JOHAニュースレター第1号

第1回設立大会/オーラル・ヒストリー研究交流フォーラム
2003年9月23日中央大学後楽園キャンパスにて開催
オーラル・ヒストリーの可能性に期待を込めて、120余人が参加!

【目次】

(1) 第1回設立大会報告
1.第1回設立大会記念講演
3.設立趣意書
4.分科会報告

(2) 次期大会開催に向けて
1.第2回JOHA大会開催は2004年9月に予定
2.IOHAローマ大会
3.OHA大会はポートランド市にて

(3) 「事務局」便り

(1) 第1回設立大会報告

1.第1回設立大会記念講演
 JOHA第一回設立大会には二人の記念講演者を迎えた。2000年度米国オーラル・ヒストリー学会(OHA)会長でワシントン州立大学バンクーバー校准教授のローリー・マーシエ氏とペンシルバニア州立大学ヨーロッパ研究部長のジャクリン・ギア=ヴィスコヴァトフ氏である。
 マーシエ氏は「歴史叙述にオーラル・ヒストリーを用いる際のさまざまなアプローチについて」と題した講演の中で、アメリカにおけるオーラル・ヒストリーの発展を概観し、歴史叙述に「声を与えた」オーラル・ヒストリーの持つ優位性とその課題を具体例を挙げて解説した。オーラル・ヒストリーの口述性に忠実でありつつ、それを再構成して読者に提供するという前提をふまえて、氏自身の研究や著作に用いられたオーラル・ヒストリーの事例をOHPを用いて発表された。
 また最近の口述史資料を聞き手に音声として提供しようとする、あるいは音声と映像をそのままウエッブ上で公開する、といったアメリカでの新たな動きについても紹介があった。
 マーシエ氏がオーラル・ヒストリーの発展と現状そして課題を包括的に話されたのに対し、ギア=ヴィスコヴァトフ氏は「英国炭鉱ストライキにおけるオーラル・ヒストリー:ジェンダーと世代」と題して、オーラル・ヒストリーを用いた一つのケース・スタディーとして氏の研究論文の一部を朗読された。1984年から 85年にかけての英国での炭鉱ストの際の炭鉱労働者の妻たちへの長期間にわたる聞き取り調査を基にした氏の歴史へのアプローチの情熱が参加者に伝わる発表だった。
 それぞれの講演終了後、参加者との質疑応答が行われ、聞き手と話し手の考え方が根本的に異なる場合のインタビューの取り扱い方といった手法としてのオーラル・ヒストリーの問題点や、時間の経過とオーラル・ヒストリーの内容の変化の関係等について質疑が交わされた。
 またマーシエ氏からは、2004年9月にオレゴン州ポートランド市で開催される次回のOHA全国大会への多くの日本のオーラル・ヒストリー実践者の参加を歓迎するというメッセージと共に、発表論文募集案内が配布された。(吉田かよ子)

2.海外のオーラル・ヒストリー団体、および研究者からのメッセージ紹介
 今回の設立大会には海外のオーラル・ヒストリ―団体や研究者からも数多くのメッセージが寄せられた。
 英国オーラル・ヒストリー協会(OHS)からは事務局長のロバートB.パークス博士から、書面で以下のような祝辞が寄せられた。

 「日本オーラル・ヒストリー学会の皆様、英国オーラル・ヒストリー協会より日本でオーラル・ヒストリー実践活動をしておられる皆様にご挨拶申し上げるとともに、日本オーラル・ヒストリー学会の第一回設立大会の開催をお慶び申し上げます。
 今、日本に全国規模のオーラル・ヒストリー組織を立ち上げるというのは、まさに時を得たことと思います。協働を促し専門的基準を向上させるという皆様の目標が達成されることを祈念いたします。
 私たち二つの組織の間の相互交流が将来にわたって推進されることを期待するとともに、JOHAが国際的なオーラル・ヒストリー運動に大きな役割を果たされることを希望します。
英国オーラル・ヒストリー協会事務局長 ロバートB.パークス」

 またアートA.ハンセン当年度米国オーラル・ヒストリー学会/協会(OHA)会長からも長文の祝辞が寄せられた。紙面の関係でその一部をここに紹介する。

 「・・・過去10年ほどの間に、次第に多くの日本人オーラル・ヒストリー研究者が、OHAの年次大会に参加したり、学会誌『オーラル・ヒストリー・レビュー』(カリフォルニア大学出版)に投稿するようになったことは、私にとってもOHAにとっても、大変喜ばしいことです。それだけに、日本において日本オーラル・ヒストリー学会設立の動きがあると知った時は、興奮しました。歴史やその関連分野の研究がすすんでいる日本でそのような学術団体ができれば、特に国際オーラル・ヒストリー学会などを通して、その分野での議論を深めることができるでしょう。(中略) OHAを代表して、またオーラル・ヒストリーによる日系人研究を主たる専門としてきた一研究者として、このメッセージがJOHA設立を大きく支援するものとして受け取っていただけることを願います。
米国オーラル・ヒストリー学会/協会(OHA)会長 アートA.ハンセン(博士)」

 ハンセン氏の祝辞の中にもある国際オーラル・ヒストリー学会(IOHA)からは、ジャニス・ウイルトン現会長が当日JOHA設立フォーラムに出席された。ウイルトン氏は会場で、JOHA設立に対する期待を熱意を込めて語られ、研究実践交流会議の席では2006年にオーストラリアで開催されるIOHAへの日本人研究者の多数の参加を希望する旨を強調された。その際、学会使用言語として日本語を用いる分科会の設置を検討したいという趣旨の発言もあり、日本人研究者の参加に大きな期待を寄せておられることを実感した。
 また台湾オーラル・ヒストリー界の重鎮呂芳上氏もフォーラムに参加され、祝辞をいただいた。その他、JOHA設立準備委員から口頭でオランダ、シンガポールの研究者からのJOHAへの祝辞が披露された。(吉田かよ子)

3.設立趣意書
http://joha.jp/?cid=1

4.分科会報告

(1) 第1分科会 「地域・生活・ジェンダー」
 第一分科会のコンセプトは、社会学でのオーラル・ヒストリーや歴史学での聞き取り、ジャーナリズムの聞き書きやインタビューの方法論をつきあわせて、オーラル・ヒストリーが従来の社会調査や歴史像にどのような転換を迫っているかを検証し、オーラル・ヒストリーの方法論を模索することであった。
 報告とテーマは、千葉大学教授桜井厚氏「ライフストーリーとジェンダー」、女性史研究者折井美耶子氏「地域女性史と聞き書きー東京地方を中心に」、ジャーナリスト・日本聞書学会運営委員の和多田進氏「ジャーナリズムと聞き書き」である。
 社会学の桜井厚氏は、モデル・ストーリーとして「嫁ぬすみの」に関する男/女のナラティブ分析から、ジェンダーは、性、民族、