日本オーラル・ヒストリー学会第16回大会(JOHA16)のご案内

 日本オーラル・ヒストリー学会第16回大会(JOHA16)が 2018年9月1日(土)、2日(日)の2日間にわたり東京家政大学において開催されます。お誘い合わせのうえ、ふるってご参加ください。
 自由報告部会、ならびに大会校企画テーマセッション「女性の声を聴く」の各報告要旨は こちら をご覧ください。
 大会ポスターは、大会校企画テーマセッションにちなんだものとシンポジウムにちなんだものの2種類あります。ご所属の大学や団体で宣伝にご活用いただければ幸いです。
JOHAポスター2018a JOHAポスター2018b

日本オーラル・ヒストリー学会 第16回大会
Japan Oral History Association 16th Annual Conference

開 催 日:2018年9月1日(土)、2日(日)
開 催 場 所:東京家政大学板橋キャンパス16号館
交通アクセス:JR埼京線「十条駅」から徒歩5分(駅からの地図
キャンパスマップ(31番の建物が大会会場の16号館です)
大会参加費:会員 1,000円、非会員 一般:2,000円、学生他:1,000円
懇 親 会 費:一般 4,000円、学生他 2,000 円

JOHA16実行委員会:岩崎美智子*開催校理事、金城悟、松本なるみ(以上、東京家政大学)、松平けあき、伊吹唯(以上、上智大学大学院生)、池川雅美、塚越亜希子、鳥居希安、林祐子、若林美千絵(以上、東京家政大学大学院生)
学会事務局:人見佐知子、研究活動委員会委員長:田中雅一、会計:上田貴子
※ 大会に関してご不明な点がございましたら、JOHA事務局までお問い合わせください。
E-mail:joha.secretariat(at)ml.rikkyo.ac.jp →(at) を @ に差し替えてください。

◎ 自由報告者へのお願い
1)自由報告は、報告20分・質疑応答10分(合計30分)で構成されています。
2)配布資料の形式は自由です。会場では印刷できませんので、各自50部ほど印刷し、ご持参ください。
3)各会場にパソコンを準備しておりますので、ご利用の場合、USBメモリ等にプレゼンテーションのデータをお持ちください(ご自身のPC等をご使用の場合、RGBケーブル接続のみでUSBなどの接続方式には対応しておりません。必要な方は変換アダプター等もご準備ください。念のため資料を保存したUSBメモリ等もご持参ください)。動作確認等は各分科会の開始前にお願いいたします。会場担当者にご相談ください。

◎ 参加者へのお知らせ
1)会員・非会員ともに受付してください。参加にあたって事前申し込みは必要ありません。
2)夏期休暇中につき、学内の店舗は休業しております。昼食は各自でご用意ください。近隣のコンビニまでは10分程度かかります。
3)なおロッカーおよびクロークはございません。荷物は各自で管理をお願いします。
4)「十条門」は、1日(土)は終日開いていますが、2日(日)は8:30~10:30と15:30~17:30のみ開いています。それ以外の時間帯は、「正門」までおまわりください。

◎ 懇親会案内
9月1日(土) 18:15〜20:15
会場:東京家政大学 16号館1階 食堂ルーチェ
参加費:一般 4,000円、学生その他 2,000 円

◎ オーラルヒストリー実践ワークショップ「現地と作品を結ぶ」写真報告コーナー
9月1日〜2日の大会開催期間中、16号館1階ロビースペースにて、オーラルヒストリー実践ワークショップ「現地と作品を結ぶ〜著者とともに『消されたマッコリ。』の舞台を歩く(6月10日@大阪府泉南郡岬町多奈川地域)」の写真報告コーナーを設けます。ぜひお立ち寄りください。

大会プログラム

第1日目 9月1日(土)
11:00 受付開始

12:00〜13:00 特別講演会 161B講義室 共催:東京家政大学女性未来研究所
特別講演 チラシPDF

語り得ぬ性被害―戦時暴行による妊娠と中絶をめぐって―

【講師】樋口恵子(東京家政大学女性未来研究所所長・名誉教授)
【司会】金城 悟(東京家政大学)
【趣旨】
 戦前の「満州」「朝鮮」から引揚げる日本女性は、突如参戦したソ連兵はじめ「敵」方となった外国男性の強姦によって妊娠(「不法妊娠」と呼ばれている)する例が少なくなかった。日本人の自治組織が無事占領地を通過するために人身御供として若い女性が提供される場合もあった。
 受け入れる日本政府は上層部の非公式の決定で、当時の堕胎罪を免責して中絶した。その数は千人とも言われるが、断片的な記録しかない。麻酔なし妊娠5~9か月の手術に女たちは声もあげず耐えた、という施術者の証言はあるが、本人の証言はない。「それを言ったらおしまいですから」とその場にいた看護師の証言はあるけれど。語り得ない事実だが、記録されなければならない歴史的事実。語ることによって浄化される場合もあるが、苦難を再現することも多い。そのはざまに立って考える。

13:15〜15:45 自由報告部会
自由報告部会1(戦争・移民) 162C講義室
司会:八木良広(愛媛大学)、北村毅(大阪大学)
1-1 米軍占領と復興に奪われた故郷「金武湾」区―子ども世代による記憶の共有と社会化
謝花直美(沖縄タイムス記者)
1-2 戦時体制下台湾における集団疎開―台北師範学校女子部の集団疎開体験者の聞き書き調査を事例として
佐藤純子(東京経済大学大学院コミュニケーション学研究科博士課程)
1-3 中国残留日本人女性のオーラル・ヒストリー~移動・家族・従軍看護婦を中心に~
竹原信也(奈良工業高等専門学校)
1-4 ドミニカ日本移民のライフストーリー―記憶の語り―
森川洋子(明治大学大学院教養デザイン研究科博士後期課程)
1-5 福井県の戦傷病者の家族のオーラル・ヒストリー
藤原哲也(福井大学学術研究院医学系部門)

自由報告部会2(運動・労働) 162D講義室
司会:湯川やよい(東京女子大学)、石川良子(松山大学)
2-1 脱毛症当事者コミュニティの運動史――あるカリスマ的女性を中心に
吉村さやか(日本大学大学院文学研究科社会学専攻博士後期課程)
2-2 元自衛隊員のオーラルヒストリー:調査の意義と難しさ
松田ヒロ子(神戸学院大学現代社会学部)
2-3 ソ連期ウズベキスタンにおける手工芸の社会主義的生産体制と女性の労働経験:元工場労働者への聞き取り調査から
宗野ふもと(筑波大学人文社会系特任研究員)
2-4 生きている過去:草創期インドネシア地方社会の集団的暴力の語りと現在
山口裕子(北九州市立大学文学部)
2-5 三陸の突棒漁における困難と漁師の希望―太平洋戦争中~1960年代に着目して―
吉田静(立教大学大学院社会学研究科)

16:00〜18:00 研究実践交流会 161C講義室

オーラル・ヒストリー/ライフストーリーの現場性を問い、
一歩を踏み出すために
―「聞くこと」と「書くこと」を結ぶもの/隔てるもの―

【司会】平井和子
【発題者】1.大門正克「askからlistenへ―聞く現場の身体性回復のために」
     2.倉石一郎「「書く」ことの現場性について
       ―書く実践のよどみとこわばり」
【趣旨】
 オーラル・ヒストリーの実践において、「聞くこと」と「書くこと」が車の両輪をなす大切な営みであることに異論の余地はほとんどないだろう。しかしこの二者がどのようにつながり、絡み合っているかという相互関係については、個々のオーラル・ヒストリアンの「流儀」やスタイルの問題として個人化され、公の場でほとんど討議されたり検討されることがなかった。この実践交流会は、聞くことと書くことの「現場性」にこだわり、秘技化されがちなこれらのあり方を公の討議に付し、孤立しがちなオーラル・ヒストリアン間に共同性を回復させることを企図したい。
 このうち「聞く」営みの現場性については、大門正克氏の著書『語る歴史、聞く歴史―オーラル・ヒストリーの現場から』(岩波新書、2017年)が明確な展望を与えてくれた。本書のなかで、1970年代以来の長い聞き取り調査の経験をもつ氏が、自身の聞き書きに「大きな壁」を感じ、それを機にAskからListenへと、「聞く」姿勢の根本的な態度変更をするに至った経緯が述べられている。生身の人間があい対する「聞く現場」にとことんこだわり、そこで感取された身体性を歴史叙述の根幹に据えるという姿勢である。
 そこでこの実践交流会では、まず大門氏から「聞く」ことをめぐる基調提起をいただき、それに触発された形で、倉石一郎から、近著『増補新版 包摂と排除の教育学』の経験を踏まえ、「書く」ことをめぐる応答的問題提起を行う。それに引き続き、会場の参加者が小グループに分かれて意見や疑問を出し合うワークショップ形式で議論を深めていきたい。「聞く」と「書く」との混沌とした関係性について、参加者が経験を交換(歓)し、報告者も交えて討論することで、各々がいくばくかの道筋を見出していく契機となる場としたい。
(文責・研究活動委員会 倉石一郎)

18:15〜20:15 懇親会 食堂ルーチェ

第2日目 9月2日(日)

9:30~12:00 自由報告部会
自由報告部会3(文化・メディア) 162C講義室
司会:矢野泉(横浜国立大学)、米倉律(日本大学)
3-1 基地内クラブとAサインクラブの実態―本土復帰前後を中心に―
澤田聖也(東京藝術大学大学院音楽研究科音楽文化専攻修士課程)
3-2 ポール・ダンスのオーラル・ヒストリー——セクシー・ダンスからスポーツへ
ケイトリン・コーカー(立命館大学衣笠総合研究機構)
3-3 自然災害と都市文化―岩手県釜石花街に関する聞き取りを中心に―
中原逸郎(京都楓錦会)
3-4 社会派TVドキュメンタリーの成立過程の研究、沖縄返還密約をめぐる『メディアの敗北』の研究
西村秀樹(近畿大学人権問題研究所)
3-5 放送史研究における「オーラル・ヒストリー」の考え方と実践的方法論試案
吉田功、広谷鏡子(NHK放送文化研究所メディア研究部)

10:00〜12:00 大会校企画テーマセッション 162D講義室

女性の声を聴く

【司会】岩崎美智子(東京家政大学)
【コメント】山田富秋(松山大学)
【趣旨】
 本セッションの目的は、それぞれの「現場」で女性の声を聴き、彼女らの経験について考察を続けてきた3人の方々の聞き取りの実践から学ぶことにある。
 女性が自分の経験を語る(語らない)のはなぜなのだろうか。そして、語られた(語られなかった)言葉からわたしたちは何を受け取るのだろうか。戦前は語られることの少なかった女性の経験を、戦後になって聞き取る試みが各地で行われるようになった。女性が主体的に生きるために、自らに問い、社会と格闘してきたことを、聞き取りを続けてきた研究者・実践者から報告していただき、「聴く」ことの意味や聞き手の役割についても考えたい。
 3人のご報告に山田富秋さんからコメントを加えていただくが、フロアーからの発言も大いに期待している。

【第一報告】「東北の農婦(おなご)」の声を可聴化するために:石川純子の聞き書きをめぐる一考察
柳原 恵(日本学術振興会特別研究員PD(立教大学))
【第二報告】 避難の体験に耳をすまして
薄井篤子(神田外語大学他非常勤講師、特定非営利法人埼玉広域避難者支援センター副代表理事)
【第三報告】 突如破られた「沈黙」と日常化されていた「圧力」
山村淑子(地域女性史研究会事務局長)

12:05〜13:05 総会 161B講義室

13:30〜16:30 シンポジウム 161C講義室

食に聴く・食を書く―食の媒介者たちをめぐる歴史と社会―

【司会】橋本みゆき・倉石一郎
【パネリスト】桜井厚氏、赤嶺淳氏、野本京子氏
【コメント】藤原辰史氏
【趣旨】
 個人の体験への接近を通じて社会や文化の歴史的変遷を明らかにすることが、オーラル・ヒストリー研究の目的の一つであるとすれば、「食」のあり方を手がかりにある時代の一面を浮き彫りにするという営みもまた、オーラル・ヒストリーにとって極めて魅力的かつ重要な課題の一つである。また食には「いのちをつなぐ」営みという側面がある(赤嶺淳「『食生活誌』学の確立をめざして」赤嶺編『クジラを食べていたころ』新泉社、2011)とすれば、それは人の「生存」を問うライフストーリー/ライフヒストリー研究の焦点となり得ると考えられる。近年、社会学・人類学・歴史学といった関連領域において、食をテーマとする魅力的なモノグラフの刊行が相次いでいる。それらにおいて注目されるのは、食の生産/消費という二分論を超えて、食にたずさわる多様な媒介者の存在―加工者、流通業者、料理人など―にクローズアップし、その声を聞き取ることで豊かな社会像や歴史を描くのに成功している点である。
 本学会においても少なからぬ会員が、こうした動きに並行して、あるいはそれ以前からずっと、食や食生活への視点を研究に取り込んだ仕事を蓄積させてきた。しかしそれらの成果は点として存在したままで、これまでそれらを線としてつなぐ場はあまりなかった。今回のシンポジウムが、食をめぐるオーラル・ヒストリー研究がさらに深化・発展を遂げていく契機となれば幸いである。今回のパネリストの三氏およびコメンテータはいずれも、社会学・人類学・歴史学の各分野において食文化や食生活にまつわる歴史・社会研究を牽引し注目すべき研究成果を挙げてきた方々であり、活発な討議が期待される。
(文責・研究活動委員会 倉石一郎)