JOHA オーラル・ヒストリー・フォーラム「学知と現実のはざま」 第2回セッション「女性の生に向きあう」開催報告

11月27日(日)、JOHAオーラル・ヒストリー・フォーラム「学知と現実のはざま」の第2回セッション「女性の生に向きあう」が開催されました。当日参加された清水美里会員(東京外国語大学大学院博士後期課程)から掲載の依頼があった報告内容は以下の通りです。

 今回は、学知と現実のはざまにおかれ続けてきた歴史をもつ女性史をテーマに設定し、研究領域の違いはあるものの各々女性の生/性に真摯に向きあってこられた2人の話題提供者を迎えて議論を行いました。
 一人目の平井和子(一橋大学大学院博士課程)さんは「語られない女性たちの占領体験を歴史化する試み―歴史学・女性史・オーラルヒストリーのはざまで」というタイトルで、熱海を中心に(御殿場も加えて)占領期の米兵向け売買春に関する聞き取り調査をされてこられて、女性史がこれまでの歴史の「つけた史」ではなくなったが、「ひっくりかえ史」にまではなっていない現状を打開するための方途を探る中で、オーラルとヒストリーの架橋を試み、何のために誰の声を聞き取るのかと自問しながら、インタビューの難しさや苦労について語りました。
 二人目の荒沢千賀子(一橋大学大学院博士課程)さんは「母の生に寄りそう娘 研究者として母/娘として ―スペイン内戦・独裁期弾圧を受けた女性への聞き取りから」というタイトルで、自身の教員退職後、スペインで聞き取り調査を行い、スペイン内戦・独裁期に弾圧を受けた母アンへレスを語る娘マリアンジュの苦しみを知り、傷ついた対象者に向き合い、悩みながら、自分自身の母・娘としてのありように気づいていった「対話的過程」について述べました。
 この日の参加者は22人でしたが、おふたりの報告を受けての質疑応答の後、グループにわかれて話し合いをし、議論を深めました。女性の生に向きあって、とくに政治的・性的暴力の被害者に聞き取りをする困難に立ちいたって、悩んだふたりの話題提供者がどのように対処したか。語りたくないことを語れという「暴力」の自覚。混乱する語り手にどこまで踏み込んで聞いていいのか。何のために誰の声を聞きとるのかという絶えざる疑問。その中でもオーラル・ヒストリーならではの、これまで語られてこなかった歴史の一端を生き生きとした言葉から感じ取る面白さなど、この日も時間切れとなるまで議論が続きました。(報告内容はコーディネータの宮﨑黎子さんと記録係の八木良広さんによります。)