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日本オーラル・ヒストリー学会

メイン・テーマについて(研究活動委員長 中尾知代)

戦争・植民地期の声を聴く ――メイン・テーマへの想い
 なぜ、今第二次大戦・植民地なのか?― 戦後61年目の今年、「戦争」や「植民地期」の〈語り〉〈記録〉は注目されています。複雑な実相や個人の視点・心情・記憶・体験に注目するオーラル・ヒストリーの価値も、歴史学・社会学などの分野を超えて、口述記録の再検討が進んでいます。
◆戦争体験・植民地体験を「語る」-「聴き取る」
このたび、オーラル・ヒストリーを用いて、研究・記録を続ける人々が、一堂に会し、学会という場で発表します。発表数は27名、シンポジストは2団体と個人5名。聴き取りやインタビューを用いた人々の発表が、これだけ集まるのは、めったにないことです。(一人の発表者の背後には何人も、何十人もの聞き取りを受けた人々がいるのです)
今回のメインテーマの特色は、戦争・植民地期を、細分化せず、植民地主義・ポストコロニアルな問題と関連したものとして<戦争>の全体像を浮かび上がらせることをめざしたこと、「聴き取り」と「聴き取られる/語る側」」にも焦点を当てたことです。
◆失われつつある「声」
戦争・植民地期の経験者の高齢化が進み、「当事者たち」側の語りたい思いは募る一方です。戦争の経験者も、人口の3割をきりました。戦争・占領・植民地期の記録は、まさに「時間との勝負」であり、あの時代を生き延びた方々のオーラル・ヒストリーの貴重さは増しています。
 戦争というテーマはいうまでもなく研究者だけのものではありません。ジャーナリスト・民間団体・個人・家族・行政による聴き取りの長い蓄積もあります。ぜひ、各種メディアの方にもご参加願えればと思います。
◆「戦争」期は、公開におけるご遺族への配慮、記憶、敗戦国の立場、機密、裁判など微妙な問題を伴います。各人の方法・工夫・手法の情報交換は、<実践交流会>で行います。
◆メインテーマ以外にも、興味深い発表が種々集まりました。
「人間」の生身の想いと向き合う「オーラル・ヒストリー」。その視点と手法から、この時期をあらたに見つめなおし、記録を生かす方法を考え、また、そこに集約される問題や手法を、他のトピックの発表とも交流し、相互に活性化したいと願います。
◆「戦争」は単に過ぎ去った昔の問題ではなく、私たちの未来と直結した問題といえるでしょう。
人々の感情や、事実の整理・検証をさらに進め、体験を記録・継承し、過去の経験を、現在・未来に活かしたいと思います。JOHA今大会がその一助になれば幸いです。
              JOHA理事・研究活動委員長  中尾 知代 記
                       2006年・平成18年 9月