JOHAニュースレター第25号

JOHAニュースレター第25号
2013年12月15日発行

日本オーラル・ヒストリー学会第11回(十周年記念)大会 報告特集
JOHA11大会は、7月27~28日に立教大学観光学部(埼玉県新座キャンパス)で開催されました。盛夏の中、4つの分科会、大会記念テーマセッション、学会設立10周年記念講演それぞれにおいて、熱い討議が繰り広げられました。
会員のみなさまに次回第12回大会の開催についてお知らせします。2014年9月6日(土)・7日(日)、会場は日本大学文理学部(東京都世田谷区)3号館です。プログラムの詳細は未定ですが、自由報告の分科会も予定していますので、メーリングリストや学会HP上での告知・募集をどうぞお見逃しなく、ふるってご応募ください。

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Ⅰ.日本オーラル・ヒストリー学会第11回年次(10周年記念)大会

1.大会を終えて
 JOHA11(10周年記念)大会は、2013年7月27日~28日に立教大学新座キャンパスにて行われました。今大会は関東で行うことは決まっていましたが、なかなか引き受け校が見つからないまま、最終的には、舛谷鋭会員のご厚意とご尽力のおかげで、無事、開催にこぎつけることができました。この場を借りて、舛谷鋭先生と大会運営をサポートしていただいた立教大学観光学部の学生のみなさんに感謝したいと思います。
 本記念大会は例年と違って趣向を凝らし、二日間とも午前・午後開催としました。そして記念テーマセッションをフロア参加型のワークショップ形式で行い、大会二日目の記念講演には、高名なアーサーフランク博士を迎えることができました。その結果、延べ150人以上の参加者を数え、近年まれに見る盛会となりました。大会初日の懇親会参加者も予想以上に多く、黒字になったほか、非会員の大会参加者の中から学会入会希望者も多く出ました。会員のみなさまの参加とご協力に感謝します。
(JOHA第五期事務局長 山田 富秋)

2.第1分科会
 第1分科会では3つの報告がなされた。第一報告の竹原信也(奈良工業高等専門学校)「技術者教育におけるオーラル・ヒストリーの可能性 事例報告:授業の一環として学生が青函連絡船:羊蹄丸のオーラル・ヒストリーに取り組んだ事例」では新居浜工業高等専門学校専攻科で実施されたシップリサイクル研究について語られた。報告者は学生と共同して青函連絡船「羊蹄丸」の元船長等の船底ツアーを撮影・録音した。撮影・録音データから口述記録を作成し動画を編集しDVDを作成した。これは貴重な技術史・労働史の作成であり、報告では当時の労働者が船底におり実際に仕事について語る映像などが紹介され、技術者教育におけるオーラル・ヒストリーを学生が学ぶことの意義と課題が語られた。第二報告の川﨑瑞穂(国立音楽大学大学院)「岐阜県飛騨市「数河獅子」のオーラル・ヒストリー」では、岐阜県飛騨市古川町数河地域の二人立獅子舞「数河獅子」という伝統芸能をめぐり、演目「天狗獅子」に天狗を殺害するモティーフが存在することに注目し、その供犠的所作が江戸期の当地の領土争いにおける「創始的暴力」と共鳴している可能性について現地で収集したオーラル・データをより仔細に検討し、ルネ・ジラールの理論を応用した仮説的考察があった。第三報告の嶋田典人(香川県文書館)「オーラル・ヒストリーとアーカイブズ-記憶と証拠資料の事例から」では、かつて四国にあった俘虜収容所のドイツ人と地元との交流を事例とし、アーカイブス(記録資料)と当時の記憶をめぐるオーラル・ヒストリーとの関連について語られた。聞き取り調査では、話し手の語りと聞き手のもつ固定概念や歴史上の一般論との聞に矛盾を生じる場合がある。その矛盾を考えるうえで、当時の記憶の語りと記録資料の信頼性がともに吟味検討の対象となる過程が論じられた。また証拠資料を補完するための聞き取りにおいて、話し手が祖父母世代の記憶を語る世代間を越えた間接的伝聞の信用(信頼)性についても事例を挙げて検討された。教育、芸能文化、出来事の記憶とアーカイブズの関連とそれぞれ独立した興味深い報告であったがフロアからの活発な質問は、やはりオーラルな語りから技術を実践する当事者の論理、芸能文化を伝承する人びとの論理、出来事を体験し現場を生きてきた人びとの論理それ自体をいかにして取り出せるのかに集中した。各報告者の今後の研究の展開に期待したい。
(好井 裕明)

3.第2分科会
 第2分科会では、以下の3本の報告が行われた(敬称略)。(1)加藤敦也「父親の家庭回帰の難しさについて:不登校の親の会に参加する父親の語りを中心に」、(2)青木秀光「統合失調症の娘を抱える父親のライフストーリー」、(3)吹原豊「移住労働者の語りからみた言語習得:韓国のあるインドネシア人コミュニティにおける事例」。
 加藤さんによる第一報告は、不登校の親の会に参加する父親およびその子どもへのインタビューに基づき、子どもの不登校を経験した際に父親が子どもとの関係でどんなことを悩むかをめぐる語りに焦点を当てたものであった。青木さんの第二報告は、統合失調症の当事者を娘に抱える父親一名からのインタビューを、詳細に読み解こうとするものであった。最後の吹原さんの報告は、ソウル郊外京畿道にある工業都市安山(アンサン)市のキリスト教徒インドネシア人コミュニティをフィールドに、インドネシア人労働者の語りを通じて、その韓国語習得過程を左右する要因を明らかにしようとするものであった。
 それぞれに、綿密なフィールド調査を行う中で得られた貴重な語りのデータをもとにした研究であり、非常に聞きごたえのあるものだった。質疑応答においてもフロアから活発な質問が寄せられ、時間が足りないほどであった。しかしその中で気になったのが、「これらの報告を敢えて、このオーラル・ヒストリー学会で行う意義がどこにあるのだろうか」という問題提起であった。たしかにたとえば加藤報告は教育社会学系の学会、青木報告は医療や福祉社会学系のそれ、吹原報告は人類学関係もしくは地域研究系の学会で行われても、全く違和感のない内容であった。これは一面では、喜ぶべきことである。つまり、インタビューやライフストーリーを主軸とする研究が、教育、医療・福祉、地域研究など多様な研究分野において浸透し、そうした方法論が広く認知されつつあるということだからだ。
 しかしこれは半面、アイデンティティの拡散という悩ましい事態も引き起こす。ライフストーリーやオーラル・ヒストリーが通常科学化するにつれて、もともとそれらの方法論が持っていた固有性がいつの間にか曖昧になっていく。ただ単にデータ集めのツールとして、インタビューなり聞き取りなりを用いただけの研究と、オーラル・ヒストリー(ライフストーリー)研究との間にはいかなる違いがあるのか。われわれが日々、忘却しかけている問いを喚起してくれる場としても、この第2分科会は大変有益な場であった。
(倉石 一郎)

4.第3分科会
第3分科会では、4件の研究報告が行われた。報告の数は多かったが、約30名程度の参加者のあいだで、活発に議論を交わすことができた。
第1報告の山口裕子(一橋大学・特別研究員)『移動・帰還・「再統合」:インドネシア東南スラウェシ州の元研修生の経験の語りから』は,日本への元研修生19名の送り出しから帰還(再統合)までのプロセスを個々人の経験の語りとして考察したものである。山口氏は社会人類学観点から、「人の移動」のマイクロ/マクロスコピックな研究の接合に関心をもってきた。報告者に与えられた短い持ち時間の中で、東南アジアからの研修生の制度的背景や概況についての説明に続いて、2回のインドネシアでの短期フィールドワークでの聞き取りの成果が紹介された。これまでの「従順で忍耐強い研修生」という送り出しの訓練時に創出された(もともと忍耐と根性を身につけたインドネシア人が研修生として採用される)紋切り型の語りを修正し、「創造的個人」としての帰還移民 — グローバルな経済格差を背景としながらも、 制度の意志なき犠牲者ではなく、研修制度を人生の選択肢の一つとしてとらえ、移民先・帰還後の社会でアイデンティティの揺らぎを経験しつつ、折り合いを付けながら活路を見出す —の姿が語りの中で指し示された。質疑応答では、インドネシア現地での「エクスケンシュウセイ」の語りを、日本での研修生受け入れ先の雇用主の語りと対比させることにより、さらに興味深い研究が出来るのではないかという指摘があった。
第2報告の藤井和子(関西学院大学社会学研究科博士後期課程)『女たちの月明会 — 植民地女学校出身者のネットワークと人生 —』は、植民地期の朝鮮・群山出身で、戦後、日本に引き揚げた人びとの同郷会「月明会」が、女学校出身者たちの手紙によるネットワークがきっかけとなり形成されたことを明らかにするものである。藤井氏は、群山大学の日本語学科教員をしていた経験を持ち、日本式家屋の残る群山市に暮らす中で、「月明会」の存在にたどり着いたという。引き揚げ後に日本で経験した苦しい生活の中で、朝鮮での「ふるさと」を取戻すことは、「自分を取戻す」作業であり、群山時代の学歴を誇りに持ち女学校アイデンティティが人生の支えになっていたことが指摘された。会場からは、多数の質問が提起された。出身階層と引き揚げの時期の問題や、帰国後にすべての財産を失い、月明会の場で語られなかった生活の苦しさについても触れる必要があったことが会場から指摘された。
第3報告の鄭京姫(早稲田大学日本語教育研究センター)『「普通の人として生きる」ことの意味 — 海外養子として海を渡ったある日本語学習者の語りから —』は、デンマークで生育したある一人の韓国人養子のアイデンティティの葛藤の問題を日本語学習者の「日本語人生」と関連づけて分析したもの。初級を終えたばかりの日本語学習者が日本語でライフストーリーインタビューを受けることによって浮き彫りにされたのは、母語である韓国語や日常言語であるデンマーク語ではなく、日本語という第3の言葉を話すことそのものがある一定の言語に特定の意味を与えるのではない<普通の人>になるための必要なステップであったと言うことだ。言葉を通じて地球市民になることが、たどたどしい日本語の語りの中から抽出されたという発見は感動的ですらあった。
第4報告の山田真美(お茶の水女子大学大学院)『「表現の自由」対「人権」 — ハンセン病を患った元日本兵捕虜をめぐる最近の事例』は、昨年の研究報告の続きで大変興味深かった。1944年にオーストラリアのカウラ戦争捕虜収容所で起きた大規模な日本兵捕虜の集団自決的暴動に関するオーラルヒストリー・インタビューから生み出された卒業論文、ノンフィクション書籍、芝居台本『カウラの班長会議』の記述がインタビューされた当事者のプライバシーや立場を著しく傷つけ、歴史的体験についてインタビュイーが心を閉ざしてしまった事例が報告され、インタビューの倫理の問題とオーラルヒストリーのパブリックな文化財としての重要性が提起された。
(滝田 祥子)

5.第4分科会
第4分科会では、戦後教育史と宗教史、戦争体験の歴史に関する4件の研究報告が行われた。2日目の午前中という時間帯であったにも関わらず多くの方が参加して下さり、質疑応答や議論が制限時間いっぱいまで盛んに行われた。
第1報告の金馬国晴氏(横浜国立大学)「元教師インタビューによる戦後初期コア・カリキュラムの再把握」は、戦後初期(1950年代前半)の日本において旧文科省の学習指導要領が決定的な影響力を持たず、現場の教師が同僚と共同でカリキュラムを構成し実践していたということ(戦後新教育)を、そのカリキュラム活動に実際に関わった元教師(約40名以上)へのインタビューから捉えていこうというものであった。質疑応答では、その戦後新教育を生徒として受けていた方(当事者!)からの発言があり、教える側だけでなく教えられる側の経験も盛り込むことでこのカリキュラムがより立体的に捉えられることの可能性や語りそのものを明示することの必要性が示唆された。
第2報告の小泉優莉菜氏(神奈川大学大学院)「長崎県外海地域のかくれキリシタン-信者が語る信仰と非信者の語る信仰-」は、長崎県の外海地域に暮らすかくれキリシタンで現在も信仰を続けている信者と元信者それぞれへのインタビューを通して、かくれキリシタンの信仰の形態と信者としての生活実態を明らかにしようというものであった。信仰の象徴である「おらしょ」の伝承方法やその時期、信仰行事、かくれキリシタンであることにまつわる意識などが具体的なトピックとして報告され、質疑応答では主にそれらの内容の詳細をもとめるやりとりが交わされた。全体数が少なく部外者に語りたがらない信者への聞き取りは非常に有意義だという指摘や研究成果のアウトプットを期待する声もあった。
第3報告の木村豊氏(慶應義塾大学大学院)「東京大空襲被災者のライフヒストリーと死者に対する罪意識」は、東京大空襲の被災者の死者にまつわる語りを、社会学的な自己物語論や社会的記憶論、R.J.リフトンの原爆死没者に対する罪意識論から捉えていくというものであった。木村氏の報告は、2人の被災者を対象に、彼/女らの語りの構成のされ方に着目しそれを理論的に読み解くことを意図した意欲的なものであったが、質疑応答では主にインタビューに基づいたその対象者の豊かな語りを理論的モデルにあてはめることをめぐっての活発な応酬が行われた。オーラルデータを扱う者に限らず質的研究を行うすべての研究者にとって刺激となるやりとりであった。
第4報告の根本雅也氏(一橋大学)「アメリカに住む原爆被爆者のオーラル・ヒストリー」は、2人の在米被爆者を取り上げ、原爆投下した米国に対する認識や戦前から戦後、そして現在に至るまでの生活経験にまつわる語りの提示を通して、彼らの生活史を捉えていこうというものであった。渡米の時期や被爆体験、ライフコース上のさまざまな経験、そして日米両国に対する認識とその変化に関して2人の被爆者の違いが非常に際立った報告であった。主に根本氏が対象としている他の被爆者の生活史や在米被爆者全般の状況をめぐって質疑応答が行われ、調査それ自体を評価する声や調査の継続をもとめる意見もあった。
(八木 良広)

6.大会記念テーマセッション
車座の語り合いの中から
―「起点」の更新に向けて

 今年度のテーマセッション「JOHA10年 いまオーラル・ヒストリーを問いなおす―ヒストリーとストーリーのはざまで」は、第五期研究活動委員会の企画の下に開催してきた、JOHA10名古屋大会から始まり3回にわたる研究集会の最終回であると共に、JOHA10周年以降の課題を展望する、学会の節目となるものだった。
 前2回の研究集会では、オーラルヒストリーの歴史的源流を地域女性史の歩みから、次いで、オーラルヒストリーは社会のどこで生きられているのかを、浦安市郷土博物館の実践から学び、検討した。それをふまえた、本セッションの眼目は、では、大学を拠点として営まれる専門的「学知」としてのオーラルヒストリーは、こうした社会からの動きをどのように受けとめ、また、社会に対して何をなしうるのか―この一点を問うことにあったと言ってよい。
 この問題意識から、報告者は、近年、引きこもり研究の成果を著作として刊行され、「ライフストーリー」という方法論の持つ意味を問い直す作業を展開してこられた社会学の石川良子さん、そして、関東大震災の「聞き取り調査の聞き取り」という実践から、当事者が不在となったあと、聞き取られたこと・聞き取ることの意味は何であり得るのかを問うた歴史学の小薗崇明さんのおふたりに、研究成果とそこから引き出される方法的課題について報告して頂いた。
 コメンテーターは、「きく」という実践に立脚した学問方法を彫琢してこられた、社会学の桜井厚さん、歴史学の大門正克さんのおふたりにお願いした。
 桜井さんは、1970年代、廃学前夜の東京教育大学中野卓ゼミにおける調査実習のエピソードから語り起こし、インタビューの場における聞き手と語り手の関係を問うこと、既成の権力や社会構造との対峙というモティーフが、『インタビューの社会学』に至る「ライフストーリー」というコンセプトの根底にあったことが語られた。
 大門さんは、「きく」という行為の内容を、「ask(知りたいと思うことを尋ねる)」と「listen(声に耳を傾ける)」に分解した上で、学問方法としてのオーラルヒストリーの根拠は、「listen」という行為の持つ独自な可能性を押し広げていくことにあること、その上で、個人の語りから歴史の「全体性」を問い直し、再構成していくことに、オーラルヒストリーの意義を求められた。
 このように、JOHAというムーヴメントに至る、ひとつの起点となった「1970年代」という時代、および、その問題状況の一端が召喚されると共に、認識の社会構築性という前提を通過した上で、なお、わたしたちは、「社会」や歴史の「全体性」と「語り」の関係をどのように紡ぎ直していけるのかという問いが、本テーマセッションを通して提示されたといえるだろう。
 報告者のおふたりからの報告は、こうした問いを引き継ぐと共に、「語り」と「社会」、「語り」と「歴史」の現在的状況を提示し、「ライフストーリー以降(継承の意味を含めた)」を展望する新たな起点の風景を語って頂けたのではないかと考えている。
 テーマセッションは、おふたりの報告とコメントのあと、すべての参加者が車座となり、およそ1時間半をとって「語り合う」時間を持った。こうして、わたしたちの言葉は一度地べたに戻り、「問い」の更新に向けた新たな歩みを始めたのである。
 テーマセッションの内容は、学会誌の次号に盛り込まれる予定となっている。詳しくはそちらを参照して頂きたい。
(第五期研究活動委員 山本唯人)

7.記念講演
「語りがたきを語る」
アーサー・フランク教授(カナダ・カルガリー大学、『傷ついた物語の語り手』の著者)

昨年のJOHA第10回大会では「語りから『いのち』について考える―─聞き難いものを聞き、語り、書く」と題するシンポジウムを行った。これを展開するかたちで、学会創設10周年を記念する本大会では、病いの語りに関する研究の第一人者であるアーサー・フランク教授を招聘し「語りがたきを語る」に関連したテーマで記念講演をしていただいた。フランク教授は、1991年にご自身の癌の闘病体験に基づいたAt The Will of the Body(『からだの知恵に聴く―─人間尊重の医療を求めて』)、1995年に、病いの体験を社会学的に研究したThe Wounded Storyteller((『傷ついた物語の語り手』)を公刊し、日本でも知られるようになった。また2010年には、Letting Stories Breathe: A Socio-narratology(『社会物語学』(仮訳))を出版し、語りの社会学を理論的に展開している。
記念講演会では、「ナラティヴの真実と、複数の説明のジレンマ―社会物語学のオーラル・ヒストリーへの関わりについての所見」(Narrative Truth and the Dilemma of Multiple Accounts: Remarks on the Relevance of Socio-narratology to Oral History)というタイトルで、「病いの語り」という限られたテーマを超えた理論的枠組みを話された。まず、フランク教授は、ご自身の研究歴について、影響を受けた思想家について言及され、レヴィストロースの構造主義やアルフレッド・シュッツなどの現象社会学に触れたうえで、ブルデューの「ハビトゥス」(habitus)に注目して議論した。その後、その思想的背景を踏まえて、ご自身が考案する「社会物語学」(Socio-narratology)の理論的枠組みについて議論された。「社会物語学」の根源的な問いは、「物語の語り手はなぜそのように物語を語る必要があったのか」であるが、誰にとっても物語を語る仕方は選ぶことができない選択の枠であるので、それを補足するためにすぐに加えられなければならない問い、「その物語は語られるためにその語り手をどのように用いているか」が必要であると展開した。そして、「社会物語学」の目的は、人々に、自らの人生についてもっとも巧みな物語の語り手になることを教えることである、と講演を締めくくった。
講演後、質疑応答が30分以上続き盛況な記念講演会となった。なお、この講演の全文(日本語訳ヴァージョン)と質疑応答の要約については、『日本オーラル・ヒストリー研究』第10号の特集1として掲載される予定である。記念大会に参加できなかった会員の皆さんにはご高覧いただければと思う。
(JOHA第五期会長 塚田守)

Ⅱ.総会報告

2013年度総会(第10回総会)
日時:2013年7月28日(日)12:15~13:00
場所:立教大学新座キャンパス N623教室
会長挨拶、議長選出(廣谷鏡子会員)の後、以下の議案が諮られた。

第1号議案 2012年度事業報告(2012.9.1~2013.8.31)
※事業年度についての確認
 昨年度から会計年度が4月1日開始翌3月31日締めに変更されたが、事業年度は従来通り、9月1日開始翌8月31日締めのままであることを確認する。昨年総会に提案され承認された事業報告の年度が誤って会計年度と同じ年度に設定されていたので、ここで訂正して承認をお願いしたい。
1.会員数の現状 新規入会者と退会者
 この年度には新規入会者は13名あった。内訳は一般6名、学生他、7名である。学会大会での発表が目的で新入会する方が多かった。また、会則によれば2年間学会費未納者は退会と規定されているが、09年度を最後に納入した会員で、自分が未納になっていることを知らなかったケースがあったので、09年度の該当者11名については、会費督促を行った。退会申請者はいないが、学会費未納による自動退会者は56人である。その結果、現在の会員は245名である。
2.第10回大会の実施と第11回大会開催 第10回大会は2012年9月8~9日に椙山女学園大学で開催した。自由報告は4つの分科会に分かれ、12本の報告があった。10回大会記念として「日本のオーラル・ヒストリーの源流をたどる――地域女性史の歩みから」というテーマセッションを開催し、シンポジウムとして「語りから『いのち』について考える:聞き難いものを聞き、語り、書く」を開催した。
 第11回大会については東京近辺で開催という方針が総会で承認されたが、その後の交渉の結果、開催時期を7月末に移動して、舛谷鋭会員のお世話で立教大学新座キャンパスにて開催できることになった。
3.学会誌8号の発行と9号の編集・発行について 2012年9月に学会誌第8号を発行し、第10回大会時に会費納入済会員に配布した。次号の9号からは、昨年度の総会議決に従って、学会がインターブックス社から300部を買い取り、インターブックス社が出版元・販売元になることが契約された。これによって出版費用を恒常的に格安に抑えることができる。
 9号は学会10年の歩みの特集号として編集は完了し、例年通り8月中に校正も終了する予定だが、2013年度の学会が7月開催のため、会員への配付は学会開催時の手渡しではなく、全員へ配送することになる。
4.ワークショップの開催 2013年5月19日に東京、大東文化会館にて「歴史を書き綴る住民たち-地域にとってのオーラル・ヒストリー/オーラル・ヒストリーにとっての地域」というテーマでワークショップを開催した。
5.ニュースレターの発行 ニユースレターはJOHA10のプログラム案内からJOHA11の間に22号~24号を発行した。配付は、会員メーリングリストを基本と し、15通と数は少ないが非メール会員には郵送した。
6.ウェブサイトの充実 カリテス社に依頼した新しいウェブサイトを本格的に稼働させているが、運営管理は実質的に学会事務局と広報担当理事に移った。
7.会員相互の交流の促進 会員MLを通じた会員相互の情報発信が適宜なされている。
8.その他 理事選挙 会計年度の変更に伴い2013年3月末に選挙権・被選挙権の確認を行い、4月に第6期理事選挙を行った。

第2号議案 2012年度決算報告
2012会計年度(2012.4.1~2013.3.31)決算報告資料に基づき報告され、了承された。

第3号議案 2012年度会計監査報告
有末賢監事と野本京子監事より「会計帳簿、預貯金通帳、関係書類一切につき監査しましたところ、正確で適切であることを認めましたので、ここに報告いたします」と報告があり、了承された。

第4号議案 2013年度予算案
 2013会計年度(2013.4.1~2014.3.31)の予算案資料に基づき提案され、了承された。

第5号議案 2013年度事業案 (2013.9.1-2014.8.31)
1.会員の拡大と維持 年次大会やワークショップなどの実施を通じ、またこれらの情報を広報することによって、本学会の周知に努め、引き続き会員数の拡大を目指す。また、会員の維持と会費収入確保のため、大会後年内を目途に郵送による入金状況確認と会費納入の督促を行う。
2.第11回大会の実施と第12回大会の準備
 第11回大会を2013年7月27~28日の二日間にわたって立教大学新座キャンパスにおいて開催する。来年度の第12回大会は、日本大学文理学部(世田谷区桜上水)にて開催する。開催時期は検討中だが、7月中旬開催の世界社会学会横浜大会とぶつからないようにする。
3.学会誌第10号の発行 学会誌第10号は、第6期理事会の新編集委員会によって、JOHA11のテーマセッション内容と自由投稿をもとにして編集する方針である。
4.研究会・ワークショップの開催 第6期理事会の新研究活動委員会によって、これまでのテーマを継承しながら、新しい試みも行っていく予定である。
5.ニュースレターの発行 JOHA11終了後に、大会内容についての報告と新理事会の紹介を中心にニュースレター25号を発行する予定である。
6.ウェブ情報の充実と改善 カリテス社に移管した学会ホームページをさらに見やすく整備するとともに、実質的に学会が運営しているため、その管理費について交渉する予定である。
7.会員相互の交流促進 学会HPの活用や学会MLを通したニュースレター配信を通じて、会員相互の交流を促進する。また、会員の出版、活動情報についても学会誌での書評等を通じて積極的に共有する。
8.海外のオーラル・ヒストリー団体との交流 国際交流担当理事を中心に、海外のオーラル・ヒストリー団体との交流を促進し、会員に情報提供を行う。
2014年は国際社会学会が横浜で開催されるので、そこのJOHAとして報告する予定である。JOHAのMLにエントリーに必要な情報を早急に流す。

第6号議案 理事選挙規程の改正
 2012年度から会計年度を4月1日開始~翌年3月31日締めに変更したため、会員の選挙権・被選挙権の確認の時期に関する規程を変更する必要がある。本来であれば、今年4月の選挙実施前に総会で変更しておくべきであったが、間に合わなかったため、今回の総会にて規程の一部の改正について諮り、事後承諾としていただきたい。
提案内容
 現行規程3条の「4月末日までに」を「3月末日までに」に変更する。
※現行規程では2条の理事任期満了の2ヶ月前までの選挙実施について、かなり時間的に余裕をとって4月末日としていたが、会計年度に即して3月末日までの会費納入を確認できれば、7月から9月開催までの学会大会の2ヶ月前に間に合うように選挙を実施できるため。

※現行規程 
日本オーラル・ヒストリー学会の理事選挙規程を以下の通りに定める。
1.理事会の構成
 日本オーラル・ヒストリー学会の理事会は、会員による投票で選出される8名と、投票によって選出された理事による推薦選出者7名以内の15名以内で構成され、選挙年度の総会において承認を得るものとする。
2.選挙の時期
 理事の任期満了の2ヶ月前までに会員による理事選挙を実施する。
3.有権者
 4月末日までに当該年度会費納入済みの会員を選挙権者、重任理事(連続して2期4年務めた理事)を除く当該年度会費納入済みの会員を被選挙権者とする。
4.選挙方法
 有権者は、送付される会員名簿兼投票用紙を用いて、その中から3名を選考して記入するものとする。
5.選挙管理委員会
 選挙管理委員会は事務局長および事務局長が指名する正会員2名で構成される。
6.開票および当選者の招集
 選挙管理委員会は投票締切期日を待って開票作業を行い、開票の結果上位8名の当選者を招集する。なお、最下位得票者に同票者がいる場合の扱いは、以下の通りとする。
6.1.同票者を加えた当選者が8名を超えて15名以内の場合は、そのまま選出する。その数が理事定数の1  5名を上回る場合は、最下位得票者の同票者を抽選により順位付けし、上位から定数までを選出する。辞退者が出る場合には、順位により繰り上げ当選者を確定する。
7.投票による選出理事の役割
 投票によって当選した8名の次期理事は、次期会長候補者を互選し、また残り7名以内の理事候補を投票結果を参考にしながら、選出する。
8.理事会、事務局の構成
 投票と推薦選出によって決まった15名以内の理事によって、事務局と次期理事会が構成される。
9.選挙年度の総会において、次期会長と理事が決定される。
附則 この選挙規程は、2005年4月1日より施行する。

第7号議案 第6期2013/2015理事選挙結果報告
 2013年4月26日、松山大学にて、2013/2015理事選挙(4月22日消印有効)の開票作業を行いました。投票状況は以下の通りでした。
郵送による投票総数: 57
白票による無効投票: 1
被選挙権該当者以外への投票による無効投票:3
3名以内連記の投票総数: 164
日本オーラル・ヒストリー学会
2013/2015選挙管理委員会
   木村知美・竹原信也・山田富秋(五十音順)

第8号議案 第6期理事会の承認
 選挙結果に基づき、当選理事(上位8名以内の12名、1名辞退)を5月11日(立教大学)に招集し、理事会のメンバーを選出した。以下を承認願いたい。
 好井裕明、川又俊則、八木良広、塚田守、和田悠、橋本みゆき、小林多寿子、小倉康嗣、田中雅一、赤嶺淳、宮崎黎子、岩崎美智子、川村千鶴子、有末賢、桜井厚
以上15名

参考:日本オーラル・ヒストリー学会理事選挙規程(抄)
1.理事会の構成
 日本オーラル・ヒストリー学会の理事会は、会員による投票で選出される8名と、投票によって選出された理事による推薦選出者7名以内の15名以内で構成され、選挙年度の総会において承認を得るものとする。
7.投票による選出理事の役割
 投票によって当選した8名の次期理事は、次期会長候補者を互選し、また残り7名以内の理事候補を投票結果を参考にしながら、選出する。

 また、理事会構成員の互選の結果、以下の理事会構成案を提案する。
2013/2015第6期JOHA理事会
会長 好井裕明
事務局長 川又俊則
会計 八木良広
監事 折井美耶子・山田富秋 
(第五期事務局長 山田 富秋)

Ⅲ.理事会報告

1.第五期第7回理事会
7月26日(金)17:30~ 立教大学新座キャンパス
※この理事会は新旧理事の申し送りを兼ねたために、新理事の方々を陪席とした。
出席者:塚田守、山田富秋、小倉康継、折井美耶子、山本唯人、グレゴリー・ジョンソン、川又俊則、松田凡、仲真人、橋本みゆき
陪席:有末賢、岩崎美智子、桜井厚、宮﨑黎子、八木良広、赤嶺淳、森武麿
1 議事録確認
 前回の理事会の決定でHP管理について委託の経緯を調べることになっていた。調査の結果、カリテスの岡部さんとの契約ではHP立ち上げと初期の管理だけをお願いしていたことがわかった。今後は学会だけでHP運営をすることになることを確認した。そのため、HP運営費はかからない。
2 会長報告
(1)JOHA11大会について 
 大会前日だが、学生・その他については参加費を半額の一日500円とし、大会二日目のフランク先生の講演は参加費を無料とすることを決定し、学会HPにてアナウンスすることに決定し、実行した。
 また、今回の開催校は理事以外の会員のお世話になるため、事務局と研活で自由報告を募集し、プログラムを作成したが、来年度からは従来通りにもどし、大会開催校と研活で行う。
(2)その他 新理事会への引き継ぎについて気づいた点を申し送りした。
3 事務局報告 
(1)会員異動 前回理事会から
新入会員 なし
住所及び所属変更
桂川泰典 (新)岡山大学学生支援センター
竹原信也 (新)奈良工業高等専門学校
松本なるみ (新)東京家政大学
(2)来年度開催校について
 来年度は日本大学文理学部(世田谷区桜上水)にて行う。開催時期は未定だが、9月までに実施する。
(3)総会に提出する議案書の検討 原案通り承認された。
4 会計から 緊縮財政を実施して、来年度予算に繰越金を20万円以上残すことができた。
5 編集委員会から 今年度は大会開催が7月のため、10周年記念号は9月の印刷後に全部を郵送とする。
6 研究活動委員会から 記念大会テーマセッションの準備状況について報告があった。
7 広報から 24号のニュースレターを発行した。今後学会でHP管理を行うことを確認した。
8 国際交流委員会から 来年、国際社会学会(ISA)が横浜で開催されるアナウンスがあった。
9 その他 今年度3月に実施された選挙結果と新理事体制について報告があった。
(第五期事務局長 山田 富秋)

2.第六期第1回理事会
日時:2013年7月28日(日)13:10~13:50
場所:立教大学新座キャンパス225教室
参加:好井、八木、桜井、田中、岩崎、赤嶺、和田、小倉、宮崎、川村、橋本、有末、小林、川又(順不同)
委任欠席:塚田
1.議事録記載者確認
理事会の議事録作成は輪番で行うことが確認された。今回は川又事務局長が担当。
2.会長挨拶
 2年間の学会運営について好井会長より挨拶があった。
3.理事担当確認
簡単な自己紹介と役割分担の確認をした。役割は以下の通り。
会長:好井裕明 、事務局長:川又俊則、会計:八木良広、編集委員長:塚田守、編集委員:桜井厚、編集委員:田中雅一、編集委員:岩崎美智子、編集委員:赤嶺淳、研究活動委員長:和田悠、研究活動委員:小倉康嗣、研究活動委員:宮崎黎子、研究活動委員:川村千鶴子、広報委員長:橋本みゆき、広報委員:有末賢、国際交流委員:小林多寿子
監事:山田富秋・折井美耶子
4.理事会開催
・年間3回を予定(うち1回は学会大会時)。開催場所は和田理事・小倉理事が勤務する立教大学池袋キャンパスを快諾していただく。
・第2回は1月25日(土)13~17時、学会大会の研究実践交流会等やシンポジウム内容の決定などを予定。
・第3回は6月頃、大会プログラムの確定を予定。第4回は9月大会開催時、総会議案最終確認を予定。次回理事会開催まで日があるので、基本的には理事MLを通じて議論を深めることを確認。
5.次回学会大会
・日本大学文理学部(世田谷区桜上水)にて、9月6~7日を予定(開催校と最終日程調整)。
・大学から学会大会開催補助金5万円を得られる可能性が高いので、八木会計理事を中心に資料を整え準備する。
・内容は、例年の大会に従い、6日(土)午前に理事会、午後、自由報告と研究実践交流会、懇親会。7日(日)午前に自由報告、昼に総会、午後にシンポジウム開催が基本。
6.事務局報告
・昨日、前事務局と引き継ぎ打ち合せを行った。大会終了に伴う事務作業等を終えた後、8月末までに引き継ぎ終了予定。
・今期も編集委員会MLを作成。最終段階で会長がかかわる可能性もあり、MLに加える。
・現在、新入会員の入会方法は郵送かファックスと告知。学会HPのフォーマットをダウンロードしたpdf等ファイルの添付メールも受け付けることになった。
・前期(第5期)の変更点確認。①学会誌買い取り方式(企画出版)への移行(インターブックス社、300冊48万円)、②会員の大会参加費徴収(会員は2日間通しで1,000円。非会員は一般1日1,000円・学生他区分1日500円で各日受付)、③学会HP、④入会は届出・入金後、理事MLで報告し、異議ある場合のみ返信、⑤事務局事務費用を時間給制。
・前期理事会の交通費対応を確認し、今期の対応を決定。片道5,000円未満の交通費支給は無。遠方者は片道交通費全額を支給。大学で出張旅費が出される場合は原則支給無、かつ、交通費辞退も前期同様受け付ける。
・事務局で従来から抱えている学会誌在庫(インターブック社保有分以外)の対応について協議し、引っ越しが終わり次第、部数を確認。一定程度の保管以外は、今後、販売ではなく会員勧誘活動への有効活用を進める(具体的な方策等は継続審議)。
7.会計報告
・前日、引き継ぎ打ち合せが行われ、学会大会のまとめが終わった後、8月末までに引き継ぎが終了予定。
・未納会員への督促、納入を動機づけるような企画・働きかけの必要性の確認。関連して、大会以外に首都圏以外等で中間集会などの企画の必要性なども提案された。
8.その他
・次々回大会は、首都圏以外での開催を目指し、各理事で検討を進める。
・理事メンバーその他で科研申請をするなどの提案あり。
(川又 俊則)

Ⅳ.お知らせ

1.『日本オーラル・ヒストリー研究』第10号 投稿募集
論文、研究ノート、聞き書き資料、書評、書籍紹介の原稿を募集いたします。掲載を希望される方は第9号の投稿規定・執筆要項を参照の上、編集委員会まで原稿をお送りください。大会での発表者のみなさんをはじめ、多くのみなさまのご応募をお待ちしています。
締め切り:2014年3月31日(月)消印有効
応募原稿送付先および問い合わせ先は以下の通りです。
日本オーラル・ヒストリー学会編集委員会
〒464-8662 名古屋市千種区星ヶ丘元町17-3 椙山女学園大学国際コミュニケーション学部
 塚田守研究室内  E-mail: mamoru[at]sugiyama-u.ac.jp
(塚田 守)

2.国際学会大会のお知らせ
【Oral History Society】イギリス オーラルヒストリー学会2014
イギリスのオーラルヒストリー学会(Oral History Society)の2014年大会は7月にイギリスのマンチェスターで開催されます。詳しくは学会HPをご覧ください。
Oral History Society HP http://www.ohs.org.uk/
 2014年7月4日‐5日 於・イギリス・マンチェスター
 大会テーマ: Community Voices: Oral History on the Ground
【IOHA】国際オーラルヒストリー学会2014
国際オーラルヒストリー学会International Oral History Association 第18回大会は2014年7月にスペイン・バルセロナで開かれます。詳しくはIOHAのHPを参照ください。 http://iohanet.org
 2014年7月9日-12日 
於・スペイン・バルセロナ
 大会テーマ:Power and Democracy: the many voices of Oral History
【ISA】国際社会学会2014
国際社会学会International Sociological Association第18回世界大会は、2014年7月に横浜で開かれます。詳細は大会HPをご覧ください。大会HP http://www.isa-sociology.org/congress2014/
 2014年7月13日‐19日 
於・神奈川県横浜市 会場:パシフィコ横浜
 大会テーマ:Facing an Unequal World: Challenges for Global Sociology
【OHA】アメリカ合衆国オーラルヒストリー学会2014
 アメリカのオーラルヒストリー学会Oral History Associationの第48回年次大会は、2014年10月にウィスコンシン州マディソンで開かれます。
Call for Papers の締め切りは2014年1月20日です。詳しくはOHAのHPをご覧ください。
http://www.oralhistory.org/
 2014年10月8日‐12日
 於・ウィスコンシン州マディソン The Madison Concourse Hotel
 大会テーマ Oral History in Motion: Movements, Transformations, and the Power of Story
(小林 多寿子)

3.会員異動(2013年6月から2013 年11月まで)
(1)新入会員
藤井和子 関西学院大学大学院社会学研究科博士課程
吉岡佳子 一橋大学大学院言語社会研究科博士後期課程
江口怜  東京大学大学院教育学研究科
飯倉江里衣 東京外国語大学大学院
石原美知子 東京国際大学
湯川やよい 日本学術振興会特別研究員
田村玉美 
梶原はづき 立教大学大学院
千田紗也加 名古屋大学大学院教育発達科学研究科
城麻衣子  名古屋経済大学大学院人間生活科学研究科修士課程
(2)住所変更・所属変更等
中野紀和、和田悠、松本なるみ
※連絡先(住所・電話番号・E-mail アドレス)を変更された場合は、
できるだけ速やかに事務局までご連絡ください。
(川又 俊則)

4.2013年度会費納入のお願い
いつも学会運営へのご協力ありがとうございます。
本学会は会員のみなさまの会費で成り立っています。今年度の会費が未納の方におかれましては、何とぞご入金のほどよろしくお願いいたします。なお、9月に発行しました学会誌は、2013年度会費の入金後、確認次第速やかに発送いたします。

■年会費
一般会員:5000 円、学生他会員:3000 円
*年会費には学会誌代が含まれています。
■ゆうちょ銀行からの振込先
口座名:日本オーラル・ヒストリー学会
口座番号:00150-6-353335
*払込取扱票(ゆうちょ銀行にある青色の振込用紙)の通信欄には住所・氏名を忘れずにご記入ください。
*従来の記号・番号は変わりありません。
■ゆうちょ銀行以外の金融機関から振り込む際の口座情報
銀行名:ゆうちょ銀行
金融機関コード:9900
店番:019
店名(カナ):〇一九店(ゼロイチキュウ店)
預金種目:当座
口座番号:0353335
カナ氏名:(受取人名):ニホンオーラルヒストリーガツカイ

郵便払込・口座振込の控えで領収書に代えさせていただきます。控えは必ず保管してください。学会会計全般について、またご自身の入金状況を確認したい場合は、会計担当の八木良広(電子メール: yy.joha[at]gmail.com)へお問い合わせください。
(八木 良広)

Ⅴ.会員投稿

《その1》 「通りに聴く」中原 逸郎(一般会員)
 調査地Aは花街である。明治5年(1872)Aとゆかりのある西陣の繊維関係者は機織りの新技術導入のためにフランスに研究生を送った。明治30年ごろの研究生である稲畑勝太郎は、ルミエール兄弟が発明したキネマトグラフ(映写機)に感じ入り、日本に初めて導入した。その後、映画は大衆の娯楽として一世を風靡し、戦前Aにほど近い千本通り、例えば西陣京極には多くの映画館が立ち並んでいたという。私たちのAの研究会である京都楓錦会では映画史研究に範囲を広げ、A周辺で聞き取りを続けている。
 今年10月には千本通りの映画館跡を歩いて探訪した。案内役は戦前両親に連れられて映画館を訪ね歩いた井村和雄氏で、氏は上京区の広報に載った25軒の映画館跡地を踏破した。Aに生まれ、日本の映画の父と呼ばれた牧野省三(1878-1929)が信仰した金光教の教会も訪ねた。日本最初の映画俳優である尾上松之助(目玉の松ちゃん)と牧野は岡山県の金光教の教会で知り合ったという。
 井村氏の案内で警察署、さらに銀行に変わった元映画館も見た。今では変哲もない通りが明治から昭和にかけて映画の都であったことを知り、通りに閉じ込められた歴史の奥深さを仲間と確かめ合った。

《その2》 橋本 みゆき(一般会員)
 『ハンメの食卓』という本が出た。副題に「日本でつくるコリアン家庭料理」とあるように、おうちごはんの作り方を文と写真で伝えるレシピ本だ。在日韓国・朝鮮人一世が集まるデイサービスセンターで在日二世や日本人ヨメの調理員らが昼食に作っているメニューであり、各家庭生活の中で一世から受け継ぎ、慣れ親しんできた味である。
このような本が出ると聞きつけ、編集を担うNPOを訪ねたのは9月。出版までの経緯を事務局長にうかがい、利用者のハンメ(朝鮮語で「おばあさん」)たちと一緒にデイの昼食をいただき、調理員の女性にもいくつか質問に答えていただけた。
レシピ本で泣けたのは初めてだ。ひと月半前にNPOで会った人たちの温かみを思い出したせいもある。しかしそれ以上に、在日一世の言葉や一世から受け継いだ知恵を、二世が大事に記録し他者に伝えようとする、一世への敬意や愛情を各頁で感じたからだ。身近な材料を使って短時間で作る、中には朝鮮風ではない料理もあるが、これが日本で代を継いで暮らしてきたコリアンの食卓なのだ。一世の生活史から生まれ、受け止めた二世が「多文化共生への願い」をこめてまとめたレシピ本。こんな伝え方を、私が伝えてみたい。