2023年は、関東大震災から100年にあたり、本や映画など、さまざまな企画がありました。2023年9月に刊行された、後藤周さんによる『それは、丘の上から始まった――1923年 横浜の朝鮮人・中国人虐殺』(ころから)もその一冊です。横浜における関東大震災では、震火災による延焼を生き延びた人たちが南部と北部の丘陵に避難しました。「それは、丘の上から始まった」という、大変に印象的なタイトルの丘とは、横浜南部丘陵地の中心である「平楽の丘」を指します。平楽の丘は、横浜で朝鮮人・中国人の虐殺が始まった場所でした。
今回、JOHAでは、「作品と現地をつなぐ」企画として、参加者がこの平楽の丘に立ち、長年にわたり横浜の関東大震災を調べてきた後藤さんにお話を聞くフィールドワークを企画しました。後藤さんの本によれば、1923年9月1日夜、平楽の丘の上には、4万人の避難民がひしめいていたといいます。「丘の下では、石油倉が暗闇の中で燃え続け、近くの横浜刑務所からは囚人たちが逃げ出したという不穏な知らせが飛び込んできます」。そこで、「朝鮮人流言に説得力を与えた」のが、「赤い三角旗を掲げて集団で商店に押し入る」横浜震災救護団の登場でした。そして、「こうした不穏な状況が、平楽の丘で人々を突き動かすほどの力をもった流言を生み出し、虐殺の始まりと拡大につながったのではないかと思われます」と後藤さんは述べます。
1972年、横浜市で中学校の教員になった後藤さんは、学区にあった宝生寺の住職である佐伯真光さんから話を聞きました。宝生寺には前年に朝鮮人慰霊碑ができており、関東大震災と大変にゆかりのある寺でした。それ以来、半世紀にわたり横浜の関東大震災を調べてきた後藤さんは、くりかえし横浜でフィールドワークをして人と出会い、史料を収集して分析し、話を聞いてきました。2000年代には、震災当時の小学生の震災作文の発見と出会いがありました。数百名の「震災作文を読むことは、いわば当時の子どもたちからの聞き取りです」と後藤さんは言います。1990年代以来、後藤さんは在日コリアンと日本の子どもたちの交流を重ねる「ヨコハマハギㇵッキョ」の活動にも取り組んできました。
後藤さんの取り組みは、横浜でフィールドワークを重ねるなかで文字史料を探し、聞き取りや子どもの作文との出会いなど、多様な活動の結び目のなかで行われてきました。今回の企画では、参加者が平楽の丘に立って後藤さんのお話を聞き、100年前の震災と虐殺に思いをいたすとともに、フィールドワーク終了後には、後藤さんの取り組みについてお話を聞き、参加者と意見交換も行いたく思っています。4月には下見も行い、当日のフィールドワークへの期待が高まっているところです。ぜひ多くの方の参加をお待ちしています。
日時:2024年6月30日(日) 13時~17時ころ
集合:2024年6月30日(日) 13時
・JR京浜東北・根岸線「石川町駅」北口改札口
・東海道新幹線利用の場合 「新横浜駅」―(JR横浜線)―「東神奈川駅」―(JR京浜東北・根岸線)―「石川町駅」 新横浜駅~石川町駅 20分程度
フィ―ルドワーク 案内 後藤周さん
支援 小川輝光さん(神奈川学園中学・高等学校教員)
出発 13時30分 かながわ労働プラザ
到着 15時30分 かながわ労働プラザ
意見交換会 16時~17時 かながわ労働プラザ第11会議室
参加者 25名程度まで
主催:日本オーラル・ヒストリー学会


