JOHA「オーラル・ヒストリー・フォーラム」ワークショップ開催案内

 JOHA会員のみなさま

 先日、昨年度のワークショップ実行委員会を引き継いだ今年度の新体制が決まりました。下記のとおり、4月に開かれた企画会議に参加した全員が企画運営委員となり、同時にそれぞれの役割分担をすることになりました。どうぞよろしくお願い申しあげます。
 2011年度も、担当の企画運営委員が毎回持ち回りでコーディネートする運営となりますが、私が企画運営委員の元締め役を仰せつかりましたので、代表してご案内申しあげます。

 今年度もワークショップを複数回開催する予定ですが、とくに今年度は「オーラル・ヒストリー・フォーラム」と銘打って、さまざまな立場の発表者・参加者同士で率直な議論を交わすことを重視したいと考えています。迷いや戸惑いのようなものも率直にさらけ出せる、正直なコミュニケーションをベースにして、オーラル・ヒストリーは人間と社会にどんな働きかけをするのか。手法だけにとどまらないオーラル・ヒストリーの学問的・実践的意味・意義とはなにか。そういったことを議論し、深めていく場にしていくことができればと願っています。
 そこで、そのようなコミュニケーションや議論のよすがとするために、各回のフォーラム全体を貫く最大公約数的なテーマを掲げたいと思います。そのテーマとは、「学知と現実のはざま」です。
 オーラル・ヒストリーに向き合うとき、私たちが共通して直面するのが「学知と現実のはざま」という問題ではないかと思います。それは、生活知と学知の乖離として感受されることもあるでしょうし、報告書や論文、著書、ドキュメンタリーなどに作品化するときの戸惑いや悩みとして感じられることもあるでしょう。学知・運動・当事者の「はざま」で葛藤したり、ききとりをしながら「自分はいったい何者なのか」というジレンマにさいなまれる場面も少なくないと思います。また、このたびの大震災は「学知と現実のはざま」をいかに埋めていけばよいのかを、根底からから問うているようにも思えます。
 この「はざま」には、イデオロギーや運動、あるいは大小さまざまなコミュニティの解釈枠組や、写真や映像などの多様なメディアも介在し、さらに重層的で錯綜した様相を呈しているといえるでしょう。しかしながら、こういった「はざま」に胚胎するさまざまな問題こそが、既存の枠組を革新したり、新たなコンテクストを生成していくのであり、それがオーラル・ヒストリーの創造性の源泉でもあろうかと思います。とはいえ、オーラル・ヒストリーのこういった側面を正当に位置づけ、生かし、評価していく場はそれほど共有されていないようにも感じます。
 そこで、専門研究者に限らないさまざまな立場の発表者・参加者同士の正直なコミュニケーションからはじめ、「学知と現実のはざま」に胚胎する悩みや問題を吸いあげていく場をまずはつくっていこうではないか、というのがこのフォーラムのねらいです。
 「学知と現実のはざま」――そこに、オーラル・ヒストリーならではの学問的・実践的意味・意義の鍵があるのではないでしょうか。それをみなさまと一緒に議論し、探究していくことができればと願っています。

 記念すべきフォーラム第1回めは、7月30日(土)の14時から開催する予定です。原爆被害者へのききとりを通して彼/女らの戦後の生き方や若い世代の被爆体験との向き合い方について考えてこられた八木良広さんと、東京大空襲・戦災資料センターで主任研究員をしておられる山本唯人さんに、口火となる発表をお願いしています。
 当日は、参加者全員で率直なコミュニケーションができるよう、議論の時間をたっぷりとった段取りでと思っています。詳細が決まりしだいお知らせしますので、どうぞご期待ください。
(小倉康嗣)


企画運営委員:荒沢千賀子、小倉康嗣、木村豊、酒井順子、清水美里、中原逸郎、橋本みゆき、前田沙織、宮崎黎子、八木良広。
連絡担当:清水美里、中原逸郎。
記録担当:八木良広。
会計担当:荒沢千賀子、木村豊。
会場担当:酒井順子、橋本みゆき、宮崎黎子。
(以上、五十音順)