JOHAニュースレター第27号

2014年12月22日
JOHAニュースレター第27号

日本オーラル・ヒストリー学会第12回(JOHA12)大会 報告特集
 2014年9月6日(土)、7日(日)の2日間にわたり、日本大学文理学部でJOHA12が開催されました。あいにくの雨模様でしたが、4つの自由報告部会、研究実践交流会、シンポジウムそれぞれにおいて報告に熱心に耳を傾ける参加者の姿がたくさん見られました。
 次回のJOHA13大会は2015年9月12~13日、大東文化大学板橋キャンパス*(東京都板橋区)での開催を予定しています。メーリングリストや学会HP上での案内・募集をお見逃しなく、どうぞふるってご参加ください。
*次回大会会場は大東文化大学の大東文化会館に変更しました。
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Ⅰ.日本オーラル・ヒストリー学会第12回年次大会報告
1.大会を終えて
 JOHA12大会は、2014年9月7日~8日、日本大学文理学部キャンパスにて行われました。学会会長が開催校担当を兼ねられました。多忙な中、お引き受けいただきました好井裕明会長、開催校会員として大会運営をサポートしていただいた中村英代先生、野口憲一先生はじめ、学生スタッフの皆様に感謝いたします。
 冷房が必要ない天候のなか、2日間で延べ122名(参加費徴収83名)の参加者を数え、盛況でした。年会費納入済み参加会員には完成したばかりの学会誌10号をお渡しできました。今回、自由報告の司会2人制、事務局管理のバックナンバー自己申告制配布を新たに試みました。1日目の研究実践交流会「オーラル・ヒストリーを用いた大学の教育実践」、2日目のシンポジウム「オーラルヒストリーで編み直す放送史」は登壇者のみならず、フロアからも活発な議論が展開しました。会員のみなさまの参加とご協力に感謝申し上げます。次回は2015年9月、大東文化大学板橋キャンパスで開催されます。どうぞよろしくお願いいたします。(JOHA事務局長 川又俊則)

2.第1分科会
司会:鶴田 真紀(1~2報告)・赤嶺 淳(3~5報告)
 第1分科会では、以下の3組5名の発表がおこなわれた。うち4本は、東北大震災に関するものであり、分科会としてのまとまりがあったものと考えている。まず、石村華代(九州ルーテル学院大学)氏が、「聞き書きによる文化継承の過程―「聞き書き甲子園」の事例検討を通して」と題した報告をおこなった。石村氏は、教育学の視点から、文化継承に関する新たな取り組みとしての「聞き書き甲子園」活動を社会教育活動と位置づけ、その事例研究をおこなった。海・山・川をフィールドに生業を営む「名人」とインタビュアーとしての高校生との関わりを記述することにより、この活動における「出会い」と「学び」の具体的諸相をあきらかにした。
 次に東京家政大学の岩崎美智子氏が、「ボランティアと仕事のあいだ―被災地で支援活動をした保育者たちの経験」と題した報告をおこなった。 岩崎氏は、東北地方の被災地におもむき、保育所で数か月~1年の間支援活動をおこなった保育者たちの語りをとおして、援助する側からみた「支援」のあり方について考察した。保育者が一定期間被災地で支援活動をすることは、「ボランティア活動」なのか、それとも「職業活動の一環」なのかと問いかけ、ボランティアとして活動することと職業人として働くことの相違を分析した。また、海外でのボランティア経験の有無が、被災者と支援者の協働のあり方に差異をもたらすという仮説は、今後の研究の発展性を感じさせてくれた。
 最後に上智大学のデビット・スレイター氏ら3名による「東北からの声」(Voices from Tohoku: A 3.11 video archive from 10 different communities)に関する発表があった。まずスレイター氏が同活動の歴史と概要、展望を紹介したあとで、 マヤ・ヴェセリッチ氏が震災の経験をかたる「語り部」の現代的意義について、彈塚晴香(東京大学大学院)氏が、いわゆる自主避難された女性たちの苦悩と現状について報告した。同活動は、学生が中心となって収録した400時間にもおよぶインタビュー記録を所蔵している。素人の学生がむけたマイクに語られた内容は、既成のマス・メディアがとらえきれていない「生の声」であり、それゆえに、震災の経験、その後の社会変容を物語る資料となっている。今後は、このアーカイブをいかに国内外で活用していくのか、期待したい。(赤嶺 淳)

3.第2分科会
司会:宮崎 黎子(1~3報告)・滝田 祥子(4~5報告)
 第2分科会では、5つの報告がなされた。
 第1報告の渡辺祐介(立命館大学大学院)「将校になる―ある『学徒兵』のライフヒストリー―」は、「学徒兵は何のために戦ったのか」という疑問から、「学徒兵」であった、神田氏のライフヒストリーを3日間15時間に及ぶインタビューから得て、彼の戦争体験と戦争観をもとに考察する。そこから体験者ならではの戦中派特有の‘割り切れなさ’が浮かび上がってくる。青年の善意や誠意が戦時体制に回収されるメカニズムと体験者のライフヒストリーが語る戦争の‘リアリティ’に迫る報告であった。
 第2報告の山本唯人(東京大空襲・戦災資料センター)「証言映像を捉え直す―『東京大空襲証言映像マップ』を通して―」は東京都江東区に所在する民立資料館である東京大空襲・戦災資料センターで今年3月、c-locと呼ばれるソフトウェアを活用し、空襲体験者の証言映像をモニタ画面上の3D地図を通して視聴する「東京大空襲証言映像マップ」という証言映像アーカイブを公開した。このアーカイブの操作をスライド画面上で実演し、その概要を説明すると同時に、オーラル・ヒストリーの新たな視聴方法の開発が、その研究にもたらす可能性について考察した。
 第3報告の小泉優茉菜(神奈川大学大学院)「長崎県生月島のかくれキリシタン信者のライフ・ヒストリー」は江戸幕府によって弾圧されたキリスト教信者たちが潜伏し、250年間信仰を伝承した。指導者のいない中で伝承された信仰は、日本の風土などと混淆し、現在は「かくれキリシタン信仰」として伝承されている。大戦下の混乱で伝承が滞って以来、伝承断絶の危機にある今、村川要一氏(89)の個人史から考察する。親から子へ口伝えで行われてきた伝承だが、今は「紙に書く」。また「唄おらしょ」(ラテン語のOratio<祈り>が日本語に近づき、転化)の採譜を通じて、日本独特の伝承を調査。先行研究では注目されてこなかった「個」とかくれキリシタン信仰との繋がりにも言及した。
 第4報告の藤井和子(関西学院大学大学院)「開拓が生みだすもの―戦後入植のフォークロア―」は開拓を通して人々がどのようなフォークロアを生み出したのかという観点から、戦後開拓について茨城県旧七会村で、ユニークな活動を展開している駒井英子さんのナラティブを紹介。まさに「創意工夫で新境地を拓く開拓者魂を引き継ぎ、再生可能エネルギー発電に取り組む」80歳の起業家駒井英子さんがつくった不二太陽光発電株式会社の成長と発展の物語は、原発事故後の新たな可能性を示唆する報告となった。
 第5報告の嶋田典人(香川県立文書館)「アーカイブズとオーラルヒストリー―文書等と聞き取り調査―」はオーラルヒストリーとアーカイブズは相互に補完しあうものとして、所属する香川近代史研究会の戦争体験等聞き取り調査の事例を分析。香川県立文書館における高松飛行場資料の利活用・普及事業。戦跡関連調査の実施―地域での聞き取り調査の必要性。高松飛行場と詫間海軍航空隊関連聞き取り調査について報告。記録資料とそれらを保存する(公)文書館、すなわちアーカイブズの必要性を述べた。
 5つの報告は多岐にわたり、多様性に富んでいたが、「日本の戦争体験」が通奏低音となっていることが共通していた。それぞれ中身の濃い報告であっただけに、報告そのものの時間も討議の時間も少ないのが、残念に思われた。(宮﨑黎子)

4.第3分科会
司会:橋本 みゆき(1~2報告)・山村 淑子(3~4報告)
 大会2日目午前の第3分科会は、山村淑子氏と橋本が進行を務めた。5名の報告を予定していたが1名が急病により欠席したため、4つの報告の後に山村氏の司会で全体討論の時間をもった。
 1つ目の報告は、後藤一樹氏(慶應義塾大学大学院)の「〈漂泊〉のライフストーリー─―ある歩き遍路の語りから」である。報告者が四国遍路中に出会い、再会したKさん(1948年生)の語りに現れる、四国遍路の意味の世界の変遷を象徴的相互作用プロセスとして描こうとしたもの。会場からは、Kさんにとっての仏教の重要性に関する質問があった。確かに単一の枠に収まらない意味世界である。ただ「交響」と広げてしまうまとめ方には、まだ検討できる余地があるようにも思われた。
 2つ目は、江口怜氏(東京大学大学院)の「被差別部落の人間形成と義務教育――神戸市内の夜間中学に学んだ夫婦の語りに焦点を当てて」である。学齢期に(夜間)中学を中退し、高齢になって再入学した被差別部落出身の夫婦(夫1936年、妻40年生まれ)の、人生の時期によって意味づけが異なる義務教育就学の語りに報告者は注目する。生活経験や職業による人間形成に対しての義務教育の意味は何か、もう一歩踏み込んだ結論も導けそうな事例である。
 3つ目は、吉村さやか氏(聖心女子大学大学院)「「女らしい文化」を生きる――髪を喪失した女性たちのライフストーリー」である。円形脱毛症当事者会の会長である39歳女性へのインタビューから、彼女の転機となった温泉での経験に焦点を当て、一方で脱毛症への理解を図る活動と、他方ではカツラ着用の社会生活を続ける個人の人生を理解しようとしたもの。質疑は、語り手と聞き手との関係性の記述の意義や、「女らしい」という表題に集中した。
 4つ目は、具美善氏(一橋大学大学院)「在韓結婚移住女性のライフストーリー――結婚移住のプロセスと意味」である。「多文化家族」の増加で知られる韓国。報告者は3調査事例を紹介し、ステレオタイプで描かれがちな近隣国出身女性たち自身の選択・結婚移住経験への主体的意味づけを論じた。参加者からは、出身国の社会構造や仲介業者が介在するケースなど背後要因への目配りの必要性、またかつての日本との類似性の指摘があった。
 一見マイノリティ問題を共通項としつつも、複数の視角を刺激される興味深い部会となった。雨にもかかわらず早くから集まった参加者らが積極的に発言して比較的じっくりと質疑応答・議論ができ、各報告への理解をさらに深めることができた。参加者の協力に感謝する。 (橋本みゆき)

5.第4分科会
 第4分科会では、1と2の報告については、有末賢(慶応義塾大学)が司会をし、3~5の報告は、山本須美子(東洋大学)が司会を担当した。第1報告は、張瑋容(お茶の水女子大学大学院)の「妄想と現実の交差点にみる女性オタクのセクシュアリティ―一人の台湾人女性オタクのライフストーリーから―」であった。台湾における「哈日ブーム」などを背景にして日本マンガの輸入のみならず、コスプレや同人誌即売会なども台湾に紹介されるようになって「オタク文化」が受容されるようになった。張さんは、Bさんという一人の台湾人女性オタクのライフストーリーを取り上げ、彼女の妄想と現実の交差点に見られるセクシュアリティに焦点を当てて、分析していた。大変興味深い報告であった。第2報告は、池上賢(立教大学兼任講師)の「マンガ家のライフストーリーに見る戦後マンガ史」であった。池上さんは、これまでマンガの読者を対象として、マンガに関する経験が、人々にとってアイデンティティのリソースになることを研究してきた。今回は、Sharon Kinsellaのマンガ編集者とマンガ家を対象にしたエスノグラフィーを重要な先行研究として、2人のマンガ家のインタビューを通して戦後マンガ史の一端を描いた。今後は、編集者へのインタビューも加えてライフストーリーとメディア・コンテンツの生産に向かっていくものと思われる。第3報告は、中原逸郎(京都楓錦会:慶応義塾大学大学院)「もてなし文化の民俗学的研究―京都北野上七軒の舞妓の聞き取りを中心に―」であった。従来、京都の花街は民俗学分野において取り上げられることが少なかった。中原さんは、芸妓や舞妓へのインタビューを通して、芸の習得や伝承、お茶屋遊びの民俗文化や「もてなし文化」の変遷について分析した。貴重な研究成果である。第4報告は、ケイトリン・コーカー(Caitlin Coker:京都大学大学院)「1960~90年代の舞踏グループのオーラル・ヒストリー―舞踏を生み出した日々の実践―」であった。コーカーさんの報告は、戦後日本の前衛舞踏家として有名な土方巽の舞踏グループに属した人々から、オーラル・ヒストリーを聞き取って、当時の舞踏の日々の実践を明らかにした。彼らは、制作・上演するため、ほとんどの舞踏家が稽古場で共同生活をして、キャバレーでの「金粉ショー」で活動の資金を稼いでいた。多様な視点から、1960~90年代の舞踏家たちの活動が描かれた。グローバルな視点についても今後研究されると良いと感じられた。第5報告は、竹原信也(奈良工業高等専門学校)「別子銅山社宅街(東平社宅)における昭和の生活史」であった。竹原さんは、愛媛県新居浜市の別子銅山(1691-1973)の山間に作られた社宅街(東平社宅)の生活文化を、生活経験者の語りから報告された。山間部での昭和の生活文化や共同性、コミュニティの内実が活き活きと描かれたものであった。5つの報告、どれもがオーラル・ヒストリーの魅力を引き出している秀逸な報告であったと思われる。(有末 賢)

6.研究実践交流会 「オーラル・ヒストリーを用いた大学の教育実践」
 聞き書き甲子園が代表的な事例であるが、近年、オーラル・ヒストリー(聞き書き)のもつ人間形成における意味や機能に着目をした実践が注目を集めているが、JOHAに所属している大学教員もまた大学の講義や演習などでオーラル・ヒストリーを活用した取り組みを実践しているはずであり、その経験を交流したいということを目的に、今年度の研究実践交流会では、オーラル・ヒストリーを活用した大学教育の実践をとりあげた。
 メインの報告者は、梅崎修氏(法政大学キャリアデザイン学部教員)。梅崎ゼミでは、約1年をかけて、企画から取材、編集、広告営業まですべての工程を学生に関わらせて、「神楽坂」のタウン誌『Roji(c)』を毎年発行してきた。タウン誌の特徴は、神楽坂の魅力を、街をつくっている人々のキャリアや想いという視点から伝えるところにある。梅崎ゼミの学生は、神楽坂で働いている人びとから仕事や人生を聞き取り、そのキャリアヒストリーを作品にまとめてタウン誌の記事として発表する。報告では、このようなゼミ生の実践成果を踏まえて、オーラル・ヒストリープロジェクトの運営の難しさ、オーラル・ヒストリーを教えることの難しさが語られ、以下のような論点があげられた。
・それは、テープ起こしという苦行と発表の場づくりの関係。
・発表の場があるから、読者に語り手の経験を伝えるという媒介性が生まれること。
・広告費や販売を考えることが学生にとって経営センスを学ぶよい経験になること。しかし一方で、トラブルが生まれること。
・就職活動と印刷所とのやり取りが生まれるので、かならず学生間の負担分担に対する不平が生まれること。
・記事になるので、インタビュー先とのトラブルが生まれること。しかし、上記の問題があるからこそ、よい学習経験でもあること。
 サブ報告者は、塚田守会員(椙山女学園大学)にお願いした。リアルな女子大生の「就活」の実態を女子大生の自分史を通じて肉薄した書として注目を集めている編著『就活女子』(ナカニシヤ出版、2013年)の成果に立っての報告であった。
 教師が学生(生徒)の話を徹底的に「聴く」ことで、学生たちは教師(他者)に対して自己を語り、その過程で人生を再吟味し、自分のこれまでの経験に意味を与えていき、自らをエンパワーメントしていくことが指摘された。つまりは、『就活女子』とは、学生へのライフ・ストーリーインタビューの試みであり、それがもつ人間形成的意味を塚田報告は明らかにした。
 質疑では、各教員の大学でのオーラル・ヒストリーを活用した授業の取り組みも紹介された。大学でのオーラル・ヒストリーを用いた教育実践を交流する場として一定の意義があったように思われる。(研究活動委員会 和田 悠)

7.シンポジウム 「オーラルヒストリーで編み直す放送史」
 日本で放送が始まってから来年(2015年3月)で90年となる。これまで放送史研究においては放送番組(映像・音声)アーカイブや関連する文書や書籍が主な資料であった。しかし近年、放送に携わってきた人びとの声や記憶に注目が集まっている。放送に携わってきた多様な立場の人びとの証言を聞き取り、内容を分析することで、文書資料の隙間を埋め得る事実関係が明らかになり、また放送番組が制作された社会文化的背景もより詳細に検討ができるようになり、多様な職種における制作現場の実相に迫ることができる。またオーディエンス研究においてもオーラルヒストリーは大きな可能性を秘めている。
 本シンポジウムではこうした問題関心のもとで、米倉律(日本大学法学部)「放送史研究における資料の現状とオーラルヒストリーの可能性」、廣谷鏡子(NHK放送文化研究所主任研究員)「オーラルヒストリーを用いた初期テレビドラマ研究の試み――『私は貝になりたい』(TBS、1958年)の事例を中心に――」、西村秀樹(近畿大学客員教授)「日本初の民間放送、新日本放送スタッフへのヒアリング」という3報告をいただいた。
 米倉氏は放送史研究がもともとアーカイブや資料等を保存する習慣がなかった放送界の現実を批判的に検討し、現在番組アーカイブ整備が進展し、アーカイブを利用した放送史研究が進展しつつある現況を確認した。そのうえで放送史をより豊穣なものにするうえでオーラルヒストリーの可能性を、①放送番組の成立・制作過程の解明、②「放送史」の「放送人史」からの捉え直し、③オーディエンス(視聴者)史のよる放送史の立体化の3点にまとめられた。
 廣谷氏は、放送初期の傑作である『私は貝になりたい』というドラマをめぐり、当時美術を担当していた坂上建司氏から詳細な聞き取りを行い、当時の制作現場での実践的な工夫をめぐる証言を明らかにした。「巣鴨拘置所の場面は全部創作」「インサートカットは舞台の幕」「狭いスタジオを有効に使う」「軍事裁判の楽屋裏」「予算も、時間も、材料もなかった」「13階段はスタジオ備品」等、興味深い内容がドラマ映像を並置しながら報告された。この報告は、米倉氏の指摘する②の可能性をめぐる事例研究の試みと言える。
 西村氏は、戦後日本初の民間放送である新日本放送スタッフ15名に対する聞き取りをもとにして報告された。それぞれの語りが整理され、インタビューで判明したこととして「関西のラジオとして、庶民性、反権力姿勢、娯楽を重視したこと」「1950年占領軍によるレッドパージの結果、新日本放送発足時にNHKから移行した人が多かったこと」「NHKに残留した人も、当時の組合対策や組合分裂で悩んだ人が多かったこと」などをあげられ、戦後の放送体制創成期においてフェミニズム、労働運動、営業等より具体的なテーマを加味した研究の必要性が主張された。
 その後、太田省一(社会学者)、八木良広(立教大学兼任講師)からのコメントをまじえ、討論を行った。十分な討議時間を確保できなかったが、放送史、放送という世界におけるオーラルヒストリーを用いた研究の可能性の広さや奥深さについては、フロアの人びとも含めて、共有されたのではないかと思う。(日本大学 好井裕明)

Ⅱ.総会報告
2014年度総会(第11回総会)
日時:2014年9月7日(日)12:15~13:00
場所:日本大学文理学部3号館 3306教室
会長挨拶、議長選出(舛谷鋭会員)の後、以下の議案が諮られた。

第1号議案 2013年度事業報告
2013年度(2013.9.1~2014.8.31)事業報告について、以下の諸点が報告、了承された。
 1.会員数の現状 新規入会者が17名あった。内訳は一般5名、学生他12名である。学会大会での発表や学会誌の執筆が目的で新入会する方が多かった。2年間の学会費未納による自動退会者等21名、自己申告退会2名。3月31日現在の会員は240名である。
 2.第11回大会の実施と第12回大会開催 第11回大会は、通例の9月開催を前倒しし、2013年7月27~28日の二日間にわたって立教大学新座キャンパスにて学会設立10周年記念大会として開催した。自由報告は4つの分科会に分かれ、14本の報告があった。大会初日には、記念テーマセッション「JOHA10 年 いまオーラル・ヒストリーを問いなおす―ヒストリーとストーリーのはざまで」をフロア参加型のワークショップ形式で行い、大会二日目には記念講演として、アーサー・フランク教授(カナダ・カルガリー大学)の「語りがたきを語る」を開催した。第12回大会については2014年9月6~7日の二日間、日本大学文理学部(東京都世田谷区)で開催することになった。広報活動としてA4判の掲示ポスターを作成した。後藤一樹会員にデザインを引き受けていただき、学会HPに掲載し、学会理事を中心に広報に努めた。
 3.学会誌9号の発行と10号の編集・発行について 2013年9月に学会誌第9号を発行し、会費納入会員へ郵送した。この9号より、学会がインターブックス社から300部を買い取り、インターブックス社が出版元・販売元になった。これによって出版費用を恒常的に格安に抑えることができた。10号の編集は例年通り校正終了し、会費納入済会員に対して、第12回大会参加者には会場にて、非参加者には郵送で配布される。
 4.ワークショップの開催 2013年度は単独のワークショップを行なわなかったが、2014年の学会大会の研究実践交流会をコーディネートするために研究委員会を開催し、委員のあいだで議論・検討を行なってきた。
 5.ニュースレターの発行 ニュースレターはJOHA11後JOHA12の間に25号(2013年12月15日)と26号(2014年8月23日)を発行した。広報委員2名が編集分担。会員メーリングリストでの配信を基本とし、郵送会員数名には事務局から郵送した。
 6.ウェブサイトの充実 前期に移行した新ウェブサイト(http://joha.jp/) を学会事務局と広報委員会が管理運営している。
 7.会員相互の交流の促進 会員メーリングリストを通じた会員相互の情報発信が適宜なされている。
 8.海外のオーラル・ヒストリー団体との交流 国際交流担当理事を中心に、海外のオーラル・ヒストリー団体との交流を促進し、会員に情報提供を行う。2014年7月にはISA世界社会学会(RC38)が横浜で開催され、JOHAメンバーも、セッション・オーガナイザーや報告者として参加した。

第2号議案 2013年度決算報告
2013年度(2013.4.1~2014.3.31)決算報告資料に基づき報告され、了承された。

第3号議案 2013年度会計監査報告
山田富秋監事と折井美耶子監事より「会計帳簿、預貯金通帳、関係書類一切につき監査しましたところ、正確で適切であることを認めましたので、ここに報告いたします」と報告があり、了承された。

第4号議案 2014年度事業案
2014年度(2014.9.1~2015.8.31)事業案について、以下の諸点が報告、了承された。
 1.会員の拡大と維持 年次大会やワークショップなどの実施を通じ、またこれらの情報を広報することによって、本学会の周知に努め、引き続き会員数の拡大を目指す。また、会員の維持と会費収入確保のため、大会後年内を目途に郵送による入金状況確認と会費納入の督促を行う。
 2.第12回大会の実施と第13回大会の準備 第12回大会を2014年9月6~7日の二日間にわたって日本大学文理学部(東京都世田谷区)において開催する。自由報告は4つの分科会に分かれ、20本の報告を予定している。研究実践交流会「オーラル・ヒストリーを用いた大学の教育実践」および、シンポジウム「オーラル・ヒストリーで編み直す放送史」を開催予定である。来年度の第13回大会については2015年9月12~13日の二日間にわたって大東文化大学板橋キャンパス(東京都板橋区)での開催を予定している。
 3.学会誌第11号の発行 学会誌第11号は、第6期理事会の編集委員会によって、JOHA12のテーマセッション内容と自由投稿をもとにして編集する方針である。
 4.研究会・ワークショップの開催 2014年度に多文化共生まちづくりとオーラル・ヒストリーをテーマにワークショップを開催することを計画し、そのための予備的な議論を委員会内で行なっている。また、学校教育関係者の学会への参加を視野におさめた研究活動についての議論を研究活動委員会で検討・提案をする予定である。
 5.ニュースレターの発行 JOHA12後に大会報告を中心にしたニュースレター第27号を、JOHA13前に大会プログラムを中心にした第28号の発行を予定している。
 6.ウェブ情報の充実と改善 学会ホームページをさらに見やすく整備するとともに、適宜更新していく。
 7.会員相互の交流促進 学会HPや会員メーリングリストの活用、ニュースレター配信を通じて、会員相互の交流を促進する。また、会員の出版、活動情報についても学会誌での書評等を通じて積極的に共有する。
 8.海外のオーラル・ヒストリー団体との交流 国際交流担当理事を中心に、海外のオーラル・ヒストリー団体との交流を促進し、会員に情報提供を行う。
 9.理事選挙 今年度は理事改選期にあたる。2015年3月末に選挙権・被選挙権の確認を行い、現理事の任期満了の2ヶ月前までに第7期理事選挙を行う。
 10.学協会誌の電子化事業 学協会誌の電子図書館事業が2016年度に終了となるが、本学会の対応について理事会内にワーキンググループを立ち上げ、議論を進めていく。

第5号議案 2014年度予算案
2014年度(2014.4.1~2015.3.31)の予算案資料に基づき提案され、了承された。(事務局長 川又俊則)

Ⅲ.理事会報告
第六期JOHA第4回理事会議事録
日時:2014年9月6日(土)11:00~12:00
場所:日本大学文理学部(3号館)
参加:好井、赤嶺、有末、岩崎、小倉(議事録)、川又、川村、塚田、橋本、宮崎、八木、和田
欠席(委任):小林、田中、桜井

1.議事録記載者確認(詳細は略)
2.学会大会について
(1)日程・会場等確認 (2)総会議案確認
3.各委員会報告
(1)編集委員会 (2)研究活動委員会 (3)広報委員会
4.事務局報告
(1)入会、異動
5.その他
(1)今後の理事会予定 (2)次期理事選挙について(事務局長 川又 俊則)

Ⅳ.お知らせ
1.『日本オーラル・ヒストリー研究』 第11号投稿募集
 論文、研究ノート、聞き書き資料、書評、書籍紹介の原稿を募集いたします。
 掲載を希望される方は第10号の投稿規定・執筆要項を参照の上、編集委員会まで原稿をお送りください。学会大会での発表者のみなさんをはじめ、多くのみなさまのご応募をお待ちしています。
 締め切り:2015年3月31日(火曜日)
 応募原稿送付先および問い合わせ先は以下の通りです。

日本オーラル・ヒストリー学会編集委員会
〒464-8662 名古屋市千種区星ヶ丘元町17-3 椙山女学園大学国際コミュニケーション学部 塚田守研究室内
メールアドレス mamoru[at]sugiyama-u.ac.jp (編集委員長 塚田 守)

2.国際交流委員会から
<ISA2014 横浜大会の報告>
 国際社会学会ISAは2014年7月13日から19日までパシフィコ横浜で第18回大会を開催しました。JOHAに関係の深いRC38「Biography and Society」は 11のセッションと3つのジョイント・セッションを持ちましたが、そのなかにJOHA会員の塚田守さん、山田富秋さん、橋本みゆきさんの発案で開かれることになったセッション「Understanding Social Problems through Narratives by Insiders」がありました。このセッションはとりわけ報告希望者が多く集り、ドイツ、フィンランド、ノルウェイ、オランダ、トルコ、ブラジル、日本の計7カ国から14名が多様な社会問題についての研究報告をしました。一人一人の報告時間が短かったのが惜しまれますが、世界各地でライフストーリー・インタビューや質的調査にたずさわる報告者たちの研究成果と調査にかける熱意が満席の会場で共有され、大変意義深いセッションとなりました。
 次回は、2018年にカナダ・トロントで開催されます。また中間会議が2016年7月にウィーンで開かれますので、ぜひご参加ください。

<海外学会情報>
【Oral History Society】イギリス オーラルヒストリー学会2015
イギリスのオーラルヒストリー学会(Oral History Society)の2015年大会は7月にイギリスのロンドン大学Royal Hollowayで開催されます。詳しくは学会HPをご覧ください。
Oral History Society HP http://www.ohs.org.uk/
 2015年7月10日‐11日 於・ロンドン大学
 大会テーマ: Oral Histories of Science, Technology and Medicine
【Oral History Association】アメリカ オーラルヒストリー学会2015
アメリカのオーラルヒストリー学会 Oral History Association 第18回大会は2015年10月にフロリダ州タンパで開かれます。
詳しくはOHAのHPを参照ください。http://www.oralhistory.org/
 2015年10月14日-18日  於・フロリダ州タンパ
【ISA】国際社会学会2016
国際社会学会International Sociological Associationは、2016年7月にオーストリアのウィーン大学において、第3回中間会議「ISA Forum of Sociology」を開催します。
詳細は学会HPをご覧ください。
学会HP http://www.isa-sociology.org/forum-2016/
 2016年7月10日‐16日  於・オーストリア ウィーン大学
Call for Sessions 期間: 2015年1月15日―2月15日
 Call for Papers 開始: 2015年4月7日
 Abstract申込み期間: 2015年6月3日―9月30日
email-address  biography-and-society[at]gmx.de (国際交流委員長 小林多寿子)

3.会員異動(略)
※連絡先(住所・電話番号・E-mail アドレス)を変更された場合は、できるだけ速やかに事務局までご連絡ください。 (事務局長 川又俊則)

4.2014年度(2014.4.1~2015.3.31)会費納入のお願い
 いつも学会運営へのご協力ありがとうございます。
 本学会は会員のみなさまの会費で成り立っています。今年度の会費が未納の方におかれましては、何とぞご入金のほどよろしくお願いいたします。なお、先日発行しました学会誌は、2014年度会費入金の確認後、発送いたします。
■年会費
一般会員:5000 円、学生他会員:3000 円
*年会費には学会誌代が含まれています。
■ゆうちょ銀行からの振込先
口座名:日本オーラル・ヒストリー学会
口座番号:00150-6-353335
*払込取扱票(ゆうちょ銀行にある青色の振込用紙)の通信欄には住所・氏名を忘れずにご記入ください。
*従来の記号・番号は変わりありません。
■ゆうちょ銀行以外の金融機関から振り込む際の口座情報
銀行名:ゆうちょ銀行
金融機関コード:9900
店番:019
店名(カナ):〇一九店(ゼロイチキュウ店)
預金種目:当座
口座番号:0353335
カナ氏名:(受取人名):ニホンオーラルヒストリーガツカイ

 郵便払込・口座振込の控えで領収書に代えさせていただきます。控えは必ず保管してください。
 学会会計全般について、またご自身の入金状況を確認したい場合は、会計担当の八木良広(電子メール: yy.joha[at]gmail.com)へお問い合わせください。(会計 八木良広)