JOHA11大会プログラム案内

7月27日~28日立教大学新座キャンパスでのJOHA11大会プログラムをアップしました。

日本オーラル・ヒストリー学会10周年記念大会プログラム
Japan Oral History Association 11th Annual Conference

JOHA11が、2013年7月27日(土),28日(日)の二日間にわたり、立教大学新座キャンパスにおいて開催されます。今回は、例年の自由報告部会のほかに、記念テーマセッションと記念講演の特別プログラムになっております。みなさま、お誘い合わせのうえ、ふるってご参加ください。

大会第1日目 7月27日(土)
受付開始  10:00 新座キャンパス6号館2階N623前
自由報告  10:30~12:30
第1分科会N623・第2分科会N636

設立10周年記念大会テーマセッション  13:30~17:30 N623
「JOHA10年 いまオーラル・ヒストリーを問いなおす――ヒストリーとストーリーのはざまで」
報告者
石川良子・小薗崇明
コメンテーター
桜井厚・大門正克

懇親会  18:00~20:00
場所:食堂 こかげ

大会第2日 7月28日(日)
自由報告  9:00~12:00
第3分科会N623・第4分科会N636

総会  12:15~13:00 N623
昼食休憩及び新理事会  13:00~13:50

記念講演会  14:00~16:00 N623
「語りがたきを語る(仮)」アーサー・フランク博士(『傷ついた物語の語り手』著者)
通訳 有馬斉

1.大会実行委員会
日本オーラル・ヒストリー学会事務局 山田富秋
研究活動委員会委員長 小倉康嗣
大会本部連絡先 JOHA事務局までメールにてお願いします。
joha.secretariat[at]ml.rikkyo.ac.jp
2.大会会場とアクセス
立教大学新座キャンパス 6号館(N623スタジオ・N636シアター)及び2号館(225,226,227,228)
アクセス:
https://www.rikkyo.ac.jp/access/niiza/direction/
○東武東上線(地下鉄有楽町線相互乗り入れ)利用/「志木駅」下車 スクールバス約7分(運行時間12:30~19:00、運賃無料)、徒歩約15分 または、南口西武バス利用 (清瀬駅北口行 または 所沢駅東口行 ・「立教前」下車) 約10分
○JR武蔵野線利用/「新座駅」下車 スクールバス利用約10分(運行時間7:30~20:00、運賃無料)、徒歩約25分 または、南口西武バス利用(志木駅南口行き・北野入り口経由 ・「立教前」下車)約10分
○スクールバスは土日は本数が少なくなります。次のサイトで運行情報等ご確認ください。
http://www.rikkyo.ac.jp/access/niiza/schoolbus/
3.大会参加費
学会員 1,000円(両日合わせて)
学会員以外 一日参加 1,000円 両日参加 2,000円
4.懇親会 18:00~20:00
7月27日(土) 食堂 こかげ
一般=4,000円、大学院生,その他=2,000円
5.クローク 学会本部の225教室に荷物をお預けください。
6.会員控え室 両日とも 226教室です。自動販売機は6号館北隣学生食堂にございます。
7.トイレ・洗面所は6号館エレベーターフロア、喫煙所は6号館南隣5号館1階、2階外にございます。
8.昼食 土曜日はキャンパス内の食堂がオープンしています。日曜日は正門右手方向にインド料理、手打ち蕎麦、正門左手に「いなげや」等ございます。
9.宿泊 東武トラベル東京が7月27日(土)の学会会場近くの宿泊について、本学会会員専用の予約を取り扱っています。下記にアクセスしてご予約ください。他の都内の宿泊先については、各自でお取りください。
http://www.tobutravel.co.jp/fixed_page/oral_history
10.自由報告にてレジュメを用意される方は、50部程度ご用意ください。万一不足の場合、大会本部ではコピー等致しかねますので、ご了承ください。
11.書店スペースに会員の催物のチラシを置くコーナーを設けますので、希望者はご利用ください。

○大会プログラム

前日 7月26日(金) 17:30~ 旧理事会 新座キャンパス太刀川記念会館

第1日目 7月27日(土) 受付開始
10:00  場所 6号館2階N623前
自由報告  10:30~12:30
※自由報告は、1報告につき30分を予定しています。内訳は報告20分+質疑応答10分ですが、司会の指示にしたがってください。

第1分科会 N623教室
司会 好井裕明

1.技術者教育におけるオーラル・ヒストリーの可能性 事例報告:授業の一環として学生が青函連絡船:羊蹄丸のオーラル・ヒストリーに取り組んだ事例(Learning Oral History of “Seikan” Train Ferries, Yotei Maru: An Application of the Method of Oral History in Engineering Education)竹原信也(奈良工業高等専門学校)

2.岐阜県飛騨市「数河獅子」のオーラル・ヒストリー(An oral history of “Sugou-shishi” in Gifu prefecture Hida city)
川﨑瑞穂(国立音楽大学大学院)

3.オーラル・ヒストリーとアーカイブズ-記憶と証拠資料の事例から(Oral history and archives; based on the case of memory and documentary  evidence)
嶋田典人(香川県文書館)

第2分科会 N636教室
司会:倉石一郎

1.父親の家庭回帰の難しさについて?不登校の親の会に参加する父親の語りを中心に(A Study on the difficulties of father in his home: interviews for fathers who attend the association of parents suffering from their child being “Futoko”)
加藤敦也(武蔵大学非常勤)

2.統合失調症の娘を抱える父親のライフ・ストーリー(A Life Story of a Father Who Has a Daughter with Schizophrenia)
青木秀光(立命館大学大学院)

3.移住労働者の語りからみた言語習得:韓国のあるインドネシア人コミュニティにおける事例(Language acquisition as seen throughout narrative of migrant workers:An example of a certain Indonesian community in Korea)
吹原豊(福岡女子大学)

昼食休憩 12:30~13:20

午後の部
設立10周年記念大会テーマセッション 13:30~17:30
JOHA10周年 いまオーラル・ヒストリーを問いなおす ―ヒストリーとストーリーのはざまで―
場所 N623教室
司会:小倉康嗣(立教大学)、山本唯人(政治経済研究所)
報告者:石川良子(松山大学)「ライフストーリー研究に何ができるか」(仮題)
小薗崇明(専修大学大学院)「オーラル・ヒストリーによる『生きた』歴史の再構築――関東大震災の朝鮮人虐殺における聞き取り調査の聞き取りを通じて」
コメンテーター:桜井厚(元JOHA会長)、大門正克(横浜国立大学)
タイムテーブル
13:30~13:40 趣旨説明
13:40~14:40 報告:石川さん(30分)、小薗さん(30分)
14:40~15:10 コメント:桜井さん(15分)、大門さん(15分)
15:10~15:15 フロア参加者の即席グループを構成
15:15~15:30 休憩(客席収納のためいったん会場の外に出ていただきます)、客席収納、グループになる
15:30~15:40 桜井さん・大門さんのコメントに対して、石川さん・小薗さんから一言リプライ(グループでの議論の口火として)
15:40~16:30 車座になってグループで議論(床に座っても大丈夫な服装でおいでください)
16:30~17:30 各グループでの議論の踏まえての全体討論、各登壇者からのコメント、全体総括

開催趣旨
日本オーラル・ヒストリー学会は、今大会で設立10周年を迎えます。この節目を迎えるにあたり、今期研究活動委員会では「足場論」をおこなうべく、昨年度より大会セッションやワークショップを企画してきました。ここにいう足場論とは、日本のオーラル・ヒストリー研究は何をやってきた/やっていくのかという学問としての足場論であり、同時に、それを可能にする場としてJOHAが何をやってきた/やっていくのかという学会としての足場論でもあります。
それを実践するために立てた柱が、①オーラル・ヒストリー研究/実践の源流・潮流をたどる、②社会のなかのオーラル・ヒストリー研究/実践について考える、③この10年の動きがなんだったのかを確かめつつ、そのさきに何をやっていくべきなのか展望と構想につながる議論に架橋していく、という3つの柱でした。①は、前大会において、女性史発祥の地である名古屋で大会が開催されることにちなんで、「日本のオーラル・ヒストリーの源流をたどる――地域女性史の歩みから」と題する記念セッションをおこない、実践的学知としてのオーラル・ヒストリーがどのように始まったのか、その原点に含まれていた課題や豊かな可能性を再認識し、そこから得られる示唆について議論しました。②は、郷土博物館が、地域住民を巻き込んだ聞き書き実践(浦安・聞き書き隊)をとおして人の心を動かし、地域社会を動かしていった取り組みを事例に、「歴史を書き綴る住民たち――地域にとってのオーラル・ヒストリー/オーラル・ヒストリーにとっての地域」と題するワークショップをおこない、オーラル・ヒストリーの社会性について考えました。
そして今大会では、③をおこないます。JOHAが設立されて10周年を迎えるなかで、この10年の到達点はなんなのか。それは何をもたらしたのか。そしてそこからさきに何をやっていくのか。それらを参加者相互でざっくばらんに対話・議論できるような時間にしたいと考えています。
この10年の動きとして特徴的なことのひとつは、歴史においても複数の現実やストーリーがあり、オーラル・ヒストリーが語り手と聞き手との相互の対話によって共同構築されたものだという見方が定着してきたことだといえるでしょう。それはひとつの学問運動であったともいえます。では、それはいったい何をもたらしたのでしょうか。そして、そこから見えてくる課題としてどういうことがあり、そのさきに私たちは何をしていけばよいのでしょうか。それらを考えるときに大きな論点として挙がってくるのが、あえて端的に表現すれば、ヒストリーかストーリーか、誰が歴史や現実をつくるのか、といった問題でしょう。
本セッションではこれらの論点とその周辺をめぐり、まず前半で、この10年の動きの影響を一身に受けてきた若手研究者のお二人(石川良子さん、小薗崇明さん)に、ご自身のフィールド経験と絡めてご報告していただきます。そしてそれに対して、この10年の動きを牽引してきたベテラン研究者のお二人(桜井厚さん、大門正克さん)にコメントをしていただきます。ですが、これらはあくまで議論の口火であり、むしろメインは後半です。後半では、上記4人の対話を触媒として、フロア参加者全員で相互に議論をおこないます。即席の少人数グループをつくり、各グループに分かれてそれぞれに対話・意見交換をおこない、それを全体での議論に反映させていきます。
つまり、登壇者の報告とコメントをじっくり聞くというよりは、議論の前提となる現場・研究を踏まえながら、参加者相互に問題や論点を提示し、JOHAの今後の方向性・課題を浮き彫りにしていくセッションにできればと考えています(上掲タイムテーブル参照)。
議論の口火を切っていただく登壇者は、歴史学と社会学の研究者を中心に構成されていますが、オーラル・ヒストリーへの関わりが歴史学と社会学だけではないことはいうまでもありません。なによりJOHAは、大学の研究者だけではない多様多彩な在野の研究者・実践者が多く参加しているところが大きな特徴であり、強みでもありましょう。グループワークと全体での議論で、さまざま立場の方々のご経験・お考えを、おおいに出し合っていただき、交差させていくことができければと思います。(文責:小倉康嗣)

報告者の報告概要
■石川良子「ライフストーリー研究に何ができるか」(仮題)
ライフストーリー研究では、語り手の語ったことを聞き手とのやりとりを通して構成されるストーリーと捉え、事実や体験の表象そのものとしては受け入れない。したがって、従来の社会調査が主目的としてきた仮説検証や実態把握は、その目指すところから外れることになる。しかしながら、ライフストーリー研究は何をしようとしているのか、一体何ができるのかということは、いまだ十分に論じられていない。本報告では、報告者が継続している「ひきこもり」の調査に根ざして、インタビューでの会話の脈絡や聞き手自身の経験を記述すること、また語りを史資料によって裏付ける所謂「脇固め」の作業はライフストーリー研究でどう位置づけられるのか、といった点について考察を加える。これを通して上述の問いに対する一定の見解を提示したい。

■小薗崇明「オーラル・ヒストリーによる『生きた』歴史の再構築――関東大震災の朝鮮人虐殺における聞き取り調査の聞き取りを通じて」
私の研究テーマは関東大震災下の虐殺であるが、この分野での聞き取り調査の貢献は大きい。震災から60年経た頃、各地域の人たち(中学・高校の教員や主婦など)による聞き取り調査で「実態」解明が進んだからである。特に千葉県は軍隊が近くの村民に朝鮮人を渡して殺害させた事例を明らかにした。しかし90周年を迎え、当時の体験者からの聞き取り調査が困難になった。この状況下、私は地域(千葉)の聞き取り調査者たちに聞き取り調査をおこなった(『地域に学ぶ関東大震災』2012年)。そこで感じたのは、豊富で多様な語りが研究報告や文書化される際にこぼれ落ちる点が多いことである。聞き手や書き手からこぼれた語りは、すでに歴史学的な手法によって構築された「実態」が大いに関係しており、朝鮮人虐殺研究の場合、当時、どこで、何がおきたかに関心が寄せられた。この関心では、体験者がいなくなると聞き取りは不可能になってしまう。しかし、直接の体験者以外も朝鮮人虐殺の記憶を受け継いでいる人たち(加害地域の人、在日朝鮮人、調査者など)はいて、各自のなかで歴史的な問題は生きている。私の関心はそれぞれの歴史を遡って虐殺は何だったかを考えることであり、そのためのオーラル・ヒストリーの手法について検討したい。

コメンテーターのプロフィール(ご本人からのメッセージ)
■桜井厚
十年一昔というならJOHAに設立準備会からかかわってきた古参である。一貫して歴史的経験への関心をもっており、現在も戦争体験の語りつぎなどの調査研究をおこなっている。JOHAの場を離れると自分の専門ではほとんどライフストーリーの名称を使っているのは、歴史表象もライフの経験から捉えられるという観点からだが、ライフストーリーにはとくにインタビューの場における相互行為と語りの共同制作の意味が込められていると思っているからでもある。相互行為は対話に通じ私も「対話」を使うが、ときに対話の強調は、語り手と聞き手の立場性や非対称性を無化して調査行為に過剰な期待をもたせる危惧をもつ。リアリティとストーリーの対比を越えた次元も含め、報告者や参加者との議論を楽しみたい。

■大門正克
私はJOHAの会員ではあるが、この10年の活動へのかかわりは薄い。それでも、今回コメントを引き受けたのは、オーラル・ヒストリーをめぐる対話の必要性と機運を感じていたからである。1970年代末の大学院生以来、私は人に話を聞きながら歴史研究を続けてきた。聞き取り(オーラル・ヒストリー)は紆余曲折をたどり、人に話を聞くということはどういうことなのかを考えるようになった。今では、「対話」「往還」「双方向」「応答」という言葉を手がかりに語り手と聞き手の関係を考えている。本セッションは、報告とコメントの対話に始まり、参加者相互の対話、全体での対話というように、対話をくりかえしてオーラル・ヒストリーを問いなおす場である。聞き取りで私が感じている対話や往還は、本セッションのなかでどのように位置づくのか、今から楽しみにしている。

懇親会 18:00~20:00  懇親会費 一般 4000円 学生その他 2000円
場所:食堂 こかげ

第2日目 7月28日(日)受付開始 8:40
自由報告:9:00~12:00

第3分科会 N623教室
司会 滝田祥子

1.移動・帰還・「再統合」:インドネシア東南スラウェシ州の元研修生の経験の語りから(Migration, Return, and ‘Reintegration’: Investigated through Narratives on Experiences of Ex-trainees from Southeast Sulawesi Province, Indonesia)
山口裕子(一橋大学)

2.女たちの月明会-植民地女学校出身者のネットワークと人生-(Women’s  Getsumeikai-Lives and networks of colonial girls’ school graduates)
藤井和子(関西学院大学大学院)

3.「普通の人として生きる」ことの意味-海外養子として海を渡ったある日本語学習者の語りから-(Meaning of “living as an ordinary person”:From the story of a Japanese learner who crossed the ocean as an adopted child.)
鄭 京姫(早稲田大学)

4.「表現の自由」対「人権」-ハンセン病を患った元日本兵捕虜をめぐる最近の事例(“Freedom of Expression” Versus “Human Rights”: Recent Incidents Against a Former Japanese POW with Hansen’s Disease)
山田真美(お茶の水女子大学大学院)

第4分科会 N636教室
司会 八木良広

1.元教師インタビューによる戦後初期コア・カリキュラムの再把握(Re-designing Core Curriculum of the Early Postwar by the Interviews with Former Teachers)
金馬国晴(横浜国立大学)

2.長崎県外海地域のかくれキリシタン-信者が語る信仰と非信者の語る信仰-(The Kakure Kirishitan in Sotome area (Nagasaki):Faith according to the believers and the non beliebers)
小泉優莉菜(神奈川大学大学院)

3.東京大空襲被災者のライフヒストリーと死者に対する罪意識(Survivor’s Guilt and life history of the Tokyo Air Raid survivor)
木村 豊(慶應義塾大学大学院)

4.アメリカに住む原爆被爆者のオーラル・ヒストリー(Oral histories of atomic bomb survivors living in the U.S.)
根本雅也(一橋大学)

総会  12:15~13:00(選挙結果報告あり) 場所:N623教室
昼食休憩  13:00~13:50

記念講演会   14:00~16:00  場所:N623教室
「語りがたきを語る(仮)」アーサー・フランク博士(『傷ついた物語の語り手』著者)
司会 塚田 守(本学会会長) 通訳 有馬斉(横浜市立大学)

第10回のシンポジム「語りから『いのち』について考えるー聞き難いものを聞き、語り、書くー 」では、身近な人、深くかかわった人を失う経験を持ち、人は死と向かい合い、初めて「いのち」について考えるのではないか、残された者の「失われたいのち」との関わる時、人は「いのち」について語り始め、生きていく意味について考え、いまの自分を再考するのではないかとして、残された者の「いのちについての語り」について議論するというテーマ設定で行われ、心理学、社会学、そして、看護の現場の視点から、「いのち」について語ることについて議論された。
昨年のシンポジウムを展開するかたちで、学会創設10周年を記念するシンポジウムでは、病いの語りに関する研究の第1人者であるアーサー・フランク教授を招聘し「語りがたきを語る」がテーマとして記念講演していただく。フランク教授は、1991年にご自身の癌の体験に基づいたAt The Will of the Body(『からだの知恵に聴くー人間尊重の医療を求めて』)を出版し、その後、病いの体験を社会学的に研究した著書『傷ついた物語の語り手』で、日本でも知られるようになった。2010年には、Letting Stories Breathe: A Socio-narratologyを出版し、語りの社会学を理論的に展開している。病いを経験した「当事者」の視点、語りの社会学的分析、語りに関する理論的議論に関する講演は、会員の皆様にも有益なものになるであろう。(塚田 守)