JOHAニュースレター第26号

JOHAニュースレター 第26号
2014年8月25日発行

 日本オーラル・ヒストリー学会第12回大会(JOHA12)が、2014年9月6日(土)、7日(日)の2日間にわたり、日本大学文理学部(下高井戸・桜上水)において開催されます。今回は、自由報告部会のほかに、6日の午後に研究実践交流会「オーラル・ヒストリーを用いた大学の教育実践」、また7日午後には、シンポジウム「オーラル・ヒストリーで編み直す放送史」を準備しております。皆様、お誘い合わせのうえ、ふるってご参加ください。
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【大会開催校からのご挨拶】
日本オーラル・ヒストリー学会長  好井 裕明(日本大学)
 JOHA会員のみなさま、残暑お見舞い申し上げます。9月6日(土)、7日(日)に日本大学文理学部キャンパスで第12回大会を開催いたします。新宿から京王線快速および各駅停車で10分、下高井戸駅下車徒歩10分という至近距離ですが、閑静な住宅街に囲まれたこじんまりとしたキャンパスです。今回は20名もの自由報告があり、実践交流会での報告議論とあわせて、活発でかつ生産的なやりとりが行われることを期待しています。7日午後の大会シンポジウムもNHK放送文化研究所のご協力をいただき、放送史という新たなジャンルにおけるオーラル・ヒストリーの可能性を考えたいと思っています。会場をサポートする教員や院生の数は多くなく十分なおもてなしの体制はできませんが、できるだけみなさんが快適に学会を過ごしていただけるよう努力いたします。まだまだ残暑が厳しいとは思いますが、一人でも多くの方に参加していただけることを祈念しています。

<第1日目 9月6日(土)>
12:00      受付開始 3号館
13:00~15:30 自由報告(第1分科会、第2分科会)
15:40~17:40 研究実践交流会「オーラル・ヒストリーを用いた大学の教育実践」(3307教室)
 報告者     梅崎修(法政大学キャリアデザイン学部)
 コメンテイター 塚田守(椙山女学園大学)
 司会      和田悠(立教大学)
18:00~20:00  懇親会(日本大学文理学部キャンパス内:カフェテリア・チェリー)
<第2日目 9月7日(日)>
9:00      受付開始  3号館
9:30~12:00 自由報告(第3分科会、第4分科会) 
12:15~13:00  総会  (3306教室)
13:00~13:20  昼食休憩(3303教室、他) 
13:20~16:00  シンポジウム「オーラル・ヒストリーで編み直す放送史」(3307教室)
 報告者
  1.放送史研究における資料の現状とオーラル・ヒストリーの可能性
   米倉律(日本大学法学部)
  2.オーラル・ヒストリーを用いた初期テレビドラマ研究の試み~『私は貝になりたい』(TBS,1958年)の事例を中心に~
   廣谷鏡子(NHK放送文化研究所主任研究員)
  3.日本初の民間放送、新日本放送スタッフへのヒアリング
   西村秀樹(近畿大学客員教授) 
 討論者 太田省一(社会学者)、八木良広(立教大学兼任講師)
 司会  好井裕明(日本大学)
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Ⅰ.日本オーラル・ヒストリー学会 第12回大会 概要
 Japan Oral History Association 12th Annual Conference

開 催 日:2014年9月6日(土)~7日(日)
開催場所:日本大学文理学部3号館(東京都世田谷区)
アクセス:京王線下高井戸駅・桜上水駅徒歩8分 
参 加 費:会員      1,000円(1日参加、2日参加共)
     非会員・一般  2,000円(1日参加は1,000円)
非会員・学生他 1,000円(1日参加は 500円)
懇親会費:一般 4,000円、学生他 2,000円
大会実行委員会 開催校担当・会長:好井裕明、開催校担当:中村英代、山北輝裕
        学会事務局:川又俊則、研究活動委員会委員長:和田悠、会計:八木良広

○参加者へのお願い:
1)参加にあたっては、会員・非会員とも事前の申し込みは必要ありません。
2)近隣の食堂等をご利用いただくなど、昼食は各自でご用意ください。
3)自由報告は、報告20分・質疑応答10分(合計30分)で構成されています。

○自由報告者へのお願い:
1)当日配布資料がある場合、その形式は自由です。ただし、開催校では資料を印刷いたしません。報告者ご自身で当日持参いただき、会場担当者へお渡しください(50部ほどご準備ください)。
2)各会場にパソコンを準備しておりますので、ご利用の場合、USBメモリ等にプレゼンテーション資料をお持ちください(ご自身のPC等をご使用の場合、RGBケーブル接続のみでUSBなどの接続方式には対応しておりません。必要な方は変換アダプター等もご準備ください。念のため資料を保存したUSBメモリ等もご持参ください)。動作確認等は、各分科会の開始以前にお願いいたします。会場担当者にご相談ください。

学会大会に関してご不明な点がございましたら、JOHA事務局(joha.secretariat(at)ml.rikkyo.ac.jp、Fax059-390-3903)までお寄せください(メールの場合(at)を@に変えてください))。

1.大会プログラム
<第1日目 9月6日(土)>
12:00      受付開始 3号館
13:00~15:30 自由報告(第1分科会、第2分科会)

○第1分科会 (3308教室) 司会:鶴田 真紀(1~2報告)・赤嶺 淳(3~5報告)
1.聞き書きによる文化継承の過程―「聞き書き甲子園」の事例検討を通して―
石村華代(九州ルーテル学院大学)
2.ボランティアと仕事のあいだ―被災地で支援活動をした保育者たちの経験―
岩崎美智子(東京家政大学)
3.東北からの声(Voices from Tohoku: A 3.11 video archive from 10 different communities)
David H. Slater、デビット H. スレイター(上智大学国際教養学部)
4.オーラルヒストリーとオーラルトラディション―東日本大震災後の語り部の記録―
(Oral history and oral tradition: Documenting post-3.11 kataribe storytelling)
マヤ ヴェセリッチMaja VESELIČ(上智大学比較文化研究所)
5.東北からの声―福島の母親たちのアクティビズム―
(Voices from Tohoku: Activism among mothers in Fukushima)
彈塚 晴香(東京大学大学院)

○第2分科会(3310教室) 司会:宮崎 黎子(1~3報告)・滝田 祥子(4~5報告)
1.将校になる―ある「学徒兵」のライフヒストリー―
   渡辺祐介(立命館大学大学院)
2.証言映像を捉え直す―「東京大空襲証言映像マップ」を通して―
山本唯人(東京大空襲・戦災資料センター)
3.長崎県生月島のかくれキリシタン信者のライフ・ヒストリー
小泉優莉菜(神奈川大学大学院)
4.開拓が生みだすもの―戦後入植のフォークロア―
藤井和子(関西学院大学大学院)
5.アーカイブズとオーラルヒストリー―文書等と聞き取り調査―
嶋田典人(香川県立文書館)

15:40~17:40 研究実践交流会「オーラル・ヒストリーを用いた大学の教育実践」(3307教室)
 報告者     梅崎修(法政大学キャリアデザイン学部)
 コメンテイター 塚田守(椙山女学園大学)
 司会      和田悠(立教大学)
【開催趣旨】
今年度の研究実践交流会では、オーラル・ヒストリーを活用した大学教育の実践をとりあげたい。オーラル・ヒストリーを導入した大学の授業はいかに展開しているのか、学生たちはオーラル・ヒストリーを実践し、その学知にふれるなかで、どのように成長していくのか、具体的な大学の教育実践について議論することで、オーラル・ヒストリーの方法や射程を考えることを課題としたい。
 話題提供者に梅崎修氏にお願いした。梅崎氏はオーラル・ヒストリーを積極的に活用し、労務管理・労使関係、日本的雇用の歴史的実態のダイナミズムを解明する研究に従事する一方で、法政大学キャリアデザイン学部・梅崎ゼミとして「神楽坂」を舞台に「まちづくりとオーラル・ヒストリー」という観点で共同研究を試みてきた。学生たちが主体となりタウン誌も発行している。今回は梅崎ゼミでの取り組みについて報告をしていただく。
 コメンテーター(サブ報告)として、『就活女子』(ナカニシヤ出版、2013年)の編者である塚田守(ツカダマモル)氏にお願いした。リアルな女子大生の就活の実態について、女子大生の自分史を通じて肉薄した書として注目を集めている同書であるが、その前提には塚田氏の女子大生に対するケアを含むゼミづくりがあり、オーラル・ヒストリーは塚田氏(ゼミ)にとっての教育方法となっている。
 報告とコメントを受けて全体討論に移りたい。オーラル・ヒストリーを活用した教育実践の経験(地域女性史もその一つであろう)が積極的に交流されることを期待している。

18:00~20:00  懇親会(日本大学文理学部キャンパス内:カフェテリア・チェリー)

<第2日目 9月7日(日)>
9:00      受付開始  3号館
9:30~12:00 自由報告(第3分科会、第4分科会) 

○第3分科会(3308教室) 司会:橋本 みゆき(1~3報告)・山村 淑子(4~5報告)
1.統合失調症の娘を抱える両親の語り
青木秀光(立命館大学大学院、日本学術振興会特別研究員)
2.四国遍路のライフストーリー―流動化する社会と自己アイデンティティ―
後藤一樹(慶應義塾大学大学院)
3.被差別部落の人間形成と義務教育―神戸市内の夜間中学に学んだ男性の語りに焦点を当てて―
江口怜(東京大学大学院)
4.「女らしい文化」を生きる―髪を喪失した女性たちのライフストーリー―
吉村さやか(聖心女子大学大学院)
5.在韓結婚移住女性のライフストーリー―結婚移住のプロセスと意味―
具美善(一橋大学大学院)

○第4分科会(3310教室) 司会:有末 賢(1~2報告)・山本 須美子(3~5報告)
1.妄想と現実の交差点にみる女性オタクのセクシュアリティ― 一人の台湾人女性オタクのライフストーリーから―
張瑋容(御茶の水女子大学大学院)
2.マンガ家のライフストーリーに見る戦後マンガ史
池上賢(立教大学兼任講師)
3.もてなし文化の民俗学的研究―京都北野上七軒の舞妓の聞き取りを中心に―
中原逸郎(京都楓錦会)
4.1960~90年代の舞踏グループのオーラル・ヒストリー―舞踏を生み出した日々の実践―
ケイトリン・コーカー(京都大学大学院)
5.別子銅山社宅街(東平社宅)における昭和の生活史
竹原信也(奈良工業高等専門学校)

12:15~13:00  総会  (3306教室)
13:00~13:20  昼食休憩(3303教室、他) 
13:20~16:00  シンポジウム「オーラルヒストリーで編み直す放送史」(3307教室)
【企画趣旨】
 日本で放送が始まってから来年(2015年3月)で90年の節目を迎える。
日本の現代史にほぼ重なる放送の歴史的展開を辿るうえで、オーラルヒストリーの可能性が注目されるようになっている。放送史研究においては、これまで放送番組(映像・音声)のアーカイブや、関連する文書・書籍が資料として用いられてきた。しかしそれらだけで、放送の歴史的展開とその社会的、文化的意味を探ることには限界がある。 
 放送史に関わってきた多様な立場の人々の証言を収集・分析することによって、①文書資料に記録されていない事実関係を埋める、②放送番組が制作された社会的文化的背景に光を当てる、③多様な職種によって担われてきた制作現場の実相に迫る、といったことが可能になる。また、オーディエンス(受け手)研究においてもオーラルヒストリーは大きな可能性を持つ。
 本シンポジウムでは、放送史研究におけるオーラルヒストリーの可能性について、幾つかの研究事例や証言のデジタル・アーカイブ化に関する報告を踏まえながら、テレビ文化を研究する社会学者、オーラルヒストリー研究の専門家も交えて議論を深め、今後に向けての研究の方向性や課題、隣接諸分野との連携の可能性などについて考えたい。

【報告内容】
1.放送史研究における資料の現状とオーラルヒストリーの可能性
  米倉律(日本大学法学部)
2.オーラルヒストリーを用いた初期テレビドラマ研究の試み~『私は貝になりたい』(TBS,1958年)の事例を中心に~
  廣谷鏡子(NHK放送文化研究所主任研究員)
3.日本初の民間放送、新日本放送スタッフへのヒアリング
  西村秀樹(近畿大学客員教授) 

 討論者 太田省一(社会学者) 八木良広(立教大学兼任講師)
 司 会 好井裕明(日本大学)

2.自由報告要旨
○第1分科会(3308教室) 司会:鶴田 真紀(1~2報告)・赤嶺 淳(3~5報告)
※第1分科会の3~5の報告は、3つの報告を連続して行い、その後、質疑応答をまとめて30分行う形にします。この3つの報告はすべて英語で行われます。

1.聞き書きによる文化継承の過程―「聞き書き甲子園」の事例検討を通して―
Process of Cultural Succession through an Oral History Interview―A Case Study
on “Kikigaki-Koushien”
  石村華代(ISHIMURA Kayo 九州ルーテル学院大学)
本研究では、文化継承に関する新たな取り組みとして、社会教育活動である「聞き書き甲子園」に着目する。これは、高校生が海・山・川の名人に対して仕事に焦点を当てた聞き書きを行い、その成果を発表するという流れで行われる社会教育活動である。高校生と名人が関わる場を丹念に記述していくことによって、より具体的に、この活動のただ中でどのような出会いが生じているのかを考察した。その結果、親和性/異質性へのたえざる揺らぎの中で老年者から若者への文化継承が行われうることが明らかになった。また、聞き手である高校生が語り手である名人の仕事と人生に敬意を払い、そのことばに耳を澄まし、時をともに過ごすなかで、両者のあいだに祖父母的世代継承性を含んだつながりが生まれることが看て取れた。

2.ボランティアと仕事のあいだ―被災地で支援活動をした保育者たちの経験―
Between Volunteer and Profession :Experiences of Nursery Teachers Who Support
for Victims of Earthquake and Tsunami at Day Care Center
  岩崎美智子(IWASAKI Michiko 東京家政大学)
東北地方の被災地に赴き保育所で数か月~1年の間支援活動をおこなった保育者たちの語りをとおして、援助する側からみた「支援」について考察する。保育者が一定期間被災地で支援活動をすることは、ボランティア活動なのか、それとも職業活動の一環なのだろうか。ボランティア(普通の人)として活動することと職業人(専門家)として働くことの相違を軸にして、被災者と支援者との関係性、連帯を志向した支援者が支援するなかで孤立を深めていくこと、被災者と支援者の協働の可能性といった問題についても分析を試みる。

3.東北からの声
Voices from Tohoku: A 3.11 video archive from 10 different communities
  デビットH.スレイター(David H.Slater 上智大学国際教養学部)
2011年の春に始動した我々のプロジェクトについてご報告致します。このプロジェクトでは岩手・宮城・福島などの3.11で被害が大きかった地域でインタビューを実施し、そのビデオ記録を集めており、既に採集した記録は日本で最大と考えられる規模である、400時間を超えています。私たちの現段階での最終報告としては、データ採集の課題(コーディングまでの工程やビデオの効果が最大に発揮される部分のタグ付けについて)や、インタビューを実施した地域の方々を始め、どのように東京あるいは日本国内や海外で観衆の対象を広げていくかについてお話致します。
This is a report of our project, beginning in the spring of 2011, to collect video oral narratives from 3.11 affected areas from Iwate, Miyagi and Fukushima. We have now collected more than 400 hours of ethnographic interviews, maybe the most of its kind in Japan. Our report will be on the complexity of ethnographic data collection; the process of coding and tagging to maximum effect; and the politics of representation for both a local Tohoku audience, and then how to expand that audience to Tokyo and abroad.

4.オーラルヒストリーとオーラルトラディション―東日本大震災後の語り部の記録―
Oral history and oral tradition: Documenting post-3.11 kataribe storytelling
  マヤ ヴェセリッチ (Maja VESELIČ 上智大学比較文化研究所)
このプレゼンテーションでは東北の声のビデオアーカイブの中から、被災地の語り部の方々のインタビュー及び実際の語りの様子をご紹介致します。語り部の方々、また私たち研究者がそれぞれいかにして東日本大震災の「生の声」を残そうとしているか、その共通点や違いについて分析しています。
This presentation will examine the small part of the Voices from Tohoku video collection that focuses on kataribe storytellers in the disaster areas. In addition to the interviews with such individuals, the archive also includes few recordings of their performances. I will discuss the material we have gathered by reflecting on similarities and differences in the efforts of both, researchers and kataribe to preserve and share the first-hand experiences of the Great East Japan disaster and its aftermath.

5.東北からの声―福島の母親たちのアクティビズム―
Voices from Tohoku: Activism among mothers in Fukushima
  彈塚 晴香(DANZUKA Haruka 東京大学大学院)
このレポートはスレーター教授の元で行っている「東北からの声」プロジェクトの中から、特に福島のお母さんたちにスポットを当てたものです。放射能による子供の健康被害を心配して政治や教育現場に対して声を上げているお母さん達の苦悩、またコミュニティーや家族との関係の変化など、お話を聞いた中で浮かび上がってきた現状をご紹介致します。
This report will be based on the oral narrative project “Voices from Tohoku” with Professor Slater, especially focusing on mothers in Fukushima who are active in raising voices to the government and board of education for a change in policies to protect their children from the dangers of radiation. From the narratives collected from young Fukushima mothers, this report will be on the dilemmas that these mothers had to face, changing relationships between their families and community, and their struggles of being forced to make decisions out of inevitably bad choices.

○第2分科会(3310教室) 司会:宮崎 黎子(1~3報告)・滝田 祥子(4~5報告)

1.将校になる―ある「学徒兵」のライフヒストリー―
Becoming a Commissioned Officer: The Life History of a “Student-Soldier”
  渡辺祐介(WATANABE Yusuke 立命館大学大学院)
本報告では、昭和18年の「学徒出陣」に際して海軍を志願し、海軍兵科第四期予備学生に採用された「学徒兵」B氏のライフヒストリーについて述べる。海軍予備学生については既に多数の遺稿集や回顧録などが公刊されているが、配属先によって当事者の境遇には雲泥の差があった。B氏は海軍少尉任官後、横須賀海兵団に配属され、悲惨な戦闘や激しい空襲を体験することなく大船で敗戦を迎えた。将校になれたことを名誉に思っているB氏の戦争体験の語りは、懐古調ゆえに、「学徒兵」が戦時体制を支えていったミクロの社会過程を明瞭に辿ることができる。B氏のライフヒストリーから、「学徒兵」と軍隊の親和性について考察する。

2.証言映像を捉え直す―「東京大空襲証言映像マップ」を通して―
Re-understanding testimony videos: A Case of “Tokyo Air Raids Oral History Map”
  山本唯人(YAMAMOTO Tadahito 東京大空襲・戦災資料センター)
東京都江東区に所在する民立資料館、東京大空襲・戦災資料センターでは、2014年3月、c-locと呼ばれるソフトウエアを活用し、空襲体験者の証言映像をモニタ画面上の3D地図を通して視聴する、「東京大空襲証言映像マップ」という証言映像アーカイブを公開した。本報告では、このアーカイブの操作をスライド画面上で実演し、その概要を説明すると同時に、オーラル・ヒストリーの新たな視聴方法の開発が、その研究にもたらす可能性について考えたい。

3.長崎県生月島のかくれキリシタン信者のライフ・ヒストリー
A Life History of “Kakure-Kirishitan” believer in Nagasaki Prefecture, Ikitsuki Island
  小泉優莉菜(KOIZUMI Yurina 神奈川大学大学院)
1549年に伝来したキリスト教は、江戸幕府によって弾圧された。信者たちは潜伏し、その信仰を伝承した。250年にも渡り指導者のいない中で伝承された信仰は、日本の風土などと混淆し、現在では「かくれキリシタン信仰」として伝承されている。
そのような背景を持つ信仰であるため、信者は信仰については積極的に語ることをしない。発表者は数年に亘り調査を重ねることで、彼らと打ち解け、信者から信仰に関するオーラル・データを得ている。
本発表ではこの信仰を村川要一氏(89)の個人史から考察する。伝承断絶の危機にある今、氏の信仰観から、信仰の現状など、先行研究では注目されてこなかった「個」とかくれキリシタン信仰との繋がりを示す。

4.開拓が生みだすもの―戦後入植のフォークロア―
Outcomes of Settlement ― Postwar Pioneers’ Folklore
  藤井和子(FUJII Kazuko 関西学院大学大学院)
敗戦直後の日本は、食糧も仕事も住宅も不足し、それへの緊急対策の一つとして各地で戦後開拓が推し進められた。戦後開拓については、農村社会史や歴史社会学を中心に一定の研究蓄積が見られるが、本報告では、長崎県壱岐市、大村市、茨城県東茨城郡、沖縄県石垣市での現地調査にもとづき、開拓という営みを通して人びとがどのようなフォークロアを生み出したのか、という観点からの考察を行なう。開拓とは単に土地を切り拓き営農することではなく、何もなかったところに人々が創意工夫して生活を構築し続け、その中からさまざまなフォークロアを生み出してゆく(あるいは、生み出せなかった)過程であり、そこで生み出され、生きられた経験・知識・表現には、「生の芸術(art brut)」にも通ずる性格を持ったものが含まれていることを論じる。

5.アーカイブズとオーラルヒストリー―文書等と聞き取り調査―
Archives and Oral history― Documents and Hearing research
  嶋田典人(SHIMADA Norihito 香川県立文書館)
戦争体験や民俗の聞き取り調査の際、話し手の語りの中で最も聞き手にインパクトを与える場面は、現在体験できない過去、非日常である場合が多い。臨場感があり、聞き手に強く印象づける。文書等アーカイブズ(記録資料)で知りえない生の声であり、かつ動的である。オーラルヒストリーについては、報告書の所属する香川近代史研究会の取り組みを報告する。原爆被爆体験、真珠湾攻撃艦上攻撃機の搭乗員、ビルマ戦と捕虜、日中戦争、シベリア抑留など報告者も関わった聞き取りの活動を報告する。また、普段、勤務の中で取り扱う公文書や写真資料などのアーカイブズとオーラルヒストリーの関係にも言及する。

○第3分科会(3308教室) 司会:橋本 みゆき(1~3報告)・山村 淑子(4~5報告)

1.統合失調症の娘を抱える両親の語り
The Narrative of Parents Who Have a Daughter with Schizophrenia
  青木秀光(AOKI Hidemitsu 立命館大学大学院、日本学術振興会特別研究員)
本報告では、20代で統合失調症を発症した娘を抱え、数十年間という歳月を共に歩んできた彼女の父親・母親からのインタビュー調査と参与観察をもとに、彼らがどのような困難や喜びなど様々な思いを抱えつつ日々の生活をしているのか。または、どのような意味世界を生きているのかにつき考察を行う。当該解釈の際に、報告者がフィルードで直面した自身の感情(共感や違和感など)を反省的に捉えかえすことで自己をある種のフィールドワークの「道具」として用いる。そこでは、報告者と父親と母親という共同で作り上げる一回性の語りが豊かに生成されることを重視した。

2.四国遍路のライフストーリー―流動化する社会と自己アイデンティティ―
Life Stories of the Shikoku-Henro Pilgrims: Liquid Modernity and Self-identity
  後藤一樹(GOTO Kazuki 慶應義塾大学大学院)
本報告では、四国遍路を「自己のアイデンティティを再帰的に構築するいとなみ」と位置づけ、複数の歩き遍路に対する聞き取り調査をもとに、現代社会における遍路の意味を個々の遍路者のライフストーリーから明らかにする。
四国遍路は第一に、巡礼者同士が自己の人生を語り合うことによって「自己物語」を構築するプロセスである。第二に、「歩く」という身体行為をコントロールすることによる自己の再構築プロセスである。遍路においては、「歩く身体」「お経をあげる身体」が巡礼者に意識的にモニタリングされている。
後期近代社会において自由になると同時に不安定化した生活者は、様々な社会的問題を個人で解決しなければならない。その際、四国遍路は象徴的変容を伴った自己アイデンティティの再帰的構築作業として経験されていると考えられる。

3.被差別部落の人間形成と義務教育―神戸市内の夜間中学に学んだ男性の語りに焦点を当てて―
Human formation and compulsory education in Buraku: Focusing on narratives of a man graduated from junior high night school in Kobe city
  江口怜(EGUCHI Satoshi 東京大学大学院)
1940年代末、新制中学校における不就学・長期欠席問題への対策として各地に草の根的に夜間中学が開設されたが、神戸市はGHQ兵庫県軍政部の後押しによって部落改善事業の一環として丸山中学校西野分教場(後に西野分校)を開設した。本報告では、西野分校の開設された被差別部落に生まれ、1950年からそこに2年間通い、学校を中退してその地域で長く靴仕事に携わり、70代になって再び西野分校に再入学をして平仮名から学び、卒業した男性の語りに焦点を当てて、被差別部落における人間形成のありようとそこで義務教育が持った意義について考察したい。

4.「女らしい文化」を生きる―髪を喪失した女性たちのライフストーリー―
Living with “Feminine Culture”―Through Bald Women’s Life Stories―
  吉村さやか(YOSHIMURA Sayaka 聖心女子大学大学院)
本報告では、髪を喪失した女性たちの日常生活世界をライフストーリー調査によって可視化することを通して、彼女たちの抱える「曖昧な生きづらさ」と、それが生み出される背後にある社会・文化の構造をジェンダーの視点から検討することを目的とする。
これまでにも髪の喪失についての社会学的研究は少数ながらなされてきたが、その多くは男性の場合に特化しており、女性に関する研究は極めて少ない。その反面、既存研究では、髪の喪失は男性よりも女性の場合のほうが深刻であることと同時に、女性の髪の喪失についての語りづらさ/語りにくさが指摘されてもいる。本報告ではそのような点に注目しながら、これまで社会的に見えにくい存在とされてきた彼女たちのライフストーリーを読み解く。

5.在韓結婚移住女性のライフストーリー―結婚移住のプロセスと意味―
Life Stories of Female Marriage Migrants Living in South Korea : The Process and Significance of Cross-Border Marriage
  具美善(KU Misun 一橋大学大学院)
本研究は、韓国の農村地域に居住するアジア出身結婚移住女性3人のライフストーリーから、彼女たちがいかにして国境を超えたのか、自ら結婚移住をどのように意味づけているかについて考察したものである。韓国では、1990年代後半以降「嫁不足」に悩む農村部を中心に韓国人男性と途上国出身女性との国際結婚が広がり、社会的な問題として注目されるようになった。しかし、結婚移住女性は、もっぱら 「人身売買の被害者」、「判断能力不十分者」として見られ、彼女たちの多様な顔や主体的な行為は見落とされてきた。このような問題意識から本研究では、彼女たちが本人を取り巻く構造や環境を理解し、自分なりに解釈し、その解釈の上で結婚移住に関わったことを明らかにする。

○第4分科会(3310教室) 司会:有末 賢(1~2報告)・山本 須美子(3~5報告)

1.妄想と現実の交差点にみる女性オタクのセクシュアリティ ―一人の台湾人女性オタクのライフストーリーから―
Analyzing sexuality of female “Otaku” from the intersection of fantasy and reality: A case study of a Taiwanese female Otaku’s life story
  張瑋容(CHANG Weijung お茶の水女子大学大学院)
マンガ・アニメ・ゲームをめぐる「オタク文化」に関する議論において、こうした「二次元」作品を構築する諸要素に含まれるセクシュアルな記号、及びそれらに対するオタクの欲望が重要な位置を占めている。作品と現実世界を行き来する儀式としてのオタク「妄想」には様々な形やジェンダー差異などもあるが、本稿では一人の台湾人女性オタクがオタクとして生きてきたライフストーリーを取り上げ、彼女はいかに二次元作品の諸記号をセクシュアルに妄想することを通じて、女性オタクとしてのセクシュアリティを構築してきたかを解明し、さらに台湾人女性オタクという彼女の立場に着目し、妄想と現実の交差にみるセクシュアリティの構築を台湾における日本オタク文化の受容に位置づけて分析する可能性の提示を試みたい。

2.マンガ家のライフストーリーに見る戦後マンガ史
The History of Manga after World War II Seen in the Life-Story of A Manga Artist
  池上賢(IKEGAMI Satoru 立教大学兼任講師)
筆者は、これまでの研究でマンガに関する経験が、人々にとってアイデンティティのリソースになることを明らかにした。この知見からは、送り手であるマンガ家について、新たな論点が析出された。
第1に人々のアイデンティティのリソースとなるメディアにおける情報(特に物語)を送り手がどのように制作しているのか。第2に、制作過程において、送り手が関与している社会的・歴史的文脈がどのようなものであるか。第3に、マンガ家がどのようなアイデンティティをどのように構成してきたのか。以上の3点である。
 本報告では、上記の問いに答えるため、少年マンガで人気を博したのち、実用マンガや小説などにおいても活躍してきたマンガ家S氏のライフストーリーを分析する。

3.もてなし文化の民俗学的研究―京都北野上七軒の舞妓の聞き取りを中心に―
A study about the culture of hospitality from the stand point of folklore-focusing ’Maiko’ of Kamishitiken, KItano.Kyoto
  中原逸郎(NAKAHARA Itsuro 京都楓錦会)
京都は西暦794年以来千年の長きに亘って都が置かれた土地柄であり、山紫水明の自然に恵まれ様々な文化を産んできた。京都の文化は独特な意匠や作法を含むものであった。それらの文物は会所における人々の交流に重要な役割を果たし幕末まで続いた。つまり京都の民俗は長い歴史に培われた文化的蓄積の上に立っている。民俗学は「しきたり、いいつたえ」という民俗事象を資料として研究する分野」である。しかし、しきたりを重んじる場と評されているにも関わらず、京都の花街は民俗学分野において今まで取り上げられることが少なかった。近年おもてなし文化に対する関心が国の内外で高まる中、もてなしを生業とする花街はもてなし文化に少なからず影響を与えてきたのではないかというのが著者の主張である。本発表では、民俗学分野からのもてなし文化の再認識のために、まずは花街の座敷の接客の実態を確認するため、オーラルヒストリー的アプローチを試みる。

4.1960~90年代の舞踏グループのオーラル・ヒストリー―舞踏を生み出した日々の実践―
An Oral History of Butoh Groups from the 1960’s-90’s: The Daily Practice of Butoh
  ケイトリン・コーカー(Caitlin Coker 京都大学大学院)
本発表は舞踏グループの営みに関するオーラル・ヒストリーを提示・分析することで、いままで十分に考察されてこなかった舞踏の日々の実践を明らかにしたい。舞踏は日本で60年代前半に始まった前衛的身体表現である。制作・上演するため、ほとんどの舞踏家が稽古場で共同生活をし、キャバレーへの出演によって活動のための資金を稼いでいた。本発表は、グループの出現、そして時代と共に流動し変容していく様子、90年代の衰退に至るまでの過程を説明し、グループ内部の多様な視点から示す。個々の舞踏家の視点から、それらのグループを動的かつ多面的性格を持ったものとして考察する。

5.別子銅山社宅街(東平社宅)における昭和の生活史
Life in a copper-mining town“Tonaru”in Bessi Area, Niihama, Japan
  竹原信也(TAKEHARA Shinya 奈良工業高等専門学校)
明治以降、全国各地に“近代的”な社宅街が形成されてきた。そこには企業の合理性の精神、労務管理、福利厚生といった旧来の鉱山集落とは明らかに異なる思想の影響がみられる。近年、社宅街の形成と変遷を明らかにする建築史学的アプローチからの研究が積極的に進められ、その先進性が再評価されるに至っている。その一方で、全国各地で鉱山や炭鉱は閉山しており、社宅街も取り壊されつつある。また、社宅街で生活していた人々も高齢化が進んでいる。本報告では、愛媛県新居浜市の別子銅山(1691-1973)の山間に作られた社宅街(東平社宅)の生活文化を、生活経験者の語りから紹介していく。

3.会場案内
【交通手段】
★日本大学文理学部へのアクセスの詳細は、以下のサイトでご確認いただけます。
http://www.chs.nihon-u.ac.jp/access/
【キャンパスマップ】
★キャンパスマップの詳細は、以下のサイトでご確認いただけます。
http://www.chs.nihon-u.ac.jp/wpchs/swf/map.html

Ⅱ.ISA世界社会学会(RC38)報告
  2014年7月13日~19日に横浜パシフィコにおいて、XⅧ ISA WORLD CONGRESS OF SOCIOLOGYが開催されました。6000人以上が参加し、盛況のうちに終了しましたが、RC38 Biography and Societyの部会においては、Understanding Social Problems through Narratives By Insiders. Part Ⅰ,Ⅱが7月16日に開催され、セッション・オーガナイザーとして、小林多寿子(一橋大学)、塚田守(椙山女学院大学)が参加し、報告者としても、橋本みゆき、湯川やよい、山田富秋、青木秀光、根本雅也などが報告し、活発な議論が展開されました。

Ⅲ.理事会報告(詳細は略)
1.第六期臨時理事会議事録
日時:2013年11月24日(日)13:00~15:00
場所:立教大学池袋キャンパス12号館第3会議室
出席:有末、岩崎、小倉、川又、小林、塚田、宮崎、八木、和田、橋本(文責)
欠席(委任):赤嶺、川村、櫻井、田中、好井
議事録記載者確認(輪番) 今回は橋本理事が担当。
 1.会長欠席の連絡
 2.学会誌の編集について
 3.会計より
 4.広報より
 5.事務局より

2.第六期第2回理事会議事録
日時:2014年1月25日(土)13:00~15:00
場所:立教大学池袋キャンパス18号館(ロイドホール)5階第1会議室
参加:好井、川又、岩崎、小倉、宮崎、橋本、八木(文責)
欠席(委任有):塚田、小林、田中、桜井、赤嶺、有末、川村、和田  
議事録記載者確認(輪番) 今回は八木理事が担当。
 1.雑誌編集上の問題(継続審議)
 2.学会大会について
 3.編集委員会報告
 4.会計報告
 5.広報報告
 6.事務局報告
 7.その他

3.第六期第3回理事会 議事録
日時:2014年6月8日(日)13:00~16:10
場所:立教大学池袋キャンパス 12号館 地下1階 第4会議室
参加:好井、赤嶺、有末、岩崎、川村、田中、塚田、橋本、宮崎、八木、和田、川又
欠席(委任):小倉、小林、桜井
議事録記載者確認(輪番) 今回は和田理事が担当。
 1.学会大会について
 2.電子図書館事業説明会に関して
 3.日本オーラル・ヒストリー研究10号について
 4.会計報告
 5.広報報告
 6.事務局報告

Ⅳ.お知らせ
1.会員異動(2013年12月から2014年7月まで)(詳細は略)
(1)新入会員
(2)住所変更・所属変更等
(3)退会
※連絡先(住所・電話番号・E-mail アドレス)を変更された場合は、できるだけ速やかに事務局までご連絡ください。
(川又 俊則)

2.2014年度(2014.4.1~2015.3.31)会費納入のお願い
いつも学会運営へのご協力ありがとうございます。
本学会は会員のみなさまの会費で成り立っています。今年度の会費が未納の方におかれましては、何とぞご入金のほどよろしくお願いいたします。9月のJOHA12大会時にスムーズに受付を済ませるためにも、なるべく大会前に納入くださいますようお願いいたします。

■年会費
一般会員:5000 円、学生他会員:3000 円
*年会費には学会誌代が含まれています。

■ゆうちょ銀行からの振込先
口座名:日本オーラル・ヒストリー学会
口座番号:00150-6-353335
*払込取扱票(ゆうちょ銀行にある青色の振込用紙)の通信欄には住所・氏名を忘れずにご記入ください。
*従来の記号・番号は変わりありません。

■ゆうちょ銀行以外の金融機関から振り込む際の口座情報
銀行名:ゆうちょ銀行
金融機関コード:9900
店番:019
店名(カナ):〇一九店(ゼロイチキュウ店)
預金種目:当座
口座番号:0353335
カナ氏名:(受取人名):ニホンオーラルヒストリーガツカイ

郵便払込・口座振込の控えで領収書に代えさせていただきます。控えは必ず保管してください。
学会会計全般について、またご自身の入金状況を確認したい場合は、
会計担当の八木良広(電子メール: yy.joha[at]gmail.com)へお問い合わせください。
(八木 良広)