い避難所暮らしの釜石最後の芸妓に八王子花街の女将が三味線を差し入れたことが契機であった。本発表では震災における釜石と八王子花街の芸と心の交流を振り返る。

3-4 社会派TVドキュメンタリーの成立過程の研究、沖縄返還密約をめぐる『メディアの敗北』の研究
西村秀樹(近畿大学人権問題研究所)
 昨年に続く第二弾の発表(社会派TVドキュメンタリーの成立過程の研究)。本作品(沖縄のローカル局琉球朝日放送が2003年放送)は沖縄返還密約を取り扱ったドキュメンタリー作品である。この事件をめぐっては、澤地久枝『沖縄密約』岩波現代文庫と山崎豊子『運命の人』文春文庫を持ち出すまでもなく、日本の戦後メディア史に記録される大きな事件であるが、その一方で、日本政府の沖縄密約をすっぱ抜いた凄腕新聞記者・西山太吉は国家公務員法(機密漏洩のそそのかし)違反に問われ検察はネタ元の女性外務省職員との間の男女問題に論点をすり替えた。
 土江は長く沈黙を守る西山を説得し番組を完成させた。その成立過程をインタビューした。

3-5 放送史研究における「オーラル・ヒストリー」の考え方と実践的方法論試案
吉田功、広谷鏡子(NHK放送文化研究所メディア研究部)
 放送史研究においては、文書資料や映像・音声に加え、放送の発展に寄与した人々の証言が用いられてきた。NHK放送文化研究所では、関係者の証言を収集し、「放送のオーラル・ヒストリー研究」を数年前から続けているが、その共通基盤となる考え方、方法論については、現在も模索中である。そこで今回は、所内で実施した「オーラル・ヒストリー研究会」での議論をベースに、放送史に適用していくための「オーラル・ヒストリー」の基本的な考え方と、具体的な方法論について報告する。特に、①「聞き取りに際して」の留意すべきポイント、および、②貴重な証言を活用できる記録とするための「保存、整理、活用について」の2点を中心に、実践に役立てるための提案としたい。

9月2日(日)10:00〜12:00 大会校企画テーマセッション「女性の声を聴く」

【第一報告】「東北の農婦(おなご)」の声を可聴化するために:石川純子の聞き書きをめぐる一考察
柳原 恵(日本学術振興会特別研究員PD(立教大学))
 報告者は、東北・岩手におけるフェミニズムのありようを明らかにするために、当地において活動してきた女性たちへライフストーリー・インタビューを行ってきた。語り手の一人である石川純子(1942-2008)は、70年代から「東北の農婦(おなご)」の聞き書きを実践してきたフェミニストである。石川の言葉を借りれば、「東北の農婦(おなご)」は、地域、職業階層、ジェンダーの面で複合的に周縁化された「三重の疎外」にある存在である。本報告では、石川の「農婦(おなご)」への聞き書きを、石川自身のライフストーリーも対象にしながら分析し、沈黙のうちにある女性の声を可聴化する条件や、聞き書きの経験が石川のフェミニズム思想にもたらした影響について考察したい。

【第二報告】 避難の体験に耳をすまして
薄井篤子(神田外語大学他非常勤講師、特定非営利法人埼玉広域避難者支援センター副代表理事)
 2011年3月に発生した東日本大震災と原発事故によって避難した方々に出会い、支援活動の中で少しずつ女性たちに話を聞くようになった。7年が経った今、震災以前の生活、暮らしの中での体験を聞くように努めている。耳を傾けていると、あの日までの「あたりまえの日常」の中で自分がどのように生きてどのようなことを大切にしてきたかを本人が再確認するような瞬間がある。それはまた、離れてしまった故郷の、地域の歴史の一部でもある。語ることと聞くことの中で、<語り継がれること>が浮かび上がってくる。聞き手の私には、それは女性たちが自分自身と故郷の、これからにつながっていくと思える瞬間でもある。女性たちの体験が孤立せず、受け継げるように一人ひとりの話に耳をすませていきたい。

【第三報告】 突如破られた「沈黙」と日常化されていた「圧力」
山村淑子(地域女性史研究会事務局長)
 1978年以降、「あたりまえに生きてきて、何の取り柄もないから話すことはない」と述べた昭和一桁(1926-1935)世代の女性たちとの出会いは、私にとって「あたりまえに生きてきた」女性と戦争の関わり合いを再考する契機となった。交流が積み重なると、「物心ついた時には既に戦争が始まっていた」、「戦争中学べなかった時間を取り戻したい」、「女に生まれたというだけで奪われていた私の人生を取り戻したい」と、個々の「人生」が語られていくようになる。その過程で、突如、女性たちの内心にしまい込まれていた「沈黙」が破られ、同時に、女性たちに「何も話すことはない」と言わしめた日常化された「圧力」もみえてきた。女性たちの内心から表出された「沈黙」と「圧力」を考察してみたい。