JOHA第19回大会 開催日程・形態の変更について

新型コロナウイルス感染拡大による影響について今後の見通しが立たないことを受け、9月4日・5日に青森公立大学を会場にハイブリッドでの開催を予定していたJOHA第19回大会開催の可否を理事会で慎重に協議した結果、日程を9月5日(日)の1日のみとし、開催形態をオンラインとすることを決定いたしましたことをご報告申し上げます。
大会プログラムや参加方法などについての詳細は、確定次第、会員メーリングリストならびにホームページでご連絡いたします。
末尾になりましたが、みなさまのご健康をお祈り申し上げます。

JOHA会長 赤嶺淳
大会開催校理事 佐々木てる
研究活動委員長 橋本みゆき

JOHAシンポジウム「戦争体験に関わる「二次証言」の可能性」のご案内

6月27日(日)に、「戦争体験に関わる「二次証言」の可能性-福井県の歩兵第三六聯隊に所属した一農民の体験を事例に考える-」というテーマでシンポジウムを、オンライン研究会方式で開催します(歴史学研究会現代史部会・同時代史学会と共催)。参加申し込みの方法と企画内容の詳細は以下をご確認ください。

日本オーラル・ヒストリー学会シンポジウム
戦争体験に関わる「二次証言」の可能性
-福井県の歩兵第三六聯隊に所属した一農民の体験を事例に考える-
(共催:歴史学研究会現代史部会、同時代史学会)

◆企画の趣旨
日本オーラルヒストリー学会では、このたび戦争体験に関わる「二次証言」の可能性をめぐるシンポジウムを企画しました。
その趣旨は、タイトルに明記してありますように、戦争体験に関する「二次証言」の可能性を考えたい、というところにあります。ただし、ここでいう「二次証言」という表現は、当事者ではない人が当事者から聞いたことを伝える証言という意味で、あくまで仮称として用いるものであり、証言としての価値の軽重を意識して用いるものではありません。戦争体験者(特に出征経験者)が自らの体験を直接語ることが次第に困難になりつつある昨今、その近親者などによる戦争体験を語り継ぐ活動が注目されつつあります。そのような活動の意義と可能性について、基調講演とシンポジウム形式の討論という二部構成の企画で考えたいというものです。
具体的には、福井県の鯖江に衛戍していた歩兵第三六聯隊に所属して、中国に出征した山本武さん(1913~1984)の戦争体験を取り上げます。山本武さんの戦争体験と、武さんが書き残された陣中日記と回顧録は、吉見義明さんのご著作『草の根のファシズム』(東京大学出版会、1985年)や、2000年に放映されたNHKの番組「ETV2000 シリーズ太平洋戦争と日本人 第5回 一兵士の従軍日記 -祖父の戦争を知る-」で取り上げられました。そして現在は、武さんのご子息である山本富士夫さんと山本敏雄さんによって、武さんの体験を語り継ぐ活動がなされています。
今回のシンポジウムでは、山本富士夫さんと敏雄さんをお招きして、実際に武さんの戦争体験を語り継ぐ基調講演をしていただきます。そして、その語り継ぐ活動の意義と可能性について、現代史やオーラルヒストリーに詳しい研究者(吉見義明さん、中村江里さん)にコメントしていただき、さらに企画担当者である能川泰治委員からのコメントも加え、全体討論を通じて理解を深めていきたいと思います。どうぞ奮ってご参加ください。

日時:2021年6月27日(日)13:00~17:00
【注記】
このシンポジウムは昨年6月に開催する予定でしたが、新型コロナウィルス感染拡大のために延期することにしたものです。今度はオンライン研究会方式で開催することになりしました。参加希望者には事前登録をお願いします。

会員・非会員を問わず参加費無料

参加登録方法
参加を希望される方は、下記申し込みフォームから事前登録をお願いします。申し込みフォームには、①お名前、②メールアドレス、③ご所属、④参加のきっかけ(シンポジウムのことを何でご存知になったか)を登録していただきます。登録しないと当日は参加許可されません。また、シンポジウムの前日に関係資料をお届けする予定ですので、なるべく6月25日(金)の17時までに申し込み手続きを完了させてください。
事前参加申し込みフォーム ←ここをクリック

Zoomの使用方法については、zoomの利用について案内をご確認ください。

問い合わせ先
日本オーラル・ヒストリー学会の研究活動委員会・能川泰治 (ysnogawa[at]staff.kanazawa-u.ac.jp)
※ [at]を@に変えて送信してください。

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JOHA19(第19回学会大会)報告エントリー募集

 2021年度のJOHA第19回大会の自由報告部会(個人報告/共同報告/テーマセッション)の報告者募集のご案内です。

 JOHA第19回大会は、9月4日・5日に青森公立大学で、現在のところ対面・オンライン併用のハイブリッド開催を予定しております。
 大会の詳細は、大会プログラムが確定する7月頃に決定次第、メーリングリストで会員のみなさまにお知らせするとともに、ウェブサイトに掲載します。
 ただし今後の新型コロナウィルス感染拡大の状況によっては、再調整の可能性があります。
 開催方法について検討していた関係で報告募集の開始が例年よりも遅くなりましたこと、お詫び申し上げます。ふるってのご応募お待ちします。

◎第19回日本オーラル・ヒストリー学会大会
・日時:2021年9月4日(土)〜5日(日)
・会場:青森公立大学
 〒030-0196 青森市大字合子沢字山崎153番地4
・自由報告部会は9月4日(土)午後前半と5日(日)午前の見込み。ほかに総会・シンポジウム・研究実践交流会など。

◎自由報告(個人報告/共同報告/テーマセッション)報告者募集
〇個人報告および共同報告は、報告20分・質疑応答10分(合計30分)で構成されます。
〇テーマセッションは、150分間(上限)の時間枠で設定できます。1人あたり報告時間は20分を目安とします。全体の時間配分・報告者人数・報告順・コメンテーターは、コーディネーターが調整してください。
・募集期間:2021年4月16日〜6月1日
・報告を希望する会員は申込用紙に各項目を記入のうえ、下記の応募要項に従ってお申し込みください。
・オンライン報告/現地報告の選択肢があります。お申し込み時に選んでください。詳しくは後日打ち合わせます。

【応募要項】
◆申し込み資格
申込時点でJOHAの会員であること、および2021年度会費納入済みであること。
(会費納入のご案内、振り込み用紙は4月中に郵送いたします)

◆申し込み手続き
1.申込用紙に記入し、メール添付で、必ず下記2アドレス両方宛にお送りください。
申込用紙(個人報告・共同報告テーマセッション
−JOHA事務局・矢吹康夫(joha.secretariat[at]ml.rikkyo.ac.jp)
−研究活動委員会委員長・橋本みゆき(5522825[at]rikkyo.ac.jp)
※迷惑メール防止のため[at]としております。実際のメール送信では[at]の部分は@を入力してください。
※折り返し、事務局より受付の返信をします。返信がない場合は、ご面倒でもお問い合わせください。

2.メールで連絡できない方は、申込用紙をJOHA事務局へ郵送してください。受領連絡が必要な場合は返信用ハガキを同封してください。
〒171-8501 東京都豊島区西池袋3-34-1
立教大学社会学部 矢吹康夫宛
日本オーラル・ヒストリー学会事務局

◆申込締め切り
6月1日(火)(必着)

◆問い合わせ先:日本オーラル・ヒストリー学会事務局
JOHA事務局・矢吹康夫 (joha.secretariat[at] ml.rikkyo.ac.jp)

理事会(第9期)

<任期:2019年9月から2021年大会まで>

会長:赤嶺淳

事務局長:矢吹康夫

会計:上田貴子

編集委員長:石川良子
編集委員:今野日出晴
編集委員:佐野直子
編集委員:塚田守
編集委員:根本雅也

研究活動委員長:橋本みゆき
研究活動委員:小林多寿子
研究活動委員:能川泰治
研究活動委員:安岡健一
研究活動委員:山本恵里子

広報委員長:野入直美

大会校理事:佐藤量(任期 2019年9月~2020年大会まで)
大会校理事:佐々木てる(任期 2020年9月〜2021年大会まで)

監事:岩崎美智子
監事:倉石一郎

日本オーラル・ヒストリー学会第17回大会(JOHA17)のご案内

日本オーラル・ヒストリー学会第17回大会(JOHA17)が2019年9月7日(土)、8日(日)の2日間にわたり横浜市立大学において開催されます。お誘い合わせのうえ、ふるってご参加ください。
報告要旨などの詳細は、順次アップロードしていきますので、いましばらくお待ちください。

日本オーラル・ヒストリー学会 第17回大会
Japan Oral History Association 17th Annual Conference

開 催 日:2019年9月7日(土)、8日(日)
開 催 場 所:横浜市立大学金沢八景キャンパス(〒236-0027  横浜市金沢区瀬戸22-2)
・会場は、キャンパス内YCUスクエア(報告、シンポジウム等)といちょうの館(懇親会)で行われます
交通アクセス:京浜急行線「金沢八景駅」下車徒歩5分、シーサイドライン「金沢八景駅」下車徒歩7分
交通アクセスとキャンパスマップ
大会参加費:会員 1,000円、非会員 一般:2,000円、学生他:1,000円
懇 親 会 費:一般 4,000円、学生他 2,000円
大会時託児サービスを実施します。詳細は こちら をご確認ください。

大会に関してご不明な点がございましたら、JOHA 事務局までお問い合わせください。
E-mail: joha.secretariat(at)ml.rikkyo.ac.jp
※ [at]を@に差し替えて送信してください。

大会プログラム

大会プレ企画 9月6日(金)
中村高寛監督、陳天璽さんと一緒にヨコハマの歴史を歩く、味わう、語る
詳しくは こちら
9月3日追記 大会プレ企画は、定員に達しましたので、申込受付は終了しました。

第1日目 9月7日(土)
10:00 受付開始 @ピオニーホール(YCUスクエア1階)前ロビー

10:30〜13:00 映画『禅と骨』(中村高寛監督、2017年)上映会 @ピオニーホール

【監督紹介】
中村高寛さんは、1975年横浜生まれ。松竹大船撮影所でキャリアをスタートさせた後、北京電影学院でドキュメンタリー映画の手法を学ぶ。帰国後、中国人ドキュメンタリー映画監督李纓氏の撮影助手を務める。『ヨコハマメリー』が監督第1作。今回上映の『禅と骨』は第2作目。DVD化されていない作品のため、実践交流会で話題を提供していただく前に上映することにした。

【作品解説】
1918年に横浜でアメリカ人実業家の父と新橋芸者の母の間に生まれたヘンリー・ミトワの93年の人生をその複雑さ、滑稽さ、胡散臭さ、愛おしさを包み隠さずに作品にした。1923年に横浜で関東大震災を経験し、1940年には単身渡米。日米開戦後すぐに自ら志願して日系人強制収容所で過ごす。アメリカ国籍を放棄するが、帰還船に乗ることを拒否しアメリカに留まる。戦後はロサンゼルスで順風満帆な生活を築いていたが、突然1961年日本に帰国。京都嵐山天龍寺で禅僧になり、古都の文化人や財界人に囲まれて悠々自適の晩年を過ごすとおもいきや、80歳を目前に突如「赤い靴」の映画を作りたいと中村監督を彼の夢に巻き込むことになる。
この作品は、ヘンリー・ミトワの人生を観客に伝えるために、ドキュメンタリー+ドラマ+アニメ+時代背景や制作過程を解説したパンフレットというジャンルを縦横無尽に駆け巡る手法をとった。縦軸には横浜の近現代史の流れと日米関係、とりわけ第二次世界大戦の日系アメリカ人強制収容所体験が暗い影を差す。横軸には家族や友人との関係が彼の人物像を際立たせるように配置されている。一人の人生を歴史軸に据え、かつ、人間関係の網目の中に位置付けることは、オーラルヒストリーの正統的な手法である。本作品は、全部で9つの章に分かれている。

13:00 – 15:30 自由報告部会
第1分科会(戦争)@YCUスクエア4階401 報告要旨
・竹原 信也「移動する女性の体験が意味すること~済南の日本人居留地、満州・錦州での生活経験と八路軍従軍看護婦経験を有する女性のライフ・ヒストリー~」
・四條 知恵「ろう者の原爆の語り」
・那波 泰輔「1980年代のわだつみ会における加害者性との向き合い——1988年の規約改正に着目して」
・福田 真郷「沖縄県の在日米軍基地における「黙認耕作」」

第2分科会(仕事)@YCUスクエア4階403 報告要旨
・中原 逸郎「芸の発信−京都上七軒北野をどりの創成を中心に−」
・三浦 優子「海外駐在員女性配偶者の生活の中の両義性―語りからの考察」
・島田 有紗「高齢者労働力化と就労当事者の経験――高齢自営漁師たちの出漁実践と語りを事例に」
・八鍬 加容子「語り始めた「ホームレス」の人々―『ビッグイシュー日本版』「今月の人」誌面分析から」

16:00〜18:00 研究実践交流会(開催校企画)@ピオニーホール
作品化の手法:伝えること、伝わること、共有すること
【司会】滝田祥子
【発題者】中村高寛 「横浜をめぐる近現代史の聞き取りのドキュメンタリー映画化をめぐっての模索:『ヨコハマメリー』『禅と骨』そしてその先へ」
【趣旨】
研究実践交流会の目的は、オーラルヒストリーの実践をめぐり大会参加者同士が自分自身の研究実践の内容を共有し、今後の研究を続けていく上で有用な気づきを得やすい場をつくることにある。
JOHA2019年春季シンポジウム『ビジュアルオーラルヒストリーの可能性と現在』と実践ワークショップ『作品と現地をつなぐ』の流れを受けて、今回は<作品化>の局面に焦点をあて、聞き取りやオーラルヒストリーインタビューを作品化するときに、1)伝えていくための工夫はどのようにしているのか、2)作品化したあとに実際に伝わったのは何か手応えはあるのか、3)過去の記憶を共有することの難しさと可能性とはなにか、の3つの問いについて議論していきたいと考えている。
まず、前半は中村高寛監督をおむかえし、対話形式でこれまでの作品化のプロセスで苦労した点、工夫した点、成功した点、失敗した点、これからチャレンジしようと思っている企画などについてお話を伺う。実際の映像のダイジェストを見せていただきながら、膨大なビジュアルデータや収集した情報をどのようにして選択し作品に落とし込んでいくのか、など監督自身のドキュメンタリーの手法を明らかにしていく。前作『ヨコハマメリー』が、自分自身を語らぬメリーさんをめぐる様々な人の記憶から伊勢佐木町という<現地>の一つの時代を描いたのに対して、2作目の『禅と骨』では、メリーさんに負けず劣らずユニークな人物を目の前にしてその人の人一倍複雑な人生を理解することをその人自身の語りを主軸に描いている。前者は撮れてしまった映画で、後者は監督が確信的に撮った映画だと言われたこともあるようだが、その違いはどのようにして生まれ、そのことは監督自身の作品化をめぐる手応えにどのような影響を与えているのだろうか。
後半は、ワークショップ形式で、参加者の方々の作品化(論文、本、映像、など)実践を共有し、先に挙げた3つの問いについて考えを深めていきたいと企画している。最後に全体で共有し、中村監督からコメントをいただくことにする。

18:30〜20:30 懇親会 @いちょうの館

9月8日(日)
9:00 受付開始 @ピオニーホール(YCUスクエア1階)前ロビー

9:30〜12:00 自由報告部会
第3分科会(移民)@YCUスクエア4階401 報告要旨
・孫夢「「留学(さ)せざるを得ない」-当事者のライフストーリーから中国の教育現実を解明する」
・山崎 哲「「あなたの名」を知らぬ者は生活史をどう語るか -ある中国帰国者3世への聞き取り事例から-」
・竹田 響「在日コリアンの国境を越えた親族の繋がり―朝鮮半島の南北に離散して暮らす親族との「再会」に着目して―」
・仙波 梨英子「在日フィリピン人の第二世代のオーラルヒストリー:アートを通じた表現活動から考察する」

第4分科会(メディア)@YCUスクエア4階403 報告要旨
・林 貴哉「在外ベトナム人コミュニティにおける声の発信:米国のベトナム語メディア関係者の語りから」
・澁谷 由紀「ベトナム戦争期のジャーナリスト/諜報員の語りと現在:『ファム・スアン・アン―名前のとおりに生きた男』とその関連書籍をめぐって」
・石井 育子「ラジオドラマ史にみる脚本制作の変遷についての1考察」
・西村秀樹・小黒純「社会派TVドキュメンタリーの成立過程の研究、戦争の加害と被害をめぐる『記憶の澱』の研究」

12:05〜13:00 総会 @ピオニーホール

13:00〜14:00 特別イベント @ピオニーホール
科研費改革の背景と動向 (田中雅一JOHA研究活動委員会委員長)

14:00〜17:30  シンポジウム @ピオニーホール
〈見えないもの〉のオーラル・ヒストリー
【司会】田中雅一(国際ファッション専門職大学)、橋本みゆき(立教大学)
【趣旨】
幻覚や幻聴、夢、心霊現象、超常現象といった目に見えないものは、しばしば当事者たちの生に大きな影響を与える。たとえば、災害や戦争で亡くなった者が夢に現れ、遺言を残したり、自らの進むべき道に何か示唆を与えていたり、過去の夢が「虫の知らせ」であり予言・予知であったと認識していたりする。しかし、いかにそれが当事者たちにとってリアリティのあるものとして存在していても、目に見えないものは虚構であるかのように受け止められることも多い。
このシンポジウムは〈見えないもの〉のオーラル・ヒストリーに関連する研究に取り組む人々をパネリストとして招き、その意義や方法について議論する。私たちは〈見えないもの〉に対してどのようにアプローチし表現することができるのか。そして〈見えないもの〉に着目することで〈見える〉ようになるものとは何なのか。
〈見えないもの〉はオーラル・ヒストリーの実践にも深く関わる。インタビューにおいて、相手が自分の経験した幻覚や超常現象を話すとき、私たちは戸惑ったり疑ったりするかもしれない。一方、彼・彼女らが家族や仕事について話をしてもそれを疑うことはほとんどないだろう。だが、その対象者が過去に体験したいずれも、私たちにとっては〈見えないもの〉でもある。〈見えないもの〉のオーラル・ヒストリーを考えることは、フィクションとノンフィクション—虚構と現実—の境界を問い直すことにもつながることになるだろう。 (文責 研究活動委員会・根本雅也)
【報告】
・金菱清(東北学院大学)幽霊と夢のナラタージュ―東日本大震災の〈いまはむかし〉
・北村毅(大阪大学)平和学習とシャーマニズムの接点―あるガマにおける日本兵の「亡霊」をめぐって
・根本雅也(日本学術振興会)幻覚の口述史―ある被爆者の憎しみと赦しの物語り
【コメント】有薗真代(龍谷大学)、村上陽子(沖縄国際大学)

第4分科会(メディア)報告要旨

第4分科会(メディア)@YCUスクエア4階403
司会:池上賢、倉石一郎

ラジオドラマ史にみる脚本制作の変遷についての1考察
石井育子( ㈱エフエム東京 報道・情報センター)
ラジオドラマは、誕生から90年以上続いている長い歴史がある。テレビ誕生以前から現在のメディア融合時代まで、時代状況、メディア環境、産業構造の移り変わりの中で独自の変化・進化を続けてきたユニークな表現ジャンルともいえる。ネットの普及によりメディア環境が激変している現在、そうした歴史的変遷を踏まえることなく、ラジオドラマの今後の可能性を構想することは困難である。歴史を辿るうえでは、残された音源や記録、資料が限られているため、制作者・脚本家の証言、および彼らが残した数少ない著作が重要な手掛かりとなる。今回は、現在ほぼ唯一の職業的ラジオドラマ専門の脚本家である北阪昌人氏の証言を中心に、ラジオドラマの歴史的展開を跡づけながら、その延長上としての現状及び今後の可能性について分析・考察した結果を報告したい。

ベトナム戦争期のジャーナリスト/諜報員の語りと現在:『ファム・スアン・アン―名前のとおりに生きた男』とその関連書籍をめぐって
澁谷由紀(東京大学附属図書館アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門 [U-PARL] 特任研究員)
本報告では、ベトナム戦争期のベトナム共和国(旧南ベトナム)において、国際ニュース通信社ロイターやニュース週刊誌『タイム』誌の特派員をつとめた解放勢力側の諜報員ファム・スアン・アンに焦点を当て、彼の語りが持つ今日的意味を考察する。分断国家を経験したベトナムでは、諜報員の存在や二つの体制間の移動は決して特異なことではない。にもかかわらず、2002年にベトナムで出版されたルポタージュ『ファム・スアン・アン―名前のとおりに生きた男』はベトナム国内外で大きな反響を呼んだ。本報告では同書と欧米で出版された関連書籍をとりあげ、アンの語りが政治的にどのように利用されたのか、どのように人々に受け止められたのかについて検討する。

社会派TVドキュメンタリーの成立過程の研究、戦争の加害と被害をめぐる『記憶の澱』の研究
西村秀樹(同志社大学嘱託講師)・小黒純(同志社大学社会学部メディア学科)
「社会派TVドキュメンタリーの成立過程の研究」の第三弾の発表。本作品(山口放送、2017年放送)は戦争の加害と被害証言を取り扱ったTVドキュメンタリー、第13回日本放送文化大賞テレビグランプリの受賞作品。満州開拓団でおきたソ連兵相手の「性接待」、捕虜の殺害、民間人の殺害など、「先の大戦の記憶を語り、残したいという人びと」の証言をたんねんに取材した制作ディレクターから、制作意図、過程を聴きます。浮かび上がるのは、「心の奥底にまるで澱のようにこびりついた記憶」。

在外ベトナム人コミュニティにおける声の発信:米国のベトナム語メディア関係者の語りから
林貴哉(大阪大学大学院言語文化研究科博士後期課程)
1975年のベトナム戦争終結に伴い国外に亡命したベトナム難民は、世界各地でベトナム人コミュニティを形成している。本発表では、米国のベトナム人コミュニティにおいてベトナム語で放送されているテレビ番組において、どのような背景のもと、いかに情報発信が行われているのかを分析する。番組制作者への聞き取りから、番組において南北ベトナム統一前の伝統的なベトナム語を使用していることがベトナム人コミュニティの声を守り、発展させていくことの土台になっていること、さらに、コミュニティの発展に伴って視聴者やテレビ局の社員の構成にも変化が生じており、ベトナム難民1世の声と若い世代の声の共存が目指されていることが明らかになった。

第3分科会(移民)報告要旨

第3分科会(移民)@YCUスクエア4階401
司会:佐々木てる、清水美里

在日フィリピン人の第二世代のオーラルヒストリー:アートを通じた表現活動から考察する
仙波梨英子(横浜市立大学大学院都市社会文化研究科博士後期課程)
本研究は、フィリピン系移民のなかでも1980年代以降に日本で生まれ育った「第二世代」に焦点をあて、アートを通じてオーラルヒストリーを共同制作していく試みである。具体的には、在日フィリピン人の第二世代(以下、第二世代)と〈アートのグループ展示を開催する〉という、企画・準備・制作・展示といった、プロジェクト型の発信活動をするなかで、第二世代がどのような世界を描き、他者と関わりあうのかに注目する。また、調査者としての「わたし」が、一作家として参与型観察をおこなうことにより、調査する側・される側という分断された立場を超え、相互作用の中でたち現れていく「わたし」自身の姿をも考察対象とする。本発表では、現時点であきらかになった事象を中心とした分析の経過を報告する。

「留学(さ)せざるを得ない」-当事者のライフストーリーから中国の教育現実を解明する
孫夢(首都大学東京人文科学研究科社会行動学専攻社会人類学教室博士後期課程)
日本が少子高齢化の社会になり、労働力不足の現状を緩和するため、「技能実習生」だけではなく、留学生も沢山呼び寄せた。このうち中国からの留学生は12万人で、全留学生数に対して占める割合は約40%となっている。こうした背景から、留学生、特に、中国人留学生を対象に行われてきた研究は多岐にわたっている。教育学や社会学や心理学などの観点から留学生政策の是非や留学生の適応問題を論じていることが多い。本研究は教育人類学の視点から、母子の二人の主人公のライフストーリーに注目し、中国人留学生の主人公はどうして日本留学を選び、その母親はどのように子どもの留学を実現させたのか等、留学に纏わって、中国人留学生が「留学(さ)せざるを得ない」理由を明らかにし、現在中国における教育現実を解明する。

在日コリアンの国境を越えた親族の繋がり―朝鮮半島の南北に離散して暮らす親族との「再会」に着目して―
竹田響(京都大学 人間・環境学研究科)
本発表では、第二次世界大戦終戦以前に朝鮮半島より日本の内地に移ってきた、いわゆるオールドカマーの「在日コリアン」と呼ばれる人びとの親族ネットワークに焦点を当てる。
在日コリアンの9割程度は朝鮮半島南部に自身の出自を持つが、1959年から1984年にかけて実施された日本から朝鮮民主主義人民共和国への「帰国事業」によって、10万人弱の在日コリアンが朝鮮民主主義人民共和国に「帰国」し、朝鮮半島の南北に在日コリアンの親族が離散するという事象が生じた。
今日、在日コリアンが、大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国に離散して暮らす親族とどのような国境を越えた親族ネットワークを構築しているのかを、親族との「再会」に着目しながら明らかにする。

「あなたの名」を知らぬ者は生活史をどう語るか -ある中国帰国者3世への聞き取り事例から-
山崎哲(一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程)
本報告の目的は、「あなたの名」を知らなかった者がいかに自己の歴史を語ったのかについて検討することである。具体的には、中国帰国者と総称される人々のうち、ある3世への聞き取り事例を通して行う。
中国帰国者とは、日本へ帰国または移住した中国残留孤児・婦人等とその家族を指す。報告者は中国残留孤児・婦人の孫世代である3世に生活史調査を行なってきた。その中で、報告者による聞き取り調査時にある3世が自らを中国帰国者“である”と初めて知った事例に出会った。本報告では、彼女がなぜ中国帰国者という「あなたの名」を知らなかったのか、また、自身も3世である報告者との相互作用を通じて、彼女自身と家族の歴史がいかに紡がれたかについても考察する。

第2分科会(仕事)報告要旨

第2分科会(仕事)@YCUスクエア4階403
司会:有末賢、矢吹康夫

高齢者労働力化と就労当事者の経験――高齢自営漁師たちの出漁実践と語りを事例に
島田有紗(京都大学大学院人間・環境学研究科)
地球規模で高齢者人口が増加している。中でも日本は高齢化率21%を超す「超高齢社会」であり、高齢化は特に深刻だ。高齢者向け医療・介護体制や経済支援等の面で多くの課題を抱えるが、その中の一政策として高齢者労働力化が進められている。その動きは社会学や経済学領域から検討されてきたが、主に高齢世代の貧困や彼らの経済的貢献性などについて、俯瞰的視座から論じられている。
本報告では、高齢者労働力化に関する俯瞰的言説を再考するため、青森県大間町にて自営漁に従事する(一般定年65歳以上の)高齢漁師の生活史と語りを取り上げる。漁師町の文脈において、高齢漁師らの出漁が必ずしも経済性や生産性に回収されない実態から、高齢者労働力化の福祉的機能について考える。

芸の発信−京都上七軒北野をどりの創成を中心に−
中原逸郎(京都楓錦会、日本ライフストーリー研究所)
花街は芸舞妓が日本舞踊等の芸を披露し、地元の花街言葉により顧客を応接する都市民の交流の場で、日本固有の遊興地とも言えよう。戦前まで花街は各地方の民俗を取り入れ芸を発信してきたが、第二次世界大戦後は西洋化、民主化等の社会変化の中、芸の発信にも様々な変化が現れた。
本発表では昭和 27 年(1952)の北野上七軒(京都市上京区、以下上七軒)の花街舞踊(舞台舞踊)である北野をどりの創成に焦点を当て、文献資料研究に上七軒における聞き取りを加え、戦後の花街の芸を取り巻く思想や社会環境の変化にせまる。

海外駐在員女性配偶者の生活の中の両義性―語りからの考察
三浦優子(立教大学平和・コミュニティ研究機構特任研究員)
グローバル化が進み、時間と空間の圧縮が起こり、国境を越えて移動する人々の生活にも変容が起きている。本報告では、そのなかでも海外に仕事目的で移動する駐在員である夫に帯同する配偶者の日常生活実践に焦点を当てる。女性たちは、家族や他の駐在員配偶者たちとどのようにつながり、どのような気持ちを抱きながら暮らしているのであろうか。事例として日本の駐在員家族が多く暮らすドイツ・デュッセルドルフ日本人社会に注目し、そこに暮らす3人の駐在員配偶者たちの生活に着眼する。3人の女性たちの語りから、駐在生活を肯定的にとらえながらも葛藤や疑問も抱くという両義性が浮き彫りになる。その背景要因、そして今何が問われているのかも考えていく。

語り始めた「ホームレス」の人々―――『ビッグイシュー日本版』「今月の人」誌面分析から
八鍬加容子(京都大学文学研究科 博士後期課程)
ホームレス状態の人々が販売者を務めるストリート・マガジン『ビッグイシュー日本版』には、「今月の人」という販売者のライフ・ストーリーのコーナーがある。これまで聞く耳も語る口も持たなかった「ホームレス」の人々の声が、ストリート・マガジンというコミュニティを通して世に出ることの歴史的文脈と意味・意義はどういうところにあるのであろうか。
本発表では、『ビッグイシュー日本版』創刊号(2003年9月11日発売)から最新号までの「今月の人」を誌面分析し、そこでどのように「ホームレス」が表象されたかを分析する。次に、同時期のメディア報道内の「ホームレス」の表象を比較することで、「ストリート・マガジン」というコミュニティが形成されていく過程で物語がどのような役割を果たしているのかを検討していく。