JOHAニュースレター第6号

 第3回日本オーラル・ヒストリー学会大会が9月17・18日に京都大学で盛況のうちに開催されました。
 参加者112名(会員52名、非会員60名)
 来年も9月に東京外国語大学で大会を開催します。公募発表の応募要項は次回ニュースレターでお知らせいたします。しばらくお待ちいただきますが、ぜひ皆様奮ってご応募下さい。

【目次】

Ⅰ 第3回日本オーラル・ヒストリー学会
1.JOHA第3回大会を振りかえって
2.JOHA第3回大会シンポジウム報告
3.第一分科会報告
4.第二分科会報告
5.英語部会報告
6.研究実践交流会Ⅰ(分析・解釈編)報告
7.研究実践交流会Ⅱ(技法・実践編)報告
8.2005年度総会報告

Ⅱ 学会年報第2号公募論文募集
1.『日本オーラル・ヒストリー研究』(仮題)投稿規程
2.『日本オーラル・ヒストリー研究』(仮題)執筆要項

Ⅲ 会員の声・会員の活動
1.第3回オーラル・ヒストリー学会に参加して
2.レガシメモワールズ主催「インタビュー術講座」のお知らせ

Ⅳ研究会情報

Ⅴ 海外からのニュース・研究動向

Ⅵ 事務局便り

Ⅰ 第3回日本オーラル・ヒストリー学会大会報告 

1.JOHA第3回大会を振りかえって
 2005年9月17日(土)、18日(日)の両日にわたって、京都大学大学院人間・環境学研究科において日本オーラル・ヒストリー学会の第3回大会が開催されました。これまでの大会は第1回(中央大学)、2回(立教大学)と東京で開催されており、今回ははじめて東京を離れて開催された大会となったわけです。また、過去2回は海外から招聘した著名な研究者の基調講演という「華」のある大会でしたが、今年は国内のオーラル・ヒストリー実践グループや研究者によるシンポジウムを第1日目に企画するという地味な大会でした。このように、地方でかつ目玉のない大会でしたので参加者の激減が心配されましたが、シンポジウムでは参加者が100名を超えるという盛会となり、部会も13の個人報告と多くの参加者があり、さらには本大会のユニークな企画である研究実践交流部会では参加者が多すぎて部屋が満室になるという嬉しい悲鳴を上げるほどでした。大会を3回経て、本学会も独り立ちできる態勢が出来つつあることが実感された大会でもありました。
 では、ここで、大会の内容に関してその概要を紹介しましょう。大会は17日午後に、吉田かよこ会長が開催の挨拶、共催校の冨田博之京大人間・環境学研究科長が共催の挨拶をされ、折井美耶子さんと蘭の司会によってシンポジウム「地域におけるオーラル・ヒストリー実践の課題と可能性」が開催されました。パネリストの報告は、地方女性史編纂におけるオーラル・ヒストリーの意義、部落での生活史調査が明らかにしたこと、「四三蜂起」と関係した在日済州島出身者の生活史、聞き書き活動のなかで満蒙体験者と市民との出会い、震災犠牲者への聞き語り調査から見えてきたもの、をそれぞれ5人のパネリストが報告し、3人のコメンテータから刺激的なコメントをいただき、活発な議論が交わされました。シンポジウムの興奮覚めやらぬ6時過ぎに懇親会を行い、40名弱の参加者を得て、シンポジウムの議論が継続され、各パネリストにはにぎやかな人の輪が出来ました。
 第2日目は、早朝の午前9時から自由報告が開始されましたが、最初から多数の参加者が会場を埋め、第1部会と第2部会での個人報告が行われ熱心な質疑が交わされました。12時半には総会が開催され、14時からは第3部会(英語部会)と二つの研究実践交流部会が行われ、4時半に無事大会は閉会されました。
 本大会を振り返っていくつか反省する点があります。まず、自由報告の報告時間が短すぎた点です。他の学会のように短時間で要領よい報告を求めることはオーラル・ヒストリー研究の持ち味を殺しかねないという反省です。英語部会を生かすこととも併せ、自由報告の部会構成と報告時間の検討が痛感されました。また、世界に開かれた学会といいながら英語のプログラムを準備しなかったのはまったくの失敗でした。
 このように、いくつもの反省点はありましたが、なんとか大会を終えられたことは、理事会の皆さんのご支援・アドバイスは言うまでもなく、多くの会員の協力、そして大会共催を快諾され様々に支えて下さった京都大学大学院人間・環境学研究科長の冨田先生と事務の皆様、さらには私の授業を受講する同大学院生の皆さんの協力の賜でした。心から感謝申し上げ、大会の報告といたします。(蘭 信三)

2.JOHA第3回大会シンポジウム報告(司会 折井美耶子・蘭信三)
 9月17日午後、「地域におけるオーラル・ヒストリー実践の課題と可能性」というシンポジウムが開催され、100名余の参加を得て、熱心に報告・討論が交わされました。
 日本におけるオーラル・ヒストリーは古くて新しいものです。というのは、一方で柳田国男の常民を対象とする民俗学の伝統が戦前からあり、社会学でも80年代初旬には個人を対象とするライフヒストリー研究が展開されました。他方で、戦争の記憶が薄れ「歴史の再審」が論じられるなか、「記憶と歴史」をめぐって世界中で様々な議論がたたかわされ、そのなかでオーラル・ヒストリーの可能性があらためて注目されました。ポール・トンプソンらを中心とする研究が日本でも強い影響を持ち、オーラル・ヒストリーが新たに注目され、21世紀に入って相次いで学会と協会が組織され、いくつかの大学では大きな研究プロジェクトが組織されました。本学会もそのひとつです。世界での新たな流れをくむ本学会は、過去2ヶ年にわたってオーラル・ヒストリーの世界的リーダーを招いてオーラル・ヒストリーの可能性を広く問いかけてきました。
 そして、今年は眼差しを内に転じました。というのは、日本におけるオーラル・ヒストリーは古くて新しいと申しましたように、80年代から、あるいは90年代以降、オーラル・ヒストリーに関する市民の実践グループによって日本各地で様々な活動が展開されていたからです。アカデミックな研究者ばかりではなく広くオーラル・ヒストリー実践に関心を持つ市民の参加を求める本学会としては、そのような市民による実践成果に注目し、「地域におけるオーラル・ヒストリー実践の課題と可能性」というシンポジウムを開催することにいたしました。そして、神奈川を中心にオーラル・ヒストリーという方法から女性史編纂に尽力されている江刺昭子さん(神奈川女性史・総合女性史研究会)、滋賀で部落での聞き取りに力を注ぐ岸衛さん(反差別国際連帯解放研究所しが)、大阪で在日済