joha5 自由論題報告 第4分科会

オーラル・ヒストリーと生活(百207教室)司会・有末賢
1.加藤敦也 Atsuya KATOU(武蔵大学大学院Musashi University)
「不登校の子どもと父親の関係における父親のジェンダー役割と苦悩について-不登校児の親の会に参加する父親を事例として-」A Study of a Father’s Suffering from his Gender Role in his Relationship with his Child Who Is in Non-Attendance at School:The Case of a Father’s Participation in the Parents Group for Children Who Are in Non-Attendance at School
 不登校の要因をめぐって一部の専門家による言説では、家族の要因としてたびたび父親の父性欠如が問題にされてきた。ここでは父性とは概して社会秩序やその規範を媒介し、母性と対比できる要素とされている。他方で当事者の立場からは、母親とは異なる役割意識を持つ父親のコミュニケーションのあり方が内在的に問われてきた。本報告では、不登校の親の会に参加する父親のライフストーリーを事例として、ジェンダー役割と家族関係をめぐる父親のジレンマについて考察する。ライフストーリーから、不登校の家族関係においても、ジェンダー分業が問題となりうることが示唆される。
2. 田口詩乃Shino TAGUCHI (岡山大学大学院 Graduate School,Okayama University)
「中学校の総合学習におけるオーラルヒストリーの実践」 The practice of oral history in integrated study at a junior high school
 2007年3月、岡山県倉敷市の中学校の1年生が、8名の地元の元日本軍兵士たちの話を聞き取った。『新しく生きる』ことをテーマとした3年間に及ぶ総合学習の一貫であり、はオーラルヒストリーを中心に据えた珍しい試みである。各教員の指導で、メディアリテラシーの授業や学生同士での聞き取りなどの予習を行ったうえで、元兵士の聞き取りを行った。話し手一人に対し30人程度の生徒の対面形式をとり、直接会えない生徒のため、一斉校内中継を試みるなど、多くの挑戦もあった。日本の中学校でのオーラルヒストリー教育の計画と内容、生徒たち、教員、ゲストの元兵士たちの反応、これからの展望を報告する
3.田中美延里 Minori TANAKA (愛媛県立医療技術大学(Ehime Prefectural University of Health Sciences)
「先駆的活動を展開した保健婦のキャリア発達~第一世代の自伝記録と第二世代の語りから~」Career Development of Public Health Nurse Pioneers: Life Stories in Two Generations, Using Autobiography and Oral Resource
 日本の保健婦(平成14年、保健師に名称変更)は、昭和16年の保健婦規則制定により誕生して以来、地域住民の健康を守り生活を支える活動を行ってきた。本研究は、先駆的な公衆衛生看護活動を展開した二人の保健婦のキャリア発達を、共通性に着目して解釈したものである。素材は、戦中に教育を受けた第一世代保健婦である西本多美江氏の自伝『ほんとに保健婦』(1983)の記録内容と、昭和40年代から35年余り故郷の離島で活動した第二世代保健婦Aさんへのインタビューデータである。その結果、異なる時代・地域で活動した二人のキャリア発達に共通点がみられ、活動方法の伝承に関連する接点が示された。
4.相川陽一 Yoichi AIKAWA (一橋大学大学院 Graduate School, Hitotsubashi University)
「支援という経験の語り――「三里塚闘争」参加者への聞き取りから」Narratives on the Sanrizuka Struggle: interview with ex-movement supporters
 本報告では、1966年に開始された「三里塚闘争」(成田空港反対運動)に支援者として参加した人々への聞き取り調査に基づいて、高度成長期の社会運動研究にオーラル・ヒストリーの手法を用いる意義について論じたい。戦後史上の数ある運動の中でも、高度成長期に高揚を迎えた学生運動や反公害運動の社会的注目度の高さや後発の社会運動に与えた影響は多大であろう。だが、この時期の運動研究はいまだ緒についたばかりである。報告では、「三里塚闘争」に支援参加した学生運動や市民運動の担い手が、支援という経験から何を得て、その経験をどのように活かしてきたかという「社会運動の帰結」の観点から語りを分析し、問題提起を行ないたい。
5.及川 晃一 Kouichi OIKAWA (神奈川大学大学院Graduate School, Kanagawa University)
「和船模型で伝統技術を伝える船大工職人 ―千葉県浦安の事例―」Tradition technology is introduced with a ship carpenter craftsman using a model: From Urayasu City, Chiba Prefecture
 昨年度の本学会では、静岡県焼津の元船大工を事例に報告させて頂いた。 今年度は、千葉県浦安の事例で報告させて頂く。浦安では漁業をするのに1960年頃まで活躍してきた木造船は、今日では全く使われていない。それどころか漁業も行われなくなった。語り手のU氏は、船大工を辞めてからは博物館等での講演や模型製作に取り組んできた。その船について建造技術を継承していくには、職人の協力や努力が必要不可欠だという。
 私(報告者)も模型製作を職人から直接習った。そのときの経験や聞書きの内容を中心に報告していきたい。
6.内山明子Akiko UCHIYAMA ( 駒沢大学Komazawa University)
「職人村の語られ方 ―現代ギリシャ北西部の山村の事例から―」How do (villagers ( tell a village of oneself as craftsman village? a case from a mountain village in Northwest Greece
 筆者が1980年代後半を中心に調査をしたカロニ村は、20世紀前半頃まで牧畜、石工を中心とする出稼ぎ職人、アメリカ移民の三つが主要な生業であった。第二次世界大戦を境に急速に過疎化が進行したが、都会で暮らすかつての村人やその子どもたちが70年代頃から避暑目的で村に来るようになり今日に至っている。その中で村の活性化運動に取り組む高学歴の者たちは、早くから近代的、進歩的な考えや文物を取り込んだ出稼ぎ職人の村としてカロニ村を特徴づけ様々な活動を展開してきた。この発表では、カロニ村が職人村として誰によってどのように語られているのか、また、調査者として私はそこにどう関わったのかを紹介したい。

joha5 自由論題報告 第4分科会” への1件のコメント

  1. http://kankyo-yougo.com/8CF68A51/

    公害公害(こうがい)とは、経済合理性の追求を目的とした活動によって、環境が破壊されることにより生じる、社会的災害である。例えば、工場を経営する場合、従業員の安全・衛生なり廃棄物の処理なりは経済的には損失として扱われることになる。その結果として劣悪な労

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